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『ダンジョンの守護者「オーガさんちのオーガニック料理だ!!」』

チョーカー

ダンジョンの意思 亮の魔人化

 勇者アッシュは動きを止めた。



 「なぜ? 人間が魔物を庇う?」



 そう言うと抜き身の剣を鞘へ戻した。

 対して亮は―――― 



 「頼む。ここは彼女を殺さないでくれ」



 そう哀願する。

 一瞬、アッシュの顔が歪んで見えた。



 (もしかして、躊躇してくれているのか?)



 そう亮は考えた。しかし、違った。

 亮は気がつかなかった。自分の体に何が起きたのかを。

 アッシュの剣が―――― 鞘に収められていたはずの剣が、いつの間にか抜かれていた。



 「君が何を考えて前に立ったのか? なぜ魔物を庇うのかわからない。だから戦力を奪っておいた」



 (彼は何を言っているのか? 戦力を奪う?)



 やがて訪れた違和感。亮は自身の右腕を見た。

 自分の腕が滑るようにズレていき――――地面に落下した。



 「え? どうして腕が?」 



 あまりの切れ味に亮の肉体と精神が切断されたと理解するまでタイムラグが生じたのだ。

 噴水の如く血液がぶちまけられる。

 亮が感じたのは痛みより先に体温で暖められた血液の熱さ。

 そこから少しだけ遅れて痛みが襲い掛かってきた。



 「うぅ……うっがぁがああああああああああああああああああああああああああああ!?」



 悶絶。

 その痛みは、人生で初めて味わう拷問。

 失われ腕を押さえ、地面をのたうち回る亮をアッシュは冷たい視線で見下ろす。



 「君がどうして魔物を守り、世界に仇なそうとしているのか興味は尽きない。けど、今はモンスターを殲滅するという優先度に比べれば遥かに低い」



 無慈悲にアッシュは亮を蹴り飛ばした。

 アッシュの前に、今だ意識を取り戻さないオーガさんが倒れている。

 再び、アッシュは剣を構える。 その剣――――聖剣は金色の色に包まれていく。



 その光景を前に亮は――――



 「……俺は無力だ ……けれども!」



 薄れいく意識に逆らい、体を奮い立たせる。



 「……わかっている。例え、俺の体を犠牲にして盾になっても無意味な事くらい……」



 一歩、一歩と足を動かし、駆け出そうとする。



 「けどやらないといけないんだ!」



 無理やり体を動かし、アッシュが放とうする聖剣の一撃に向かい、飛び込もうとする。

 そのタイミングだった。

 時間の流れが遅くなる。まるで走馬灯のようなスローモーション。



 (力がほしいか?)



 その状態で声がした。

 亮の幻聴……ではない。

 それは人間の声ですらなかった。しかし、不思議と意味が理解できる声。



 (問おう。汝、異なる世界からの渡来者よ。世界の理より外れ、魔道に堕ちても力を欲するか?)



 亮は理解した。それは悪魔の囁きである……と。

 そして、理解したうえで答えた。



 「俺は力が欲しい。彼女を守れる――――守るための力を!」



 (いいだろう。契約は成された――――我は、この空間においての絶対者。迷宮の意思そのもの――――これを持って、汝を魔人として認めよう)



 ・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・



 静止していた時間が動きを取り戻す。

 そして、勇者は聖剣を秘められた力を解放し、一撃を放とうとしていた。



 「滅せろ邪悪。清浄なる一撃を持って滅び去れ!」



 倒れたオーガに向かい、最強の一撃を――――



 しかし、そこに異物が迷い込んでいた。

 確かに、存在していなかったはずの黒い影。

 ソイツが揺ら揺らと不気味に揺れている。



 黒衣のマント。

 黒いピエロの仮面。 



 それは救済の魔人。



 勇者の聖剣から放出された破邪の一振りを――――



 容易く素手で受け止めた。




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