ヘンリエッテは野心家である。

エルトベーレ

第7話 研究室対抗コンテスト

「えー魔法は単式の組み合わせで、あらゆる現象を再現できます。えー例えば、水を発生させる魔法と熱を発生させる魔法を組み合わせると、えー、お湯を発生させることができます。えー、ただし、それだと長くなってしまうので、どうにか短縮できないかと始まったのが、えー構造分析学で……」
そう言いながら、だいぶ歳をとってる(と思われる)男の先生が、前の黒板に書き記していく。


ふわぁ〜……朝からこんなの聞いても全然頭に入んないよぉ……。でもこれ、固有魔法を考える上で重要な気がする。ん~……だけど、ノート取るので精一杯だわ……。



そして二限目。
「強靭な精神と強靭な肉体! 魔法師たるもの、備えていて当然だ!」
やたら熱の入った先生に、外のグラウンドを走らされ、筋力トレーニングをやらされる。おかげで目は覚めたけど、今度はすっかり疲れきってしまった。
わたしって、こんな体力なかったんだ……。



お昼休みになり、イスに深々と身体を投げ出す。
「んぅぅ~……もうムリぃ……」
「あはは、ヘンリエッテ、体力ないんだぁ」
アニータに笑われた。逆に、なんでアンタはそんなピンピンしてんのよぉ……。隣で言葉を発する余裕もないくらいへばってるハンスの方が、普通の反応だって。


「アニータは、どこか研究室入るの?」
「うん。『身体能力研究室』っ!」
うわぁ……うん、すごく合ってると思う。
「ハンスは……また後で聞くね」
彼はげんなりした様子でパンを水で流し込むように食べていた。


「ヘンリエッテはどこか入ったの?」
「わたしは『固有魔法研究室』ってところに入ったよ」
それを聞くなり、アニータの表情が一変した。
「えっ……そこって『狂乱の研究室インサニティ』って呼ばれてるとこじゃん。入った者は一週間と持たずに辞めていき、意気揚々と所属を希望した者は断られたり、変わった人が多いって」
そうは見えなかったけどなぁ。わたしは歓迎されたし。変わった人が多いのは事実だけど。
「ま、ヘンリエッテも変わってるし、だからかな」
なんて、また笑われる。
「ちょっと、わたしが変わってるってどういうことよっ」
「まぁまぁ。それじゃあ今度の研究室対抗コンテストは敵同士ね。言っとくけど、友達だからって手加減しないからね?」
「研究室対抗コンテスト……?」
何それ。初めて聞いたんだけど。何か作品を作って、その出来映えを競うとか?
「研究室って、それぞれ魔法を研究してるじゃん? それらを駆使してトーナメントを勝ち上がっていくの」
「もしかして、戦うの? バトル?」
『淫欲の研究室』とかあった気がするけど、大丈夫なの……?
「当たり前じゃん。別名を“予算争奪戦”。好成績の部には臨時予算が下りるんだって」
これにはピクッと身体が反応してしまう。
好成績を残せば報酬がある。それは賞金もそうだけど、その優秀な成績を残すこと自体が名誉なはず。そうすれば、わたしの評価も……。
「へぇ……面白そう」
「なんか、マジになってない? 顔が怖いよ?」
失礼な。
「アニータ、わたしも手加減しないからね」
「おー怖いねぇ。ヘンリエッテ様、どうかお慈悲を~」
わたし、そんなキャラだと思われてるんだ……。

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