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『ダンジョンの守護者「オーガさんちのオーガニック料理だ!!」』

チョーカー

オーガさん家の~

 「なるほど」とリーダー。



 「そうです。何とか、あの魔物の隙をつき、逃げ出した所までは覚えているのですが、その後は記憶が曖昧で……」

 「気がつけば、そちらのお嬢さんに助けられていたと……」



 リーダーの視線は亮からオーガさんに移った。



 「あぁ、驚いたぜ。服も体もボロボロの殿方とのがたが倒れていたからな。それも虫の息ってやつだ」



 オーガさんはいつも通りの口調だった。

 そのファッションに似つかわしくない口調だが、リーダーと賢者は気にした様子はなかった。

 もしかしたら、服装と性格が一致しない変り者が冒険者には多いのかもしれない。

 そんな事を考えながら、亮は説明を続ける。 その場しのぎのデタラメの説明を……



 「それから、彼女の村でお世話になっていました。本来なら、すぐにでも無事を知らせなければいけなかったのでしょうが……すぐに怪我も癒えずに、ずるずると連絡が遅れてしまいました」



 リーダーは「いや、君が無事なら良いんだ」と直ぐに答える。

 まさか真実をありのままに伝える事ができず、若干、心を痛める亮だった。

 「しかし……」とリーダーは話を、こう続けた。



 「我々としては、君のような『あちら側』の人間を必要としている」

 「必要? それは冒険者としてですか?」

 「もちろん、異世界人が持つ逸脱した能力は冒険者こそ、十全の活躍を約束されている、とは言われているが……」

 「いるが?」

 「何も、君たちを必要とする職業は冒険者だけではない。個々の能力が万全に発揮する環境を提供する。それが、この国のルールだ」



 「最も、私は君が仲間になってくれる事を一番に望んでいるわけだがね」と朗らかな顔で言う。



 「せっかくですが……暫くは、助けていただいた村への恩返しをしたいと考えています」

 「うむ、そうか。それは残念だが、君の力は国を一変するほどの価値がある。恩返しが終わり、表舞台に立つ準備ができたのならば、その時は私の元に来てほしい」



 亮は、「いえ、その……」と流石に過大評価が高過ぎると焦り始める。



 「ん? どうしたんだい? 急に歯切れが悪くなったようだが?」



 「実は……」と亮は賢者の方を向く。

 賢者は、いまだに具合が悪そうだが、亮を目が合うと笑みを浮かべれる程度には回復したみたいだった。



 「実は賢者さんから貰った巻物スクロールはダンジョンから脱出するさいに紛失していまって、今も自分の能力が分かってないんです」



 亮は頭を下げた。

 慌てた様子で賢者は――――



 「いやいや、そんなに謝らないでくれよ。あれは君に上げた物なんだから……けど、それは困ったなぁ」

 「え?」

 「自分の能力やステータスを表示する巻物は、冒険者の新人向きだからね。だからこそ、手に入り難いんだ」

 「新人向きだから手に入り難い……ですか?」



 亮は不思議に思った。

 ゲームとかの感覚で言えば初心者用のアイテムこそ安値で取引されているのが当たり前だからだ。

 賢者もそれを察したのか――――



 「極端な話、手に入れた後は家にでも保管して、自身の成長を確かめたい時にだけ使えば良いのだから、冒険者になった記念に多少高額でも皆、買うのさ」

 「あれって高額だったのですか。ますます、すいませんでした」

 「いやいや、あれは本当にたまたま手に入れて、持て余していたものだから大丈夫だよ。それに、そんなに謝れると私も申し訳なくなってしまうよ」



 「しかし……」と賢者は話を続けた。



 「アレが市場に出るのは冒険者への志願者が増える時期、3ヵ月後になるね。君が助けられた村に自分のチート能力を使って恩返しをしようと思っているなら、少し無理をしてでも手に入れるけど……」

 「いえいえ、そこまでは……それに俺がやっている恩返しってのは農業や料理です」



 「農業……料理……いや、確かに、そちらの方面で、この世界に改革を起こした異世界人は前例があるらしいが……」と意外そうに言ったのはリーダーだった。



 「そんな、本格的なものじゃないですよ。ここで言う『あちら側』ですか? その知識を利用しているだけです」



 「そうなのかい?」と賢者。



 「まぁ、リーダーじゃないけど、私もチートくんが仲間になってくれるのを望んでいる。これをあげるよ」



 賢者は板のような物をテーブルの上に置いた。



 「これは?」

 「君たちでいうスマートフォンみたいな物さ。耳に当てて連絡を取りたい人物を思えば、電話の如く会話ができる品物さ」

 「……これが、電話ですか?」



 しげしげと亮は板を観察したが、ただの板に見える。

 内部に魔石でも入っているのかもしれない。



 「冒険者になりたいと思ったら、いつでも電話するんだよ。冒険者に依頼したい事があったり……むしろ、何もなくても連絡するんだ。寂しくなった時とかね! いいね?」



 「え? それは……あっ、はい」といろいろ疑問が浮かんだが、賢者の勢いに飲まれて、返事をする事しかできなかった。



 それから、いろいろと会話をした後、2人と別れた亮とオーガさんは、本来の目的である買い物にむかった。

 まずは……



 「雑貨屋さんだ!」



 ・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・



 亮とオーガさんが立ち去った後。



 「どう思う?」とリーダー。

 「彼は嘘をついてると思うね」と賢者は答えた。



 「うむ。なぜ、そう思う?」

 「一緒にいた女性」

 「ん?」

 「彼女にだけわかるように殺気を放っていたが……まるで魔物のような生々しい殺気が帰ってきた」

 「おまえ……最初に口数が少ないと思ったら、そんな事をしていたのか?」



 リーダーは呆れるように、それでいて攻めるように言った。



 「当然だろ? 私のチートくんを奪った泥棒猫なんだからね!」

 「お前のじゃないだろ?」

 「どう考えても、私の物になる流れだったもん!」

 「あー わかったから語尾にもんをつけるな。もんを」

 「それに大丈夫だよ……」

 「……やっぱり、あの連絡用魔法を札ではなく、板に施していたのは、何か仕掛けていたな」

 「もちろん、私は賢者だよ? 伊達や酔狂で賢き者を自称しているわけじゃないさ」



 そう言うと獰猛な笑みを浮かべた賢者。

 それを見たリーダーは――――



 「やっぱり、敵に回したくない女だよ。お前は……」


 そう呟いた。

 一方、亮たちは――――
 農業用品を探しに町中の店舗を見て回ったが、結果は芳しくなかった。



 「そんなもんは売ってねぇよ。ここよりも村で分けてもらえ」



 そんな厳しめの店主さえいたほどだ。しかし、なるほど……

 店主の言う通り、町ではなく村を選択するべきだった。

 そこは店主の言う事が正しいといわざる得ない。



 それでも、幾つかの店舗を巡り、何とか肥料くらいは手に入れた。



 「ふう……疲れた」



 少し臭いが漏れる袋を横に亮は座り込んだ。

 そんな亮の様子に「それで、どうするんだ?」とオーガさん。

 亮は少し考えると――――



 「う~ん、このさい、有機農業……オーガニックでも試してみようかな?」

 「むっ! なんだいそりゃ? 一瞬、私の事を呼んだのかと思ったじゃないか」



 日本での有機農業オーガニックの定義。

 有機農業保進法という法律で書かれている定義を分かりやすく説明すると――――



 科学的に作られた肥料、あるいは農薬を使ってないもの。

 遺伝子組み換え技術を使ってない事。

 この2つが基本として、環境に負担がかからない農業方法。



 「……要するに自然に優しい農業って事だよ」

 「なんだそりゃ? 農業ってのは自然に厳しいのかい?」



 「あらためて、そう聞かれると……どうなんだろう?」と亮は首を捻って考えた。



 農業でよく槍玉に挙げられる代表と言えば農薬だ。

 農薬を使った野菜に対して「虫も食わない野菜」って有名な批判を聞いた事がある。

 しかし、そもそも農薬は虫を野菜に近づけない薬なのではないか?

 もしかしたら、最初に「虫も食わない野菜」と表現した人は、何か、うまいことを言おうとして失敗した結果、言葉だけが広がったのかもしれない。

 それはさておき…… 亮たちが次に向った店は――――



 「ここは魔道書を売っているのか?」とオーガさん。



 「魔道書? いや、普通の本屋……だと思う」



 通行人のおじさんに本屋の場所を尋ね、聞いた場所だから自信はないけど……

 さて、亮が本屋に向った理由は単純だ。



 「流石に独学で農業は無理だ!!」



 そう判断したのだ。

 2人は店内に入り、亮は何気なく本を開く。



「……読めない」



 会話が可能だから、もしかしたら文字も読めるのではないか? 

 そんな期待もしていたのだが…… やっぱり、甘い期待だった。



 「えっと、オーガさんは、これを読める?」

 「ん? 私が読書をするように見えるのか…… お前、正気か?」



 「困ったなぁ」と亮は本を目の前に近づけたり、腕の伸ばして遠くに――――



 「あれ?」と違和感が生じた。



 「ん? どうした?」

 「いや、なんか既視感が……なんでだろう?」



 見たことのない文字のはずが、なんとなく見たことあるような…… このまま読めるような……



 それに気づいた瞬間、「あっ!?」と亮は人目も気にせず叫んだ。 



 持っていた本をクルリと逆さに持ち直した。

 すると、複雑怪奇だった文字はカタカナに変化した。



 「逆さ文字だ! アンビグラム……」



 アンビグラムとは文字を180度回転したり、90度回転させても同じ言葉……あるいは全く違う意味の言葉が浮き出る文字の仕掛けの事だ。



 「だとしたら……」とページを捲る。



 「読める。読めるぞ! ……でも、なんで? こんな文字の使われ方をしているんだ?」



 亮は、歴史の本を探そうとしたが、オーガさんに止められた。



 「おいおい! 流石に目立ちすぎだぜ?」



 「あっ、ごめん」を亮は謝る。

 街中でオーガさんの正体がバレたら、それでジ・エンドだ。

 文字通り、生きては帰れないだろう。

 亮は、おとなしく農業関連の書物を物色した。



 この日、亮たちが購入した物は、肥料と書物……それから大量の果実と砂糖だった。



 ・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・



 ダンジョンに戻った亮は包丁を持ち、まな板の前に立つ。

 そのまま、購入したばかりの書物を繰り返し読んで、これから作る物を確認している。

 まな板の上には大量の果物たち。亮の足元には、これまた大量の砂糖が置かれている。

 この光景だけ見れば、きっと「あぁ、なにかスイーツでも作るつもりなのだろう」と勘違いすることだろう。

 亮が作ろうとしているのは食べ物ではない。



 農薬だ。



 農薬と言っても自然農薬と言われるもの。

 唐辛子や米ぬかと利用したものもあるが、亮が作ろうとしているのは果物を利用した農薬だ。

 この世界の果物は、亮がいた『あちら側』と言われる世界の物とほぼ同じ物だ。



 作り方は簡単だ。



 ① 様々な種類の果実を切ります



 ② 大量の砂糖と混ぜます



 ③ 熱処理した瓶の中に入れます



 ④ 上から砂糖を追加します



 ⑤ 一週間、保管すれば完成です。



 「本当にこれでいいのか? と疑問に思うほど簡単だ」



 そう呟きながら、亮は実行に移す。



 まな板の上には、パイナップルやオレンジ、イチゴにバナナ……などなど。

 『あちら側』の世界の果実と差異はないと言ってもいい。

 亮は、それらをスパッスパッと包丁で切り裂いた。

 それらを容器に移し、砂糖と混ぜ合わせると――――



 「よし! 泡が出てきた」



 本によるとこの泡は二酸化炭素らしい。

 次に取り出したの大きめのガラス瓶だ。

 よく熱湯消毒した瓶へ、砂糖まみれになった果物を移し変えると――――



 ぎゅっ! ぎゅっ!



 素手で押し潰してやる。

 押し潰した上から蓋をするように砂糖を追加。

 そして、瓶の蓋をする。 ここで気をつけなければならないのは、この自然農薬から発生するガスだ。

 強く蓋を閉めて、二酸化炭素の逃げ場がなくなると危険だ。 少し緩めに閉めなければならない。

 これで後は1週間保存すれば完成となる。



 既に耕した土の中には、2つに切ったジャガイモが埋められている。

 順調に行けば40日後に収穫できるだろう。

 土と水の問題はクリアしている。問題は光だ。

 果たして、ダンジョン内の不思議な光だけでジャガイモは育つだろうか?



 おそらく、これから何度も失敗していく事になるだろう。



 それでも俺は――――



 「お~い 亮! お腹すいたぞ~」



 そんな事を考えているとオーガさんから食事の催促が聞こえてきた。

 亮は苦笑しながらも――――



 「はいはい、すぐに作ってお持ちしますよ。オーガさん!」



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