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『ダンジョンの守護者「オーガさんちのオーガニック料理だ!!」』

チョーカー

魔道書の精霊 始めての魔法獲得

 いつもの夢。



 (たしか、スラリンに料理を作った頃から見始めたんだよな)



 亮は、この夢を見始めた頃を思い出す。

 もしかしたら、深層心理に原因があるかもしれないと思ったからだ。

 しかし、その原因は思い当たらなかった。



 夢ではいつも白い空間が広がっている。

 そこに幽霊のようにぼやけた姿で女性が現れる。

 真紅の髪を持った女性だ。



 (あれ?)



 亮は普段との違いに気づいた。

 女性の顔が鮮明に見えている。

 意思が強そうな眉。それが赤髪に似合っている。

 眉も赤いのか……いや、瞳も赤い。

 トータル的な評価は美人さんの部類だ。



 (……ますか? ……聞こえますか?)



 コイツ! 頭の中に直接、語りかけてくる……だと!?

 なんて、亮は驚く事はなかった。

 なぜなら、これは夢だからだ。



 「あぁ、聞こえているよ。君はいったい?」



 亮は普通に聞いた。



 (私……のせい……願いが……)



 「ん~ ノイズが酷いな。 電波が悪いのか?」



 (これ……ではありません。どうか……)



 「いや、わからないよ」と亮は肩をすくめてみせた。



 ――――ブッチ!



 何かが引きちぎられるような音だ。しかし、それが何か検討もつかない。

 「ん? 何の音だ?」と辺りを見渡しても何もない。

 「気のせいか」と視線を女性に戻すと――――



 女性は憤怒の表情を浮かべていた。

 どうやら、さきほどの音の正体は、あまりの怒りに血管がブチ切れた音だったらしい。



 「ちょ、なんでそんなに怒っているの!」



 (お…るに……てめぇ……聞いてみやがれ!)



 やっぱり、わからない。

 ツカツカと女性は亮に近づくと、強く固めた拳を亮の顔面にたたき付けた!



 「痛ったあぁ! ……って、痛くないや。やっぱり、夢だったのか」



 飛び起きた亮は周囲を見渡す。そこはいつも通り、オーガさんの住処。

 隣には、すやすやとオーガさんが寝息を立てて寝ていた。

 亮は、寝なおそうと猪の皮で作った毛布に包まり、頭の下に枕を敷いた。



 「やっぱり、枕があるとよく眠れるんだよね」



 亮はスラリンから貰った本を枕代わりにして眠るようになっていた。

 まさか、その本が魔道書であり、夢に現れた女性は魔道書に宿る精霊だったなんて夢にも思わず……



 ・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・



 「あー そりゃ魔道書の精霊だな」とオーガさん。



 「魔道書? 精霊?」

 「あぁ、私もお前が、スラリンからもらった魔道書を枕代わりに使ってるから随分と驚いたが、プレゼントの使い方は人それぞれだからな。そんな無茶もしてみたかったんだなぁ……と気にしていなかったのだが、ついに怒られたか」

 「いや、もう少し説明を……とりあえず、魔道書って言うのは?」



 「それはだな……」とオーガさんは説明を開始。



 魔道書というのは、魔石と同じように魔物が体内で作り出すアイテムの一種らしい。

 ただし、魔石と違って体内に留まっているものではなく、魔物たち自身も気がついたら手に持っている事が多いらしい。

 どういやら、それを人間が読むと魔法が使えるようになるらしい。

 人間たちが何年も修行して獲得する魔法を読むだけで使えることになるから、高額で売買されるものらしい。

 ここが初心者向けダンジョンと言われながらも、リーダーや賢者さんみたいな熟練の冒険者が攻めてくる場合は、この魔道書が目的らしい。



 「つまり、これを読むと俺でも魔法が使えるようになる……って事かい?」



 亮の質問にオーガさんは頷いた。



 「読むにしても、売り払うにしても早く決めたほうがいいぜ。連日、精霊が夢に出てくるなんて尋常じゃないくらい怒り狂ってるみたいだからな」



 「……」と亮は手にした魔道書を見つめた。

 せっかくスラリンがくれた本だ。 それを簡単に売り払ってもいいものだろうか? と悩んでいた。

 大切に使おうと思いながら枕代わりに使っていたのに、今度は価値を知った途端、ぞんあいに使う事に躊躇し始めたのだ。



 「……読もう」と亮。

 「そうか」とオーガさん。

 亮は魔道書のページを捲めくる。

 その様子にオーガさんは――――



 「それは生み出したスラリンも、魔の加護を与えたダンジョン自身も喜ぶだろう」



 「魔の加護…… ダンジョン自身?」と亮は気になるキーワードを口にしたが……

 その意味を聞くよりも早く意識を失ってしまった。



 ・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・



 白い――――

 伽藍堂の空間が白く広がっていく。

 幾度となく夢で見た空間。しかし、今度は夢ではなく現実の中での光景。

 いや、正確には夢と現実の狭間。魂だけがたどり着ける幻想空間。

 そこに赤髪の女性が立っていた。 

 オーガさんの説明が正しいなら、彼女は魔道書の精霊。

 ジロリと睨み付けるように視線で迎えてくれた。



 「ようやく、ようやく来てくれましたか」

 「えっと……すいません」

 「貴方にわかりますか? 例えるなら――――連日、よく知らない男に膝枕をしなければならなかった私の気持ちが?」

 「いえ、本当にすいませんでした」



 亮は背を90度の角度で曲げ、謝罪を行った。

 その姿を見た精霊はため息を1つ。



 「まぁいいでしょ。貴方は私の持ち主なのですから……それでは魔法を授けます」

 「はい、お願いします」



 亮が頼んだ瞬間、精霊の様子が変わった。

 突然、俗っぽい印象が消え落ち、何か神聖な存在に取って代わったかのようだ。



 「我が名は、炎と憤怒の精霊フレイヤ。我が名に誓い汝に力を与えぬ」



 精霊、フレイヤは人差し指を亮の額に触れる。



 「汝に与える魔法は――――火球(ファイアボール)」



 亮は、体内に何かが入り込んでくるような感覚に陥る。

 脳裏に浮かぶのは強烈な火炎の映像(イメージ)。



 「事は成された。さぁ、元の世界に帰るがいい」



 そう言い放つとフレイヤの表情は神聖さを失い、最初に見せた顔に戻った。

 そして――――



 「また、魔道書を手に入れて遊びに来てくれたら嬉しい……ですね。 今度も枕代わりに使うものなら、許しませんよ?」





  

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