『ダンジョンの守護者「オーガさんちのオーガニック料理だ!!」』

チョーカー

決着!? 究極魔法ファイアボール??

 「三体目……いや、四体目!」



 巨体が瓦解する。

 残るゴーレムは亮が鎮座している一体のみになった。



 「これで最後だ!」



 アッシュが聖剣に破邪の力を込める。

 しかし、そこで気づいた。

 今も亮が笑っている事に……それは邪悪な笑み。 

 さしずめ、自身の思惑通りに事が進んだように――――

 亮は笑い続けている。



 (俺は見落としているのか? 何を?)



 アッシュの動きが止まる。

 幾戦の戦いで身に着けた予知能力に近い直感。

 それがブレーキをかけたのだ。



 (ゴーレム……ウッドゴーレム。岩と蔦。……岩!)



 アッシュは自身が打ち砕いたゴーレムの残骸を見る。

 それは異常だった。 自分を取り囲むように規則正しく残骸が並んでいる。

 残骸の中から光が漏れていた。 それは魔石の光。

 そして、奇妙に伸びた蔦と蔦が絡み合い……



 地面に魔方陣を描いていた。



 「ゴーレムの内部に魔石を隠して……儀式魔法だと!」



 魔法は同じ種類のものでも使い手で威力に精度に差が現れる。

 さらに詠唱や供物……生贄などで別物のように変化が起きる。

 この時、亮が仕掛けたのは儀式魔法。

 貴重な魔石を供物に、さらに蔦を利用して地面に魔方陣を書き、これから使用する魔法を強化したのだ。

 そして、その魔法とは――――



 アッシュは亮を見上げる。



 亮の体には赤髪の精霊が身を委ねるが如く現れている。



 「火球(ファイアーボール)」



 火の球だって? 馬鹿馬鹿しい。

 重ねに重ねた魔法は初級魔法ですら究極魔法に進化させ、火の球を放つという面影は消滅していた。

 地面の魔方陣が赤く輝く。

 それも一瞬だけだ。すぐに地面から閃光のような熱線が天井を向けて発射された。

 ダンジョンの天井を貫き、その赤き光は遠く隣国の者までも肉眼で確認できるほどの眩さだったそうだ。

 業火と呼ぶことすら生ぬるい火柱。 雲を貫き、星々の領域まで届くソレ。

 その中心にいたアッシュは果たして……無事とは言えまい。

 何か遺物が残れば幸運だが、それすら叶うまい。

 やがて――――



 亮の魔方陣から光が失い――――



 世界に静寂が取り戻された。



 しかし――――

 その破壊の中心で勇者は立っていた。

 全身を焼かれ――――それでも、四肢は無事。

 爛々と殺意を込めた視線を亮に送る。



 「まだ戦えるのか? ――――いや、もう戦えないだろ?」



 亮はゆっくりとアッシュに近づくと、剣を振りかざした。



 「お前は理解しようとしない。お前に過去に何があってそうなったのかわからない。わかろうとも思わないが――――お前は、この世界で生きてはいけない」



 亮は、そういうと剣を振り下ろした。



 アッシュの首筋を目掛けて――――

 

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