どう考えても彼女は俺を避けている

のあ。

~第3話~ 『葛藤』


朝一で彼女からの返信を貰っただけでこんなに気持ちが昂るものなのだろうか。
俺は今とても気分が上がっていると自覚が出来た。

教室に入ると、最初に浩介と目が合った、徐々ににやけた顔になった。

そういう顔をする時は大体なにか言ってくる。

「なぁ奏多、お前なんかいいことあったろ」
「なんで分かったんだ?」
「顔に出てるよ」
「え、そんな分かりやすい顔してたか?」

全く気付かなかった
俺ってそんな分かりやすいのか

「そんで?なにがあったんだ?」
「あぁ、昨日送ったLIMAが今朝帰ってきたんだ。」
「・・・それだけ?」
「?・・・あぁ」
「あー...そっか」

俺の答えを聞いて浩介は少しつまらなさそうな顔をした。

「お前もっとガツガツいってみれば?」
「そんなこと言われても何話せばいいんだよ」
「普通に今日一緒に過帰ろうとかさ、なんでもいいから会話するんだよ」
「っていってもな~、俺には難しい話だな....」
「なんだよそれ、とりあえず話してみりゃあわかるだろっ」

そういって俺引っ張って彼女の教室の前まで連れていかれた。
気付けば教室のドアの前に立っていた。

「あ、隣の奏多君じゃん、どうしたの?・・・あっ!伊織ちゃんか!まっててね!」
「えっ...いやっ、これは違うんだ」

そんな俺の話は聞く耳持たずでクラスの女子は伊織の席へと向かい彼女と少し何かを話していた。

彼女と話が終わったらしく、こっちに向かって歩いてきた。

彼女が近づいてくるたびに、心臓が早打ち、頭が白くなっていく。

なにを喋ればいいんだろう。

「どうしたの?」
「えっと、特になにかあるわけじゃないんだけど・・・」
「何もないならごめんね、私今ちょっと忙しくて。」
「あぁ、そっか…そうだよな、じゃあまた」
「うん、またね」

そういうと彼女は自分の席に戻っていった。
俺も自分の教室に戻る、なにが原因なのかわからないがモヤがかかったような気分だ。

教室に戻ると浩介が笑顔で手を振ってこっちを見ている。
隣りにはクラスメイトの【浦野 彩菜うらの あやな】の姿があった。

「どうだったよ奏多」
「何々?なんの話?私にも聞かせてよ。」
「奏多と清水詩織のイチャイチャ物語だよ」
「なにそれ気になる!」
「そんな期待されても、そういうのは全くないぞ」

「「えぇーー」」

「じゃあなんの話したんだよ」
「なんにも話してないよ、忙しいらしくてすぐ終わったよ」
「ふーん」
「それってさ、大丈夫なの」

少し考えるような、悩んでるような顔をしながら彩菜は答えた。

「どういうことだ」
「あぁー...えっとね、言いにくいんだけど。」
「そんなの気にしなくていいから教えてくれ」
「もしかして奏多君、伊織ちゃんに"避けられてる"とか」

.........

まったく予想もしてない答えだった。
もちろん俺も今まで避けられているなど考えたことがない
彼女は人よりコミュニケーションをとらないだけなのだと思っていた

しかも数ある告白の中から俺の告白をOKして、それを避ける・・・?
避けられる理由が全く思いつかない、避けるくらいなら告白を振ればよかったのに

「なんだよそれ、じゃあなんで奏多の告白をOKしたんだ?」

おそらく浩介も同じように考えたのだろう

「それはわかんないけど、そう考えるのが1番納得して・・・」

確かに、確信はないが筋は通っていた。
付き合ってからの関係を思い出せば明確だ。
連絡先を交換するだけで、春休みまで会話も無く、LIMAを送っても約半日以上でやっと一文返ってくるくらいだ。

最初はそういう人なんだろうと思っていたが、彩菜の話を聞いて避けているからこういう行動とっていたのではないかと連想してしまう

「まぁ仮に避けているとして、じゃあなんで奏多を振らないんだ?」
「そんなの私に聞かれてもわかんないよ、そもそも私の予想みたいなもんだし」
「なんだそれ」

浩介と彩菜の言い合いを横目に俺の頭は同じ事を反芻はんすうしていた。
彼女である清水伊織が俺の告白を了承した理由・・・
俺を避けている可能性がある事、そして避けているのであればなぜ振らないのか。
避ける事に何か意味があるのか・・・

そればかりが頭を埋め尽くした、さっき彼女と話す時は真っ白だったが。
一転して今はフル稼働で動いている
もちろん答えが出てくるわけでもないが。


そうこうしているうちにチャイムが鳴り授業が始まった。













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