『ダンジョンの守護者「オーガさんちのオーガニック料理だ!!」』

チョーカー

猪の生姜焼き!?


 亮は本を取り出した。



 『冒険者の進め方』



 ダンジョン攻略のハウツー本と言うやつだ。

 その内容は、魔物や罠の対処法。それ以外には、サバイバル術が書かれている。

 亮が、この本を選び購入した理由は、サバイバル術――――緊急時の食事を得る方法が書かれているからだった。



 「確か、このページに……あった!」



 その中から、野生動物の解体法。 猪の場合を見つけた。



 ① 放血



 ② 内臓を出す



 ③ 腹の中を洗う



 ④ 皮を剥ぐ



 ⑤ 首を切断する



 ⑥ 枝肉をして成形する



 ⑦ 胸骨を開く



 ⑧ 左右に分ける





 「――――って、できるか!?」



 勢いのまま、亮は本を地面に叩きつけた。

 鳥なら、まだしも猪なんて大物の解体なんて……無理無理。



 「ただいま!」



 しかし、現実は非常だ。 1時間にも満たない時間でオーガさんは帰宅した。

 もちろん、その両肩に猪を担いで……だ。

 そして、オーガさんは笑顔だった。 有無を言わせないほど、良い笑顔だった。



 「畜生! やってやらぁ!」



 ・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・



 猪の重さは、1匹70キロ~110キロ。 それを2匹も解体するのは重労働だ。

 亮は服を脱ぎ捨て、上半身裸になっている。

 全身、汗にまみれ。 熱くなった体温から白い湯気が立ち上がっている。

 その場に座り込み、肩は呼吸げ激しく上下していた。

 「もう動けない」と言外に表していた。 



 兎に角、亮は猪の解体を成功させていた。

 素人のはずの亮が鳥に続けて、猪まで解体を無事終わらせれた事に若干の違和感があるものの……



 「すげぇ見ごたえがあったぜ。ありゃ金が取れるんじゃないか?」とオーガさん。

 「あはは……流石に猪の解体ショーなんて需要はないと思うよ」と亮。

 「いえ、そんな事はない……と思います。本当に凄かったです」とスラリン。



 しかし、終わったのは猪の解体のみ。

 これから調理がはじまるのだった。



 汗が引き、動けるようになった亮が手にした食材は生姜ショウガだった。

 町に行ったときに入手したものだ。

 金貨1枚の出費だったのを考えれば、この世界では高級食材なのかもしれない。



 酒 しょうゆ 砂糖 そして、摩り下ろした生姜を器に入れる。

 これがタレになるのだ。



 肉に小麦粉を軽く両面にまぶし、過剰についたものは軽く叩いて落とす。



 肉をフライパンで焼き、上記のタレ――――酒 しょうゆ 砂糖 生姜を追加する。



 そう亮は生姜焼きを豚の代わりに猪肉で作ったのだ。

 そして、忘れていけないのはブロッコリーだ。鍋に水を張り沸騰。そこにブロッコリーを投入。 

 数分茹でて取り出すと食べれるようになる。 



 猪の生姜焼きの横にブロッコリーを多く添えてやると――――



 「さぁ、完成だ。 食べてくれ!」



 自分の分、オーガさんの分、そして――――これがスラリンの分だ! と皿に盛り付けした生姜焼きを渡していく。

 そして――――



 「さぁ! いざ開食だ!」



 亮は生姜焼きを口にした。

 脳裏に浮かんだキーワードは――――



 『猪突猛進』



 口の中で広がったのは野生の荒々しさ。 

 悪く言えば味が安定しない雑味が襲ってくる。

 しかし、それは養殖された豚にはない野生のエネルギーだ。

 亮は、バランスボールのように不安定な味を乗りこなして楽しむ。



 肉そのものの旨み。それにタレの甘みが肉の全体に加えられ――――



 新たな物語が始まる。 



 猪突猛進。

 それは周りを鑑みず、ただ前進む。

 ある意味では探求者、求道者、修行僧、それらの極地。

 どんな困難にも歩みを止めない誓いでもあるのだ。

 愚直に―――― 愚直に――――

 ただ、前に突き進む。 この道の先に望みは達成されると信じて――――



 「俺より強い奴に――――」



 そう、この道の先にいる絶対的な強者に打ち勝つために。



 「ここに1つの物語が完成を迎えた」



 

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