ヘンリエッテは野心家である。
第12話 属性変化
翌日の一限は、ジークリードさんにマスターするよう言われた属性変化系魔法の授業だった。
「魔法師にはそれぞれ得意な属性がある。もちろん得意でない属性も扱うことはできるが、出力が落ちる傾向にある。まずは、自分の得意な属性を知るところから始めよう」
そう言って先生は、手のひらサイズのガラス球を配る。
「このガラス球に魔力を流し込むと、内部で変化が起こる。どんな変化だと何の属性かは、初等魔法学の八十二ページを参照してくれ」
なになに……、属性はそもそも、熱・冷、乾・湿、光・影の、対になる六つの基本属性があり、その他に火・水・土・気の四元素がある。それらを組み合わせて様々な複合属性を作ることができる。たとえば雷属性は乾と光の属性に、水と気の元素を混ぜたもの、……らしい。
よくわかんないけど、要はやってみればわかるよね。
わたしは早速、ガラス球に手をかざし、魔力を流し込んでみる。
すると、ガラス球の中は渦を巻き、ビリビリと電気が流れ、熱を帯び、やがて一つの形に収まった。そのもやもやとした形は、なんとなくドラゴンに似ていた。
もちろんわたしは実物のドラゴンを見たことはないけど、お母さんに読んでもらった絵本で見たことがあった。それによく似ていたのだ。
これは何の属性なんだろう。わたしは隣のハンスに聞いてみることにした。
「ねぇ、これなんだと思う?」
「え? うーん……、なんだろう。アニータに聞いてみたら?」
彼のガラス球は、温かい光が灯っていた。なんの属性なんだろう。光、熱、火あたりのどれかかな。
わたしは反対を向いて、アニータにも聞いてみた。
彼女のガラス球の中は、渦ができていた。たぶん、風の属性かな。熱、冷、気の複合だったと思う。
「アニータ、これ何だかわかる?」
「なにこれ。テキストに載って……ないね」
すると、向こうの方が何やら盛り上がっていた。
「アンネローゼさん、すごいですね! これは極光属性といって、冷、湿、光、影、水、気の複合なんですよ!」
へぇ~、アンネはすごいなぁ。
ちなみにテキストによると、複合属性が使える者は、それぞれの単一属性も扱えることが多いらしいが、扱えない者も中にはいるとか。そうすると、アンネはすでに四つの単一属性と一つの複合属性を扱えるかも、ということになるんだね。
「先生ー! これは何の属性なんですか―?」
アニータがわたしのところへ先生を呼んだ。
「ちょっ、アニータ、何も今呼ばなくても……」
「だって、アンネローゼさんばっかり目立っても嫌じゃん。ヘンリエッテだってすごいのに」
気持ちは嬉しいけど、これじゃあまるで、アンネにケンカを売っているみたいじゃない。
「これは……!」
先生がわたしのガラス球を見るなり驚いた声を上げた。
「これは竜属性! 熱、乾、湿、火、土、気の複合です!」
竜属性って言われても、何がどうすごいのか、いまいちよくわからない。
「二人とも素晴らしいです。これらの属性は高等魔法学で学ぶものなので、なかなか目にすることはできませんよ」
高等魔法学かぁ。あとでジークリードさんに聞いてみよう。
「詳しいことは次回の授業で説明します」
こうしてこの授業は終わった。
授業が終わると、珍しくわたしのところにアンネがやってきた。
「アンネ、すごいね。高等魔法学だって」
「ヘンリエッテもね。ねぇ、研究室、入った?」
わたしは彼女の言わんとしていることが、すぐにわかった。
「うん。アンネも入ったの?」
「そうよ。今度あなたとやるときは、真剣勝負。絶対負けないから」
アンネの目は、敵意なんかに満ちていなかった。わたしを認め、競おうとしてくれてる。ライバル心に満ちた目だった。
「それはこっちのセリフだよ。わたしだって、負けない」
わたしがそう言うと、彼女はふっと微笑んで、食堂に足を向けた。
「楽しみにしてるわ」
「魔法師にはそれぞれ得意な属性がある。もちろん得意でない属性も扱うことはできるが、出力が落ちる傾向にある。まずは、自分の得意な属性を知るところから始めよう」
そう言って先生は、手のひらサイズのガラス球を配る。
「このガラス球に魔力を流し込むと、内部で変化が起こる。どんな変化だと何の属性かは、初等魔法学の八十二ページを参照してくれ」
なになに……、属性はそもそも、熱・冷、乾・湿、光・影の、対になる六つの基本属性があり、その他に火・水・土・気の四元素がある。それらを組み合わせて様々な複合属性を作ることができる。たとえば雷属性は乾と光の属性に、水と気の元素を混ぜたもの、……らしい。
よくわかんないけど、要はやってみればわかるよね。
わたしは早速、ガラス球に手をかざし、魔力を流し込んでみる。
すると、ガラス球の中は渦を巻き、ビリビリと電気が流れ、熱を帯び、やがて一つの形に収まった。そのもやもやとした形は、なんとなくドラゴンに似ていた。
もちろんわたしは実物のドラゴンを見たことはないけど、お母さんに読んでもらった絵本で見たことがあった。それによく似ていたのだ。
これは何の属性なんだろう。わたしは隣のハンスに聞いてみることにした。
「ねぇ、これなんだと思う?」
「え? うーん……、なんだろう。アニータに聞いてみたら?」
彼のガラス球は、温かい光が灯っていた。なんの属性なんだろう。光、熱、火あたりのどれかかな。
わたしは反対を向いて、アニータにも聞いてみた。
彼女のガラス球の中は、渦ができていた。たぶん、風の属性かな。熱、冷、気の複合だったと思う。
「アニータ、これ何だかわかる?」
「なにこれ。テキストに載って……ないね」
すると、向こうの方が何やら盛り上がっていた。
「アンネローゼさん、すごいですね! これは極光属性といって、冷、湿、光、影、水、気の複合なんですよ!」
へぇ~、アンネはすごいなぁ。
ちなみにテキストによると、複合属性が使える者は、それぞれの単一属性も扱えることが多いらしいが、扱えない者も中にはいるとか。そうすると、アンネはすでに四つの単一属性と一つの複合属性を扱えるかも、ということになるんだね。
「先生ー! これは何の属性なんですか―?」
アニータがわたしのところへ先生を呼んだ。
「ちょっ、アニータ、何も今呼ばなくても……」
「だって、アンネローゼさんばっかり目立っても嫌じゃん。ヘンリエッテだってすごいのに」
気持ちは嬉しいけど、これじゃあまるで、アンネにケンカを売っているみたいじゃない。
「これは……!」
先生がわたしのガラス球を見るなり驚いた声を上げた。
「これは竜属性! 熱、乾、湿、火、土、気の複合です!」
竜属性って言われても、何がどうすごいのか、いまいちよくわからない。
「二人とも素晴らしいです。これらの属性は高等魔法学で学ぶものなので、なかなか目にすることはできませんよ」
高等魔法学かぁ。あとでジークリードさんに聞いてみよう。
「詳しいことは次回の授業で説明します」
こうしてこの授業は終わった。
授業が終わると、珍しくわたしのところにアンネがやってきた。
「アンネ、すごいね。高等魔法学だって」
「ヘンリエッテもね。ねぇ、研究室、入った?」
わたしは彼女の言わんとしていることが、すぐにわかった。
「うん。アンネも入ったの?」
「そうよ。今度あなたとやるときは、真剣勝負。絶対負けないから」
アンネの目は、敵意なんかに満ちていなかった。わたしを認め、競おうとしてくれてる。ライバル心に満ちた目だった。
「それはこっちのセリフだよ。わたしだって、負けない」
わたしがそう言うと、彼女はふっと微笑んで、食堂に足を向けた。
「楽しみにしてるわ」
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