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『ダンジョンの守護者「オーガさんちのオーガニック料理だ!!」』

チョーカー

亮の初料理

 

 「お前も腹が減っているだろ? 少し待っていろ」



 オーガはそう言うと奥へ姿を消した。

 残された亮は、キョロキョロと現在地を確認する。

 広い空間だ。 まるで冒険者たちが言っていた安全地帯に良く似ている。

 ただ、入り口には明らかに人工的な扉があり、それがRPGのボス部屋を連想させる。

 しかし、それだけだ。 

 壁も床も天井もゴツゴツとした岩肌。部屋と言うよりも動物の住処みたいだ。



 「待たせたな。これを食え」



 帰ってきたオーガの手には鳥が二羽。

 一羽を亮の前に投げた。

 食えと言われたが、明らかに調理されていない鳥だ。

 食べ物と言うより死骸としか認識できない。 



 「……すいません。これどうやって食べるんですか?」

 「なんだ? お前、鳥の食べ方も知らないのか? こんな物は、こうやって食べるに決まっているだろ?」



 オーガはそのまま食べた。



 火の通していない鳥の生肉を、血抜きもせずに内蔵がそのままの鳥肉を、羽を毟らずそのまま……

 モシャモシャと咀嚼。

 そのまま、真っ直ぐな瞳で「な? 簡単だろ? お前も食べろよ」と語りかけてくる。

 いや、無理だ。 鳥肉を生で食べると食中毒になる可能性が高い。

 そもそも、羽って食べれるのか?

 内臓とか取り出さないと……その腎臓とか大腸に排出物が残っているわけで……



 「ご用意いただいて、誠に申し訳ないのですが、人間は鳥を生で食べる体にできていないのです」

 「生? そう言えば、人間はメシを食うときに食べ物を弄っていたな。なんて言ったけ? そう調理とか料理ってやつだ。前から、何のためにやっているのか不思議だったけど、あんな儀式を行わないと食事もまともに食べれないなんて大変だな」



 確かに……

 調理を必要とせず食事が可能な生物から見たら、人間が料理を行う姿を奇妙な儀式のように見えるかもしれない。 



 「それじゃ、やってみな。その料理ってやつを」

 「え?」



 オーガの言葉に亮はフリーズした。



 ・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・



 「ほら、言われたとおり、取ってきた鳥を直ぐに冷水で冷やしたぞ」



 おそらく、元の持ち主は冒険者だろう。

 耐水性の高い雑嚢ざつのうにダンジョン内部に流れる小川から汲んだ水を浸し、その中に仕留めた鳥を入れてオーガは帰ってきた。



 「は、早いお帰りですね」

 「あぁ、実は奥にボス部屋から外に直通のエレベーターがある」

 「……冗談ですよね?」

 「いや、元々は人間が作った遺跡だったなんて話もある場所だからな。そんな遺物もあるのさ」

 「……」

 「どうした? そんな何かを言いたげな顔をして?」

 「いえ、そんなエレベーターがあるなら、俺も直ぐ外に解放させてもらえるのではないか……と考えただけです」

 「そうか。ちなみに私は、珍しい人間が捕虜になったから暫くは観察して楽しもう……と考えている」



 オーガは手を腰に置き、「エヘン」と言いながら豊満な胸を後方に反らした。



 「捕虜! 捕虜のつもりだったのか!」

 「いや、逆にお前は何のつもりだった?」

 「……お客さん?」

 「ほう、怪我をさせずに人間を痛めつける方法を研究中だけど、試してもいいか?」

 「ごめんなさい。俺は哀れな捕虜でした」



 亮とオーガ。

 いつの間にか、距離感が縮んでいた気がする。

 それは、オーガの大雑把な性格が、亮に伝播したのかもしれない。



 「そうだ、コイツも必要って言ってたな」



 オーガが取り出したのは包丁だった。

 賢者が使っていた包丁を安全地帯から持ってきてもらったのだ。



 「もう蘇ったんだろ。あいつ等の姿はなかったが、予期せぬ全滅ってやつに慌てたらしい。いろいろと荷物は捨てて帰ったみたいだ」



 「ほれ」とオーガは軽い感じに包丁を亮に投げてよこした。



 軽い感じと言っても魔物の膂力は人間のソレを大きく凌駕している。

 亮の動体視力では捉えられない超スピード。

 頬が切れる程の距離で刃物が高速で通り過ぎていったことに亮は遅れて気づいた。



 「あっ、ごめんごめん! つい力が入っちゃった」

 「つい……じゃねぇよ! うっかりで死んでたまるか!」



 「まったく……」と愚痴をこぼしながらも投げられた包丁を小走りで取りに行く亮。

 それを見ているオーガは「こんな感じも悪くないね」と誰に聞かせるわけでもなく呟いていた。

 包丁を持って帰ってきた亮は、食材をしげしげと見る。



 「……ところで、この鳥ってなんて名前?」



 「さぁ? 知らない」とオーガ。

 少なくとも亮のいた世界――――賢者が言うところの『あちら側』にはいなかった鳥だ。

 いや、亮とて鳥に詳しいわけではないが……



 「まるでハトのサイズに縮んだ孔雀(クジャク)みたいだ」



 片手で持てる大きさだが、羽がやたら派手な感じ。

 鳥の下処理。



 (まずは水で冷やして……羽を毟むしっていくんだったよな?)  



 亮だって料理した事くらいはある。しかし、下処理から行うのは初めてだ。

 マンガや小説で得た頼りない知識でしかない。



 (どうして、こんな事になったのだろう?)



 そんな事を考えながら、なぞの鳥の羽を毟っていく。

 徐々に羽の下にある肌色が全体に広がる。

 取りきれなかった羽の残りや産毛を火であぶって……



 「さて、それじゃ……」 



 パンパンと亮は自らの頬を叩いた。

 次は難関だ。

 く、首と足を切り落とさないといけない。


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