初めての恋
解き明かされる過去57
「何を今更、菅野雅がサッカー部に入部した理由は社会見学のはずですわ。キーパーになりたかった? 嘘も休み休み言いなさい不愉快だわ」「ウソ~? え~意味わかんないんですけど~? 将来の役に立つと思ったからお願いしたんだよね~」「そんな経験が役に立つなんてことありませんわ! プロになるならまだしも、素人がどこでキーパーをやることになるんですの?」
グイグイと食いついてくる三つ編み少女っ子。徐々に見た目とのギャップが出てきて、本性ってのがそろそろ顔を出しそうだ。
「へ、もしかしてフットサルとか知らないの? 今の時代、会社でもクラブの一つや二つあって当然だけど? いつの日か、あの選手権に出た男たちのボールを受けてましたって言ったら内定とか取れそうじゃないですか~?」「く、クラブくらいはあるかも知れないわ。でも、そんないい加減な理由で採用する企業なんて存在しないわ」「ほ~ええのうそれ、わしなら採用じゃね男らしさに惚れた。木村コーポレーションならウエルカムじゃよ」
ほら見ろ、いるじゃないか採用する会社が。って、あの木村コーポレーションが?
「こんな奴の会社など参考にならん! 話を逸らすんじゃないぞ! いいか君は被害者なのだ!」
悪の根源である二匹が針を喉の奥まで飲み込んだ。ここからは一気にこちらのペースに引きずり込むぞ。
「ヒガイシャ―? なんのです?」「校内暴力のだ! 君らはそこの四人にイジメられていた。無数のボールを血を吐くまで蹴り込まれた。善良な教育の場、しかもあの有名スポーツ校でこんな陰惨なことが起きてるなんて言語道断だ。報復を心配しているなら一緒に警察にでも教育委員会でも同行するぞ? なんなら、我が校に転入するのはどうだ? 学費無料で? な、悪い話ではないだろ?」
向こうは一気に畳みかけてきているつもりかもしれない。僕が本当の被害者ならこんな好条件に飛びつかない理由がない。
が、残念だけども僕はイジメられていないし転校もしたくない。誰が好き好んで初恋の子と自分から離れ離れになると言うのだ。固唾を呑んでことの成り行きを見守る春香を盗み見たらこんな茶番心の底から馬鹿らしくなった。
「何がおかしいのだね? 気でも触れたか? それとも、もうすでに報復を受けたのじゃないのか?」「だから、僕はイジメられてませんよ。こんな写真、あそこの練習風景を撮影したらそれっぽくなるでしょ? これはあなたが僕と四人があまり仲が良くないって思い込んでいるからそれっぽく見えるだけです」
午前中は有名選手と子供たちの触れ合いの時間と称しサッカー教室が開かれている。ここからも大勢の子供たちが憧れの選手とボールを追いかけ合って楽しそうに練習していた。一部でキーパーの練習だってしている。
それを遠目に僕が何の迷いなくそう切り返すと道明明日香は口ごもった。
「……それは……、でも、でも……」「そもそもだ! 仲が悪いのは本当じゃろ? そこに関しては目撃者が沢山いる。十人この写真を見れば八人はいじめを疑うはずだ」
孫娘に代わり僕らを睥睨する道明源三。まだ自分が勝つことを信じている様だ。
「いや、仲良いですけど? ね、寺坊、ハッシー、ノッチ、アッキー?」「おう、みやっち!」
昨日の敵は今日の友。拳を交えた同士だ、仲間と分かればもはや疑う余地はない。僕の呼びかけに瞬時に答えた四人と思わず満面の笑みを交わしてしまう。みやっちか。悪い気はしないあだ名だ。ここまできたら僕らはもう友達なのだ。
グイグイと食いついてくる三つ編み少女っ子。徐々に見た目とのギャップが出てきて、本性ってのがそろそろ顔を出しそうだ。
「へ、もしかしてフットサルとか知らないの? 今の時代、会社でもクラブの一つや二つあって当然だけど? いつの日か、あの選手権に出た男たちのボールを受けてましたって言ったら内定とか取れそうじゃないですか~?」「く、クラブくらいはあるかも知れないわ。でも、そんないい加減な理由で採用する企業なんて存在しないわ」「ほ~ええのうそれ、わしなら採用じゃね男らしさに惚れた。木村コーポレーションならウエルカムじゃよ」
ほら見ろ、いるじゃないか採用する会社が。って、あの木村コーポレーションが?
「こんな奴の会社など参考にならん! 話を逸らすんじゃないぞ! いいか君は被害者なのだ!」
悪の根源である二匹が針を喉の奥まで飲み込んだ。ここからは一気にこちらのペースに引きずり込むぞ。
「ヒガイシャ―? なんのです?」「校内暴力のだ! 君らはそこの四人にイジメられていた。無数のボールを血を吐くまで蹴り込まれた。善良な教育の場、しかもあの有名スポーツ校でこんな陰惨なことが起きてるなんて言語道断だ。報復を心配しているなら一緒に警察にでも教育委員会でも同行するぞ? なんなら、我が校に転入するのはどうだ? 学費無料で? な、悪い話ではないだろ?」
向こうは一気に畳みかけてきているつもりかもしれない。僕が本当の被害者ならこんな好条件に飛びつかない理由がない。
が、残念だけども僕はイジメられていないし転校もしたくない。誰が好き好んで初恋の子と自分から離れ離れになると言うのだ。固唾を呑んでことの成り行きを見守る春香を盗み見たらこんな茶番心の底から馬鹿らしくなった。
「何がおかしいのだね? 気でも触れたか? それとも、もうすでに報復を受けたのじゃないのか?」「だから、僕はイジメられてませんよ。こんな写真、あそこの練習風景を撮影したらそれっぽくなるでしょ? これはあなたが僕と四人があまり仲が良くないって思い込んでいるからそれっぽく見えるだけです」
午前中は有名選手と子供たちの触れ合いの時間と称しサッカー教室が開かれている。ここからも大勢の子供たちが憧れの選手とボールを追いかけ合って楽しそうに練習していた。一部でキーパーの練習だってしている。
それを遠目に僕が何の迷いなくそう切り返すと道明明日香は口ごもった。
「……それは……、でも、でも……」「そもそもだ! 仲が悪いのは本当じゃろ? そこに関しては目撃者が沢山いる。十人この写真を見れば八人はいじめを疑うはずだ」
孫娘に代わり僕らを睥睨する道明源三。まだ自分が勝つことを信じている様だ。
「いや、仲良いですけど? ね、寺坊、ハッシー、ノッチ、アッキー?」「おう、みやっち!」
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