それは秋の風のように
始動
5年ぶりの日本。私、桜木ほのかは中学卒業後、飛び級で大学まで出、警察官になった。そして、SATに配属になったが1年程かけて刑事試験にも合格し、特待でそして最年少で、フランスに研修に出た。それからICPO(インターポール)からスカウトがあり、フランスで1年間ICPOの研修を経て、それから1年後にイギリスに渡り、そこで3年間日本から来た刑事として配属となった。ICPOは秘密主義で、ほとんどのメンバーは明かされていない。というのも、国際的犯罪組織を相手にすることもあるからだ。現に私が追っているレッド・バタフライは国際的犯罪組織で国際手配されている。犯罪組織を捕まえるためなら、私はあらゆる国の警察組織を利用する。そして、必ずその国の公安に配属される。今回の帰国も、レッド・バタフライの一味が日本に来たという情報が入り、派遣されたのだ。
「…え?手違い?」
『すまない、君の情報をまだ送れてなかったんだ。だから、日本の警察から返答があるまで最低でも3日はかかる。それまで散策でもしててくれ』
「はぁ…」
電話を切った私はため息をついた。ICPOの私の上司はおっちょこちょいでよく捜査資料を無くしたりもしていた。
(大丈夫かな…)
内心呆れつつ、私は宿泊先のホテルから出た。
「それにしても…」
たった5年なのにほとんど変わってしまった街並みを見て少し寂しくなる。
「………」
この都心の早朝はせわしなく人々が行き交っている。近くの森林公園のベンチに座ると、爽やかな風が吹いた。
「たまにはいっか…」
きっと公安に配属になったらこうして休む暇もないだろう。
ーーーピリリリリ…
携帯電話の画面を見る。
「!」
(C.レッドバッド…)
一人の男からの電話だった。彼は主に日本で活動している犯罪組織、通称ブラックホールの一員で、幹部クラスにはコードネームに花の名前がつけられている。彼・宵春ミカサには「チャイニーズ・レッドバッド」和名でハナズオウの名が与えられていて、私もその組織の一員で「シスル」和名でアザミという名が与えられている。私は、15年前から組織に入っていて、組織から警察に潜入し組織に警察の内部情報を流していた。しかし、兄の死の真相を知ってから私は組織を裏切り始めた。それが20歳の時だった。しかし、裏切ったことが組織にバレれば私は消される。表向きは忠実な組織の一員として動いていた。組織が唯一知らないのは私がICPOに所属したことだ。
「もしもし…」
『帰ってきたようだな、シスル。5年も何をしていた?』
「私にも色々事情があるんです』
『…フッ、まぁいい。早速仕事だ。日本の警察内部にいるネズミを排除しろ』
「ネズミ…?」
『組織のデータを盗んだそうだ』
「分かりました」
『そのうち直接挨拶に行く』
「…」
『じゃあな。健闘を祈っているぞ、シスル』
電話を切った私は再びため息をついた。レッドバッドは昔はとても優しかった。でも、あることをきっかけに別人のようになってしまった。それは私のせいでもある。
私は組織の全てのデータにアクセスする権利があり、数人しか知らされていないパスコードも知っている。それとレッドバッドの情報からネズミを探し出すことは容易い。しかし。
「ネズミは私だ…」
何時間そこでボーッとしていたのだろうか、人は少なくなり日も高く昇っていた。
「ちょっと散歩してみようかな」
方向音痴の私としてはあまりホテルから離れたくないのだが。しばらく歩くと「フルール」と書かれた喫茶店が目に入った。
ーーーカランカラン…
懐かしいような鈴の音のするドアを開けると、背の高い褐色の肌に茶髪の男性が迎えてくれた。
「いらっしゃいませ…!」
近づいてきた男性は一瞬驚いたような顔をした。
「…一人ですけどいいですか?」
「あ、えぇ。すみません、どうぞ」
男性は椅子を引いてくれ、私はカウンターに座った。
「ご注文は何になさいますか?」
「そうですね…」
メニューを見ていると、奥から私と同じくらいの歳の女性が来た。
「あら、いらっしゃいませ!」
心なしか女性がいることにホッとする。
「おすすめはサンドイッチです。彼のサンドイッチ本当に美味しいんですよ!」
「褒めすぎですよ」
女性のおすすめに応えてみることにした。
「では、そのサンドイッチとホットティーをストレートで」
「かしこまりました」
辺りを見回すと、お店には数人のお客さんがいた。
「初めてのお客様ですよね?」
女性が話しかけてきた。
「あ、はい。もしかして誰かの紹介が必要でしたか?」
「あ、いえ!全然!…うちって常連さんばっかりで、若い女性のお客様って珍しくて」
「そうだったんですね。とても落ち着く良いお店だと思います」
「ありがとうございます!」
元気の良い笑顔が爽やかな女性だ。
「おまたせしました」
男性がサンドイッチと紅茶を置くと、フワッと紅茶が香った。
「ありがとうございます」
「ごゆっくりしていってくださいね」
おすすめのサンドイッチを食べてみる。
「わぁ…ふわふわで美味しい」
「ですよね!!」
女性の勢いに思わず笑ってしまった。
「ごちそうさまでした」
「またぜひ来てください!若い女性は大歓迎です!ね、中村君!」
「え?…えぇ」
「…」
(中村…)
「…僕の顔に何かついてますか?」
ジッと彼の顔を見てしまっていた。
「あ、いいえ。失礼しました。また、時間があったら来ます」
「ありがとうございました!」
私はフルールを出ると、ホテルに戻りパソコンを開いた。
「中村、翔…。アコナイト…」
「…え?手違い?」
『すまない、君の情報をまだ送れてなかったんだ。だから、日本の警察から返答があるまで最低でも3日はかかる。それまで散策でもしててくれ』
「はぁ…」
電話を切った私はため息をついた。ICPOの私の上司はおっちょこちょいでよく捜査資料を無くしたりもしていた。
(大丈夫かな…)
内心呆れつつ、私は宿泊先のホテルから出た。
「それにしても…」
たった5年なのにほとんど変わってしまった街並みを見て少し寂しくなる。
「………」
この都心の早朝はせわしなく人々が行き交っている。近くの森林公園のベンチに座ると、爽やかな風が吹いた。
「たまにはいっか…」
きっと公安に配属になったらこうして休む暇もないだろう。
ーーーピリリリリ…
携帯電話の画面を見る。
「!」
(C.レッドバッド…)
一人の男からの電話だった。彼は主に日本で活動している犯罪組織、通称ブラックホールの一員で、幹部クラスにはコードネームに花の名前がつけられている。彼・宵春ミカサには「チャイニーズ・レッドバッド」和名でハナズオウの名が与えられていて、私もその組織の一員で「シスル」和名でアザミという名が与えられている。私は、15年前から組織に入っていて、組織から警察に潜入し組織に警察の内部情報を流していた。しかし、兄の死の真相を知ってから私は組織を裏切り始めた。それが20歳の時だった。しかし、裏切ったことが組織にバレれば私は消される。表向きは忠実な組織の一員として動いていた。組織が唯一知らないのは私がICPOに所属したことだ。
「もしもし…」
『帰ってきたようだな、シスル。5年も何をしていた?』
「私にも色々事情があるんです』
『…フッ、まぁいい。早速仕事だ。日本の警察内部にいるネズミを排除しろ』
「ネズミ…?」
『組織のデータを盗んだそうだ』
「分かりました」
『そのうち直接挨拶に行く』
「…」
『じゃあな。健闘を祈っているぞ、シスル』
電話を切った私は再びため息をついた。レッドバッドは昔はとても優しかった。でも、あることをきっかけに別人のようになってしまった。それは私のせいでもある。
私は組織の全てのデータにアクセスする権利があり、数人しか知らされていないパスコードも知っている。それとレッドバッドの情報からネズミを探し出すことは容易い。しかし。
「ネズミは私だ…」
何時間そこでボーッとしていたのだろうか、人は少なくなり日も高く昇っていた。
「ちょっと散歩してみようかな」
方向音痴の私としてはあまりホテルから離れたくないのだが。しばらく歩くと「フルール」と書かれた喫茶店が目に入った。
ーーーカランカラン…
懐かしいような鈴の音のするドアを開けると、背の高い褐色の肌に茶髪の男性が迎えてくれた。
「いらっしゃいませ…!」
近づいてきた男性は一瞬驚いたような顔をした。
「…一人ですけどいいですか?」
「あ、えぇ。すみません、どうぞ」
男性は椅子を引いてくれ、私はカウンターに座った。
「ご注文は何になさいますか?」
「そうですね…」
メニューを見ていると、奥から私と同じくらいの歳の女性が来た。
「あら、いらっしゃいませ!」
心なしか女性がいることにホッとする。
「おすすめはサンドイッチです。彼のサンドイッチ本当に美味しいんですよ!」
「褒めすぎですよ」
女性のおすすめに応えてみることにした。
「では、そのサンドイッチとホットティーをストレートで」
「かしこまりました」
辺りを見回すと、お店には数人のお客さんがいた。
「初めてのお客様ですよね?」
女性が話しかけてきた。
「あ、はい。もしかして誰かの紹介が必要でしたか?」
「あ、いえ!全然!…うちって常連さんばっかりで、若い女性のお客様って珍しくて」
「そうだったんですね。とても落ち着く良いお店だと思います」
「ありがとうございます!」
元気の良い笑顔が爽やかな女性だ。
「おまたせしました」
男性がサンドイッチと紅茶を置くと、フワッと紅茶が香った。
「ありがとうございます」
「ごゆっくりしていってくださいね」
おすすめのサンドイッチを食べてみる。
「わぁ…ふわふわで美味しい」
「ですよね!!」
女性の勢いに思わず笑ってしまった。
「ごちそうさまでした」
「またぜひ来てください!若い女性は大歓迎です!ね、中村君!」
「え?…えぇ」
「…」
(中村…)
「…僕の顔に何かついてますか?」
ジッと彼の顔を見てしまっていた。
「あ、いいえ。失礼しました。また、時間があったら来ます」
「ありがとうございました!」
私はフルールを出ると、ホテルに戻りパソコンを開いた。
「中村、翔…。アコナイト…」
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