初めての恋
出会いと戸惑い12
「え、っと、内緒です」
小悪魔が見せる悪戯的微笑みと言えば良いのだろうか。控えめに微笑んだ彼女に、僕を含めた男子陣からため息が零れる。
「くは、なんてこった! 始まってもいないのに負けなのか」
男子代表で拓哉が地に臥す。ココから見る限り春香さんを“狙っていた”者は結構いるらしく数人が頭を抱えている。恋の病に侵されたピュアボーイ達は一律みな表情が暗い。
「あ、みやび落としたわよ? なに、もしかしてあんたもショック受けてるわけ?」「ち、ちげーよ」
あまりの動揺にハンカチを手から滑り落としてしまった僕に、机の間を縫う様に脇まで滑ってきたそれを拾ってくれた奈緒が不敵に笑う。この子の感は呆れる程鋭い事を僕は知っていた。ココは必死に鼻先をかきながら否定する。
「そのハンカチ、春香さんのなんだよ。だから、ちょっとびっくりしただけだ」「え……、どうして、さっきは知っている人私以外いないって言ってたじゃない」「朝、たまたま自転車を直してあげただけだから名前までは知らなかったんだよ。良いからそれを返してくれ、“大切”なモノなんだ」
返答になっていない事は重々承知している。それでも奈緒なら僕が言いたい事を察してくれると思い真実と嘘を半々にしたんだ。
「ふーん、そっかそっか。あの恋に奥手なみやびが動揺するほど、春香の想い人に関心があるんだ」「べ、別に奥手とかそんなの関係ないから」「良いわ、“幼馴染”として協力してあげるわよ」
まったく、感が良いのか悪いのか言及し難い程に真っ直ぐな瞳を向けてくる。お互い屈んだ状態のままだと言うのに、奈緒は溌剌とした表情でハンカチを手渡してくると小さくガッツポーズをした。その小動物のような仕草の際、スカートの中身が見えそうになっていたのはこの際黙っておこう。いや、厳密には青と白の縞々であったのだが……。
「――、他には質問ありますか?」「頑張りなよ、みやび」「か、勘違いすんなよ」「そっちこそ勘違いしないで? 私は幼馴染として恋もした事ないみやびの協力してあげるだけだから――」と、言い不敵な笑みを浮かべ奈緒が立上がった。「はいはい、春香しつも~ん! 雅と友達になってくれない?」「おい、バカ! 何をいきなり言ってんだよ」「え、雅くんと?」
有言実行ってやつか。論より証拠っていうのか。考えるよりも即行動に移るお転婆娘が爆弾を投下しやがった・
「そう、雅が春香とお友達になりたんだって。友だちになってくれる?」「……、うん。当たり前だよ。私も雅君と友達になりたい」「そっかそっか。ならよかった。ね、雅、頑張りなさいよ? 私も応援するから」
キョットンとする僕と級友をしり目に、二人は独特な雰囲気を醸しそんなやり取りを展開した。やはり以前から二人は知り合いであることは明白であった。 それに意味深な友人関係契約の申請に対して、十秒ほど考え込んだものの春香さんは澄んだ声で快諾し、お節介な幼馴染はそれに満足したのかまた不敵な笑みを僕へ向けて浮かべると何食わぬ表情をして席に戻った。今のやり取りに何の意味があったのかは皆目見当もつかない。でも、確実に何かを意味しており、春香さんは僕と友達になってくれた。春香さんからも友達になりたいと言われ僕は天にも昇りそうな気分だ。勘違いするなと注意した矢先だってのに、奈緒は勝手な行動をとったもののそれは功を奏したのだ結果的に。漁夫の利ってやつか? いや、少し違うかもしれないけど気持ち的にはすごく得をした気分であることは間違いない。
「では、最後に」
通路に一人取り残され、春香さんが僕をじっと見てきたので照れくさくなるも「友達になりたい」と言ってくれた手前、僕は頷き返し、それをみた春香さんが自己紹介の締めを発する雰囲気を感じとりそそくさと席に着く。
「奈緒、……、またよろしくね。皆さんもこれから一年間よろしくお願いします」
何やら意味深な息継ぎがあった一言が終わり惜しみなく拍手が送られる。自分の自己紹介を終えた奈緒を呼び止めた時もそうだが、このタイミングで改めて奈緒に挨拶する必要はあるのだろうか。それほど二人は仲が良くて慇懃なまでに言葉を交わさなければ納得できない友情にアツい関係なのか。
小悪魔が見せる悪戯的微笑みと言えば良いのだろうか。控えめに微笑んだ彼女に、僕を含めた男子陣からため息が零れる。
「くは、なんてこった! 始まってもいないのに負けなのか」
男子代表で拓哉が地に臥す。ココから見る限り春香さんを“狙っていた”者は結構いるらしく数人が頭を抱えている。恋の病に侵されたピュアボーイ達は一律みな表情が暗い。
「あ、みやび落としたわよ? なに、もしかしてあんたもショック受けてるわけ?」「ち、ちげーよ」
あまりの動揺にハンカチを手から滑り落としてしまった僕に、机の間を縫う様に脇まで滑ってきたそれを拾ってくれた奈緒が不敵に笑う。この子の感は呆れる程鋭い事を僕は知っていた。ココは必死に鼻先をかきながら否定する。
「そのハンカチ、春香さんのなんだよ。だから、ちょっとびっくりしただけだ」「え……、どうして、さっきは知っている人私以外いないって言ってたじゃない」「朝、たまたま自転車を直してあげただけだから名前までは知らなかったんだよ。良いからそれを返してくれ、“大切”なモノなんだ」
返答になっていない事は重々承知している。それでも奈緒なら僕が言いたい事を察してくれると思い真実と嘘を半々にしたんだ。
「ふーん、そっかそっか。あの恋に奥手なみやびが動揺するほど、春香の想い人に関心があるんだ」「べ、別に奥手とかそんなの関係ないから」「良いわ、“幼馴染”として協力してあげるわよ」
まったく、感が良いのか悪いのか言及し難い程に真っ直ぐな瞳を向けてくる。お互い屈んだ状態のままだと言うのに、奈緒は溌剌とした表情でハンカチを手渡してくると小さくガッツポーズをした。その小動物のような仕草の際、スカートの中身が見えそうになっていたのはこの際黙っておこう。いや、厳密には青と白の縞々であったのだが……。
「――、他には質問ありますか?」「頑張りなよ、みやび」「か、勘違いすんなよ」「そっちこそ勘違いしないで? 私は幼馴染として恋もした事ないみやびの協力してあげるだけだから――」と、言い不敵な笑みを浮かべ奈緒が立上がった。「はいはい、春香しつも~ん! 雅と友達になってくれない?」「おい、バカ! 何をいきなり言ってんだよ」「え、雅くんと?」
有言実行ってやつか。論より証拠っていうのか。考えるよりも即行動に移るお転婆娘が爆弾を投下しやがった・
「そう、雅が春香とお友達になりたんだって。友だちになってくれる?」「……、うん。当たり前だよ。私も雅君と友達になりたい」「そっかそっか。ならよかった。ね、雅、頑張りなさいよ? 私も応援するから」
キョットンとする僕と級友をしり目に、二人は独特な雰囲気を醸しそんなやり取りを展開した。やはり以前から二人は知り合いであることは明白であった。 それに意味深な友人関係契約の申請に対して、十秒ほど考え込んだものの春香さんは澄んだ声で快諾し、お節介な幼馴染はそれに満足したのかまた不敵な笑みを僕へ向けて浮かべると何食わぬ表情をして席に戻った。今のやり取りに何の意味があったのかは皆目見当もつかない。でも、確実に何かを意味しており、春香さんは僕と友達になってくれた。春香さんからも友達になりたいと言われ僕は天にも昇りそうな気分だ。勘違いするなと注意した矢先だってのに、奈緒は勝手な行動をとったもののそれは功を奏したのだ結果的に。漁夫の利ってやつか? いや、少し違うかもしれないけど気持ち的にはすごく得をした気分であることは間違いない。
「では、最後に」
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