ヘンリエッテは野心家である。
第10話 先天性魔法体質
研究室にはリーゼロッテさんとフェレーナさんも来ていた。
「あー、早速 連れ込まれたのね」
「人聞きの悪いことを言うなよ。今度のコンテスト、ヘンリエッテにも参加してもらう」
「えっ、本当に?!」
フェレーナさんが一番驚いていたけど、リーゼロッテさんもちらっとこっちを見て、それからまた手元の本に視線を戻した。
「まぁ、とにかく座れ」
促されて、わたしとフェレーナさんは席に着いた。
「フェレーナ、俺を殴れ」
突然、ジークリードさんはそんなことを言いだした。
「え……、何なの急に。やめてよ、そういうの、セクハラだよ?」
「違う、そういうのに目覚めたわけじゃない。いいから殴れ」
なんかよくわからないけど、フェレーナさんも渋々といった様子でジークリードさんを殴りつけた。
よほど日頃の鬱憤が溜まっていたのか、随分と思い切り殴った。
しかし、その拳は不可視の壁によって阻まれる。
「さっきはこれを固有魔法と言ったが、これは正確には先天性の魔法体質によるものだ」
先天性魔法体質。生まれつき、特別な魔法的能力を宿した者のことだ。無意識化で魔法を発動させてしまうこともあるという。
でも何でその話題を……。ああ、やっぱりわかっちゃったのか……。
「俺のは“自動防御”。障壁とは少し違う防御魔法が、敵意を認識した時に自動で展開される。らしい」
そう、自分の魔法体質は、自分じゃよくわからないのだ。だって、息をしているのと同じようなものだから。どうやって息をしているかなんて、誰かに教えてもらって初めてわかるのと同じように、これも誰かに教わってわかるもの。
「ちなみにリズのもそうだ」
するとリーゼロッテ先輩は、前髪をよけて、赤い瞳を見せてくれた。
「我が魔眼に宿る能力は“未来視”。常より開眼していては存在を擦り減らすゆえ、普段は封印をかけているがな」
そうだ、三秒先を見る力。確かに、いつも三秒先を見てたら疲れちゃうよね。って、わたしは見れないから本当にそうかはわからないけど。
「フェレーナさんは何かあるんですか?」
「ううん、あたしは何も。普通よ、普通」
「まぁ、比較的、な」
意味深な発言を残して、それより、とジークリードさんが話題を戻した。
「お前も先天性魔法体質だ。そうだろ?」
やっぱりバレていた。でも、いつかはわかることだったわけだし。
「隠さなくてもいい。元々貴族の血筋の者は、稀に魔法体質になることがあるんだ」
そういえば、ジークリードさんもリーゼロッテさんも、そしてわたしも、“フォン”の名前を冠するんだった。つまり、貴族や王族の血筋。
「……はい」
「そうだな、俺の見立てだと……“無限回廊”、かな」
「“無限回廊”!? それって……実在するの?」
フェレーナさんは思わず席から立ち上がったが、ジークリードさんは何も言わず、視線で彼女を座らせた。
「違うのか? それともわからない、か?」
「……いえ、そうです。わたしの魔法体質は、“無限回廊”」
「あー、早速 連れ込まれたのね」
「人聞きの悪いことを言うなよ。今度のコンテスト、ヘンリエッテにも参加してもらう」
「えっ、本当に?!」
フェレーナさんが一番驚いていたけど、リーゼロッテさんもちらっとこっちを見て、それからまた手元の本に視線を戻した。
「まぁ、とにかく座れ」
促されて、わたしとフェレーナさんは席に着いた。
「フェレーナ、俺を殴れ」
突然、ジークリードさんはそんなことを言いだした。
「え……、何なの急に。やめてよ、そういうの、セクハラだよ?」
「違う、そういうのに目覚めたわけじゃない。いいから殴れ」
なんかよくわからないけど、フェレーナさんも渋々といった様子でジークリードさんを殴りつけた。
よほど日頃の鬱憤が溜まっていたのか、随分と思い切り殴った。
しかし、その拳は不可視の壁によって阻まれる。
「さっきはこれを固有魔法と言ったが、これは正確には先天性の魔法体質によるものだ」
先天性魔法体質。生まれつき、特別な魔法的能力を宿した者のことだ。無意識化で魔法を発動させてしまうこともあるという。
でも何でその話題を……。ああ、やっぱりわかっちゃったのか……。
「俺のは“自動防御”。障壁とは少し違う防御魔法が、敵意を認識した時に自動で展開される。らしい」
そう、自分の魔法体質は、自分じゃよくわからないのだ。だって、息をしているのと同じようなものだから。どうやって息をしているかなんて、誰かに教えてもらって初めてわかるのと同じように、これも誰かに教わってわかるもの。
「ちなみにリズのもそうだ」
するとリーゼロッテ先輩は、前髪をよけて、赤い瞳を見せてくれた。
「我が魔眼に宿る能力は“未来視”。常より開眼していては存在を擦り減らすゆえ、普段は封印をかけているがな」
そうだ、三秒先を見る力。確かに、いつも三秒先を見てたら疲れちゃうよね。って、わたしは見れないから本当にそうかはわからないけど。
「フェレーナさんは何かあるんですか?」
「ううん、あたしは何も。普通よ、普通」
「まぁ、比較的、な」
意味深な発言を残して、それより、とジークリードさんが話題を戻した。
「お前も先天性魔法体質だ。そうだろ?」
やっぱりバレていた。でも、いつかはわかることだったわけだし。
「隠さなくてもいい。元々貴族の血筋の者は、稀に魔法体質になることがあるんだ」
そういえば、ジークリードさんもリーゼロッテさんも、そしてわたしも、“フォン”の名前を冠するんだった。つまり、貴族や王族の血筋。
「……はい」
「そうだな、俺の見立てだと……“無限回廊”、かな」
「“無限回廊”!? それって……実在するの?」
フェレーナさんは思わず席から立ち上がったが、ジークリードさんは何も言わず、視線で彼女を座らせた。
「違うのか? それともわからない、か?」
「……いえ、そうです。わたしの魔法体質は、“無限回廊”」
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