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『ダンジョンの守護者「オーガさんちのオーガニック料理だ!!」』

チョーカー

オーガさんの蹂躙劇


 まるでスローモーションのように胸を貫かれた賢者が倒れていく。



 それは不思議な光景に見えた。

 冒険者が戦えば、鮮血が舞い散る様子ですら美があった。

 しかし、今はどうだろう? 亮は考える。

 目前で見る賢者の吐血はグロテスクであり、汚物のような嫌悪感があった。

 亮は、脳の処理速度が追いつかないのか? そんな不謹慎さな事を考えていた。

 だが、頭と体は違ったみたいだ。体は正常な判断を下した。

 倒れていく賢者を守るように彼女を抱きしめる。



 「大丈夫か?」



 しかし、意識を失っているのか?

 賢者からの返事はない。



 賢者の背後、彼女と入れ替わるように立っていた人の影が見えた。

 現れたのは女性だった。



 カラスの濡れ羽色とは、こういう色を言うのだろうか?

 腰まで伸びた黒髪は日本人の亮にすらエキゾチックな美しさを感じざるに得なかった。

 整った顔立ちにチラリと見える八重歯。

 その表情は自信家のソレであり、笑みを浮かべて歪んでいる。

 衣服は、兎に角とにかく露出が高い。

 まるで水着のビキニ。 しかし、それは見た目だけで、どうやら素材は動物の革みたいだ。

 体はしなやか。

 大型の猫科動物を連想させるように軽やかさがある。

 その女性には2点、奇妙な事があった。 無論、人の胸部を素手で貫いた事を除いてだ。



 1つは肌の色。

 全身が薄っすらとした緑色だった。



 もう1つは額の異物。

 額には2つ異物――――角つのが生えていた。



 誰かが叫ぶ。

 倒れた賢者に気がついた人がいた。



 「賢者がやられた! 魔物……オーガだ!」

 「馬鹿な! ここは安全地帯だぞ。 それにオーガだって? ここのボスじゃないか」

 「言ってる場合か! 最優先は賢者の救出と治療だ」



 あっと言う間に騒音が安全地帯ベースキャンプに広がる。



 「おちつけ!」



 リーダーの怒声に騒音が止まる。



 「総員戦闘準備。前衛はオーガの動きを止めろ。おそらく乱戦になる。後衛は大型魔法の使用を禁止。精度と回転数の速さで勝負だ」



 全員が「はい」と一糸乱れぬ返事。

 戦闘が開始された。



 ・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・



 その戦いは幻想的ファンタジーだった。

 盾を前面に展開した前衛3人は押されていた。

 比喩ではなく、両手を広げたオーガのタックルのような動作を抑えきれず、後ろへ後ろへ――――



 「前衛! 散開!」



 その声と同時に前衛たちは弾かれたように後ろに飛んだ。

 思わずバランスを崩してオーガの動きが止まる。



 「後衛! 放て!」



 後衛の魔法使いたち(?)が放つ魔法は光の矢となり、降り注いでいく。

 さすがオーガも被弾を免れない。

 しかし、被弾しながらも素手で魔法の矢を掴み、弾き、投げ捨てながらも進む。



 「ふん!」とピンクが動く。



 リーダーがオーガの側頭部に剣を振るった。

 これはに流石のオーガにもダメージが入ったみたいだ。



 「痛っ」と赤い血が零こぼれる。

 さらに二撃目。 しかし、それは通らない。

 リーダーの剣が掴まれた。



 ミシッミシッ……



 剣が軋む音を上げたと思うと、次の瞬間にはリーダーの剣は砕かれた。

 純粋な握力で剣を握りつぶしたのだ。



 「ぬっ!」とリーダーから驚きの声。

 「アハッハッハッ……」とオーガは狂気を秘めた笑い声を上げると――――



 手刀を放つ。

 リーダーが剣を持っていた腕に接触すると同時に血が舞い上がる。

 腕は切断。

 その痛み――――と言うよりも腕を失った動揺が大きいのだろう。

 リーダーは動きを止めた。 そこにオーガーの蹴りが入る。 

 身を守るはずの鎧は役に立たない。砕け散り、リーダーの体はサッカーボールのように蹴り飛ばされた。



 「リーダーがやられたぞ! 撤退戦だ。陣形を立て直し、しんがりを……」



 しかし、リーダーを失い、混乱が広がる。

 それを見たオーガは蹂躙を開始した。



 ・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・



 「……くん、チートくん!」



 腕の中で声がした。

 どうやら、賢者は命までは奪われていなかったみたいだ。



 「いいかい? 早く逃げるんだ」



 「はい」と返事をした亮は賢者を背負おうとする。



 「待て待て、待ちたまえ!」

 「え?」

 「まったく君は何をしようとしてるんだい? 私の事は置いていくんだよ」

 「いや、そんな事はできない!」



 そう力強く言う亮に賢者は、なぜかポカーンとした表情を浮かべる。



 「あぁ、そうかい……でも、大丈夫だよ。ここは異世界だよ。もう君の常識は通じない。それに私は冒険者だ。死んでも大丈夫。また会えるさ」

 「?」

 「……わからないかい? そうか、わからないだろうね」 



 賢者は亮に抱かれたまま、腕を伸ばす。どうやら、彼女の荷物を取りたいみたいだ。

 彼女の代わりに亮が荷物を取り、渡す。



 「ありがとう。この巻物を受け取りたまえ」

 「これは?」

 「これに血を一滴垂らすと、持ち主のステータスってのわかるようになる」

 「す、ステータス……ですか?」

 「ハハハ……自身の力量が数字化されるのに戸惑うの誰でも同じさ。 でも、君には何らかのチート能力が、特別な才能があるはずなんだ。まず、君がやるべき事は、それを知る事さ」

 「俺のやるべき事……知るべき事……」



 亮は賢者の言葉を繰り返した。



 「だから、早く私を置いて逃げ……」

 「それはできない」



 亮は頑なに賢者を背負い走り始めた。



 「この! 馬鹿者か! 君は!」



 背後に罵声を浴びながらも駆け出す亮。

 しかし――――



 「逃がさないよ」



 いつの間にか、正面にはオーガがいた。

 亮が意識を保っていたのは、そこまでだった。



 ブラックアウト。

 亮の視界は黒く染まった。




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