ヘンリエッテは野心家である。
第8話 初等魔法学
「よし、全員いるな。今から配るものはずっと使っていくものだ。絶対に失くすなよ」
なんだろうと思っていると、昨日 研究室で見せてもらった初等魔法学の本だった。改めて見ても、分厚くて重い。
「これから一年半かけて、この内容をマスターしてもらう。そしてさらに一年半をかけて中等魔法学をマスターし、最後の一年で高等魔法学から一分野を選択して身に付ける。これが本校の卒業要件だ」
それで四年制なのね。
目次を開けてみると、広く浅くやるって感じかな。各系統の基本的な式を学ぶみたい。っていうか、これ本当に一年半で終わるの?
放課後、今日も研究室に行く。と、中にはジークリードさんだけだった。
「ヘンリエッテか。早いな」
「お二人はまだなんですね」
二人は二年生だし、わたしとはカリキュラムが違うのかもしれない。
「あの、研究室対抗コンテストなんですけど……」
「ああ、それなら心配ない。お前は出なくていいぞ」
あっさりと言われて、少しショックだった。いや、出たくなくて聞いたんじゃないのに……。
「あれも毎月あってめんどくさいからなぁ」
「その……わたしも出たいですっ!」
「え、そうなの? うーん……」
わたしが真っ直ぐ視線を向けると、ジークリードさんは何か考え始めた。
「わかった。俺の話を聞いてくれ」
「はい」
諦めろ、と言われるのだろうか。
「このコンテストが何なのかは、どこで聞いたか知らないが、たぶん知っているんだろう。これは研究室対抗、すなわち全学年の生徒が参加するんだ。魔法を習いたてのお前じゃ敵うわけない」
「足手まとい……ということですか?」
たしかにそうかもしれない。でも、チャンスと思えば……。先輩方の魔法を直に見れるチャンスだと。
「そうじゃない。危険だと言ってるんだ。さすがに命を危険にさらすような真似はしないと思うが、予算の欲しい連中は死にもの狂いさ。当然ケガしたりもする。去年のフェレーナは一発で伸びてたな」
そう言ってから、しまったと言わんばかりに、ジークリードさんは はっと目を逸らした。
「去年、フェレーナさんは出たんですね?」
「あれ、今年だったかな」
「今回が今年初めてですよね? 去年のフェレーナさん、一年生ですよね?」
「……あーわかったよ。どうしてここに来る女はどいつもこいつも……」
最後の言葉が気になるが、許可してもらえた。
「出るなら出るで、足手まといになると困る。お前、魔法はどの程度使える?」
「魔力操作系の基本は一通り。あとは障壁と、遠距離攻撃系の基本、身体強化も少しできます」
これらは学校に入る前、お母さんに教えてもらったものだ。もっとも、護身用としてだったんだけど。
「この時期でそれならなかなか優秀だ」
褒めてもらえると、素直にうれしい。じゃあ、少しは使えると思ってもらえたのかな。
「そうだな……。あとは属性変化系を基本でいいから何種類か、それから感知系も少し身に付けておけ。あー、感知系は中等課程か。身体強化の延長だし、いいか。中等魔法はそこにあるやつを使っていいから」
と、彼は本棚を指差した。
「はい! わかりました!」
「そんじゃあ早速、お手並み拝見といこうかな」
「え……?」
ジークリードさんがポケットから何かのカギを取り出し、本棚の横のドアの鍵穴に差し込んだ。
開いた扉の先には、隣の部屋ではなく、爽やかな風が吹き抜ける青々とした草原が広がっていた。
なんだろうと思っていると、昨日 研究室で見せてもらった初等魔法学の本だった。改めて見ても、分厚くて重い。
「これから一年半かけて、この内容をマスターしてもらう。そしてさらに一年半をかけて中等魔法学をマスターし、最後の一年で高等魔法学から一分野を選択して身に付ける。これが本校の卒業要件だ」
それで四年制なのね。
目次を開けてみると、広く浅くやるって感じかな。各系統の基本的な式を学ぶみたい。っていうか、これ本当に一年半で終わるの?
放課後、今日も研究室に行く。と、中にはジークリードさんだけだった。
「ヘンリエッテか。早いな」
「お二人はまだなんですね」
二人は二年生だし、わたしとはカリキュラムが違うのかもしれない。
「あの、研究室対抗コンテストなんですけど……」
「ああ、それなら心配ない。お前は出なくていいぞ」
あっさりと言われて、少しショックだった。いや、出たくなくて聞いたんじゃないのに……。
「あれも毎月あってめんどくさいからなぁ」
「その……わたしも出たいですっ!」
「え、そうなの? うーん……」
わたしが真っ直ぐ視線を向けると、ジークリードさんは何か考え始めた。
「わかった。俺の話を聞いてくれ」
「はい」
諦めろ、と言われるのだろうか。
「このコンテストが何なのかは、どこで聞いたか知らないが、たぶん知っているんだろう。これは研究室対抗、すなわち全学年の生徒が参加するんだ。魔法を習いたてのお前じゃ敵うわけない」
「足手まとい……ということですか?」
たしかにそうかもしれない。でも、チャンスと思えば……。先輩方の魔法を直に見れるチャンスだと。
「そうじゃない。危険だと言ってるんだ。さすがに命を危険にさらすような真似はしないと思うが、予算の欲しい連中は死にもの狂いさ。当然ケガしたりもする。去年のフェレーナは一発で伸びてたな」
そう言ってから、しまったと言わんばかりに、ジークリードさんは はっと目を逸らした。
「去年、フェレーナさんは出たんですね?」
「あれ、今年だったかな」
「今回が今年初めてですよね? 去年のフェレーナさん、一年生ですよね?」
「……あーわかったよ。どうしてここに来る女はどいつもこいつも……」
最後の言葉が気になるが、許可してもらえた。
「出るなら出るで、足手まといになると困る。お前、魔法はどの程度使える?」
「魔力操作系の基本は一通り。あとは障壁と、遠距離攻撃系の基本、身体強化も少しできます」
これらは学校に入る前、お母さんに教えてもらったものだ。もっとも、護身用としてだったんだけど。
「この時期でそれならなかなか優秀だ」
褒めてもらえると、素直にうれしい。じゃあ、少しは使えると思ってもらえたのかな。
「そうだな……。あとは属性変化系を基本でいいから何種類か、それから感知系も少し身に付けておけ。あー、感知系は中等課程か。身体強化の延長だし、いいか。中等魔法はそこにあるやつを使っていいから」
と、彼は本棚を指差した。
「はい! わかりました!」
「そんじゃあ早速、お手並み拝見といこうかな」
「え……?」
ジークリードさんがポケットから何かのカギを取り出し、本棚の横のドアの鍵穴に差し込んだ。
開いた扉の先には、隣の部屋ではなく、爽やかな風が吹き抜ける青々とした草原が広がっていた。
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