にゃんでも俺は魔王だそうで

和琉河人

2話 ふざけるな

 湖のほとり、俺は一人で悲しみにくれていた。
その理由はただ一つ。
俺の姿が人ではなく、猫だったということだ。
一体なぜ今まで気がつかなかったんだろう。
いや確かに猫になりたいとは言ったが、その前に『獣人』としっかり明言したはずだ。
さては忘れやがったな、あのジジイめ。
救いがあるとすれば、猫は猫でも、俺の好きな黒猫で、我ながらベリーキュートなところか。
だけど、ただの猫ってのはなー。
こんな感じで俺がぶつぶつ言っていると、どこからかゴーと音が聞こえてきた。
だんだん音が大きくなってくる。
このとき俺は、その音が上から近づいてきていることに気付き、視線を上げてみる。
音の正体は、空から降ってくる謎の
『物体』だった。
「嘘だろ」
 身の危険を感じ、俺は瞬時に横に飛ぶ。
一拍遅れて、謎の『物体』は俺が元いた場所に落下した。
危機一髪、今のは本当に危なかった。
はやくも猫の俊敏さが役に立ったな。
猫になってちょっと良かったかも。
「ところで、何が落ちてきたんだ
 ろ。」
 俺は今落ちてきた『物体』の方を
見る。
するとそこには、図鑑ぐらいの大きさの本が、俺の頭の高さよりも少し高い位置にフワフワと浮かんでいた。
「何だこれ?」
 一瞬警戒して一歩後ろに下がるが、すぐに好奇心が勝った。
俺は少しずつ、宙に浮かぶ本へと近づいていく。
本の外見は黒を基調とし、金色で模様や文字(全く読めない)が描かれていてとても美しい(個人の感想です)
ところどころに散りばめられた色達が、どこか幻想的な雰囲気もかもし出している。
空から降ってきても傷1つ付かなかったり、宙に浮かんだりもするんだから、きっと何か特別な力が働いているんだろうな。
なんてのんきに考えてたら、いきなり本から強い光が放たれた。
まじまじと本の方を見ていた俺は、その光にやられ、一時的に視力を奪われる。
「目が、目が〜!」
 茶番ではない、本当に目がやられたのだ。
しばらくのたうち回った後、俺はなんとか目を開く。
視界に入ってきたのは、相変わらず宙に浮いたまま勝手に開かれた本と、そのページに描かれていた、まるで魔法陣のような模様だった。
そしてその模様から、今絶対聞きたくなかったあの声が聞こえてきた。
「もしもーし、聞こえるかのー?」
「・・・またお前のしわざかジジイ      
 ー!」

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