【WHO】ワールド・ハイド・オンライン

霧ヶ峰

第4話


 チュートリアルも無事終了し、ついに【Wワールド・Hハイド・Oオンライン】の世界へと降り立つことが出来た。


 
 チュートリアルの空間から一度暗転し、次に光が飛び込んできた時に目に映ったのは、大きな噴水を囲むように広がる広場と、そこから4方向に伸びる大通りだった。
 ベータテストの時とは違う始まり方であったため、辺りを見渡していると、ティロリン!という軽快な音が響き、目の前に【始まりの街〜タールカ〜】というポップが出てきた。
 ベータ時代ではなかった表記に謎の感動を受けながらも、岳斗はそのポップを指でタップして詳細表示指する。

「へぇ〜・・・街の地図なんてものも追加されたのか。まぁ、あれだけ迷子がいたらそうなるか」

 タップする事で出てきたのは、この街の大まかな地図だった。図書館や大きなNPCの店、各種ギルドの位置などだけが記された本当に簡単な地図ではあるのだが、幸いにもコンパスのマークと東西南北の門のお陰で、道に迷っても大丈夫そうだ。

「んじゃま、ギルドに行って登録してきましょっかね」

 地図は小さくして視界の右上らへんに置いておくとして、この世界で[来訪者ビジター]と呼ばれているプレイヤー達は、それぞれの得意分野を開拓しているギルドに所属するのが基本となっている。
 例えば、狩や収集が得意な人は[冒険者ギルド]に所属して野生動物の素材や薬草、鉱石などの採取でお金とギルドポイントと呼ばれるものを得ることが出来る。ギルドポイントはその所属しているギルドでポーションやアイテムと交換ができたりする。
 他にも[魔法師ギルド]や[生産ギルド]、[傭兵ギルド]などど様々に枝分かれしているのだ。中には特定の[ジョブスキル]を持っていなければ、そのギルドを見つけることも、所属することもできないものまである。



 噴水から伸びる大通りの1つを歩き、露店を出しているNPCを冷やかしたりしながら向かうのは、最も所属しているプレイヤーが多いであろう[冒険者ギルド]だ。

 南へ続く大通りを進み[冒険者ギルド]へと辿り着く。出遅れたためか、全くプレイヤーの姿を見かけないのだが、ギルド内に数人は居るだろうと思いながらも、その重厚な扉を開けると、カランカラン・・・と扉に付けられたベルがギルド内に鳴り響き、中にいた職員らしき数名とNPCの冒険者が入り口の方に目を向ける。



「・・・はっ!」

 誰の口から発せられたのかは知らないが、それを口火にして彫刻のように固まっていたギルドが動きを取り戻す。


「あ、ギルド登録お願いします・・・ってどうしたんですか?」

 懐かしいな〜とぼんやりしていたためか、岳斗はギルド内に漂っていた雰囲気が切り替わったことに気づかなかったらしく、そのままのほほんとした様子でカウンターまで歩いて行き、そこに座っている受付の女の人にそう声をかけた。

「・・・えっ、あっはい!登録ですね!では、こちらに必要事項を記入してください!」

 若干強張っているように見えるNPCの様子に首を傾げつつも、手渡された用紙に色々と書いていく。

『名前・・・性別・・・種族・・・得意な武器・・・職業は、[コマンダー]にしとこう・・・なんだこれ?自分のPRを書け?まいっか、適当に・・・っと』
「よし、できました」
「はい、では少しお待ちください・・・・・・はい、ではこちらがギルドカードになります。これが身分証にもなりますので無くされないようにお持ちになってくださいね。こちらのギルドではモンスター素材の買取も行っておりますので、もしお持ち込みになった際はこれをお見せください。お見せなさらない場合でも買取は行いますが、少し買取価格を割引きさせていただきますのでご了承くださいませ。そして、ギルドポイントもこのカードに集計されておりますので、御気をつけくださいね。
それでは、ミレニアム様。これからのご活躍を期待しております」
「はい、ありがとうございました」

 ギルド職員からギルドカードを受け取って簡単な説明を聞いたミレニアム岳斗は、ベータテストと同じだなぁ・・・と思ってうっかり笑ってしまうのだった。



 その後、なんとも言えない雰囲気に包まれたギルドを出たミレニアムだが、ちょっとした用事を済ませて再び噴水広場に戻り、ベンチを腰を下ろすとすぐさまステータス画面を開いて、いつもの5人に「噴水広場で待ってる」とメールを送る。
 その後、全員が集合するまでの時間を潰すためにweb掲示板を開いて立っているスレを覗きにいくのだった。 

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