ヘンリエッテは野心家である。
第5話 研究室
研究室は研究棟に集まってるんだっけ。どんな研究室があるんだろ。そう思って、一番近くの部屋の札を見ると、『召喚系死霊研究室』の文字。
もう文字列だけでわかるよ。いきなりヤバいって。絶対ヤバいって!
そこを素通りして、隣の部屋は『呪術研究室』と細々と震える字で書かれている。
怖いよっ! ここもヤバいって!
しかもその隣は『幼児期における魅力の研究室』。
ここは……わたしが入るべきじゃないよね。と、自分の身体を見下ろす。胸元から足元まですとんと見下ろせる。寂しいなぁ。
よく胸の大きい人はそこに魔力がつまってるんだって言うけど、そんなことないって。だって、わたしは魔力あるけど大きくないもん!
そんなこと考えてたら、『淫欲の研究室』なんてところに来ちゃった。な、なんでこんな研究室があるのっ!?
わたしは何も見なかったことにして、上の階に上がる。研究室の札だけちらちら見ながら、わたしは廊下を歩いていく。
どこもかしこもロクな研究室じゃないわね。本当に大丈夫なの? この学校。
すると、前を見てなかったせいか、誰かにぶつかってお尻から転んでしまった。
「あ、あのっ、すみませんっ!」
急いで謝ると、正面のお姉さんは手を差し伸べてくれた。
さらさらの金色のロングヘアで、すらっとした美人。なんだか理知的で、落ち着いた雰囲気の人だ。
「大丈夫?」
「はい、ごめんなさい」
彼女の手を取って立ち上がると、彼女はわたしを舐めるように眺めまわす。
「あの……」
「あなた、新入生?」
「は、はい」
「研究室、探してる?」
「はい……」
彼女は何も言わずにわたしの手を引き、とある研究室へと連れていった。
研究室に入る前に一瞬見えた札には、『固有魔法研究室』と書かれていた。
研究室の中にいたのは、先輩と思しき体格のいい男の人。それから、黒いロリィタ調の改造制服を着た少女。
「おかえり、フェレーナ。その子は?」
男の人が、わたしを一瞥して尋ねた。
「どの研究室に入ろうか迷ってたから、連れてきた」
「そういうことなら、歓迎しよう。ようこそ、固有魔法研究室へ!」
いや、まだ入るって言ってないんだけど……。
「ふふふ……闇夜にしか嗤わぬ我が眷属がなにやら騒いでいる。貴様に共鳴したのやもしれん。それならば、我と悠遠なる刻を共にしないか?」
この黒ロリの人は、なんかよくわからないこと言ってるし……。
しかもこの人、片目の色が違う。右目は灰色だけど、左目は深い赤。なにか魔法的な原因なのかな。
「入らないの? だって」
フェレーナと呼ばれたお姉さんは、黒ロリの人の言葉を翻訳してくれた。っていうか、あんな長かったのにたったそれだけ?!
「この研究室は、何を研究してるんですか?」
「名前の通りさ。自分だけの魔法、固有魔法だよ」
自分だけの、魔法……。いいかも、と思ってしまっている自分がいた。ここだってどう見てもイカれてそうな研究室なのに、わたしはここに惹かれていた。
「でも色々ヤバいこともやってるから、影では狂乱の研究室なんて呼ばれてるらしいけど」
「ちょ、フェレーナ、余計なこと言うなよ。入ってくれなかったらどうすんだ」
……聞かなかったことにしよう。
「わかりました。ここに入ることにします。えっと、わたしはユリア・ヘンリエッテ・フォン・エッフェンベルクです。ヘンリエッテと呼んでください。よろしくお願いします」
「オーケー、ヘンリエッテ。俺はジークリード・フォン・グラディッシュ。十一期生で、ここの長だ。改めて歓迎しよう」
と、男の人が自己紹介してくれた。
すると、続いて黒ロリの人も挨拶してくれる。
「我は深淵の魔女、リーゼロッテ・フォン・アイゼンシュタイン」
そして最後に、わたしをここに連れてきたお姉さんが名乗った。
「あたしはフェレーナ・ミヒャエリス。リズと同じで十三期生よ。よろしくね」
こうしてわたしは、個性的な面々が集まる『固有魔法研究室』に所属することになった。
もう文字列だけでわかるよ。いきなりヤバいって。絶対ヤバいって!
そこを素通りして、隣の部屋は『呪術研究室』と細々と震える字で書かれている。
怖いよっ! ここもヤバいって!
しかもその隣は『幼児期における魅力の研究室』。
ここは……わたしが入るべきじゃないよね。と、自分の身体を見下ろす。胸元から足元まですとんと見下ろせる。寂しいなぁ。
よく胸の大きい人はそこに魔力がつまってるんだって言うけど、そんなことないって。だって、わたしは魔力あるけど大きくないもん!
そんなこと考えてたら、『淫欲の研究室』なんてところに来ちゃった。な、なんでこんな研究室があるのっ!?
わたしは何も見なかったことにして、上の階に上がる。研究室の札だけちらちら見ながら、わたしは廊下を歩いていく。
どこもかしこもロクな研究室じゃないわね。本当に大丈夫なの? この学校。
すると、前を見てなかったせいか、誰かにぶつかってお尻から転んでしまった。
「あ、あのっ、すみませんっ!」
急いで謝ると、正面のお姉さんは手を差し伸べてくれた。
さらさらの金色のロングヘアで、すらっとした美人。なんだか理知的で、落ち着いた雰囲気の人だ。
「大丈夫?」
「はい、ごめんなさい」
彼女の手を取って立ち上がると、彼女はわたしを舐めるように眺めまわす。
「あの……」
「あなた、新入生?」
「は、はい」
「研究室、探してる?」
「はい……」
彼女は何も言わずにわたしの手を引き、とある研究室へと連れていった。
研究室に入る前に一瞬見えた札には、『固有魔法研究室』と書かれていた。
研究室の中にいたのは、先輩と思しき体格のいい男の人。それから、黒いロリィタ調の改造制服を着た少女。
「おかえり、フェレーナ。その子は?」
男の人が、わたしを一瞥して尋ねた。
「どの研究室に入ろうか迷ってたから、連れてきた」
「そういうことなら、歓迎しよう。ようこそ、固有魔法研究室へ!」
いや、まだ入るって言ってないんだけど……。
「ふふふ……闇夜にしか嗤わぬ我が眷属がなにやら騒いでいる。貴様に共鳴したのやもしれん。それならば、我と悠遠なる刻を共にしないか?」
この黒ロリの人は、なんかよくわからないこと言ってるし……。
しかもこの人、片目の色が違う。右目は灰色だけど、左目は深い赤。なにか魔法的な原因なのかな。
「入らないの? だって」
フェレーナと呼ばれたお姉さんは、黒ロリの人の言葉を翻訳してくれた。っていうか、あんな長かったのにたったそれだけ?!
「この研究室は、何を研究してるんですか?」
「名前の通りさ。自分だけの魔法、固有魔法だよ」
自分だけの、魔法……。いいかも、と思ってしまっている自分がいた。ここだってどう見てもイカれてそうな研究室なのに、わたしはここに惹かれていた。
「でも色々ヤバいこともやってるから、影では狂乱の研究室なんて呼ばれてるらしいけど」
「ちょ、フェレーナ、余計なこと言うなよ。入ってくれなかったらどうすんだ」
……聞かなかったことにしよう。
「わかりました。ここに入ることにします。えっと、わたしはユリア・ヘンリエッテ・フォン・エッフェンベルクです。ヘンリエッテと呼んでください。よろしくお願いします」
「オーケー、ヘンリエッテ。俺はジークリード・フォン・グラディッシュ。十一期生で、ここの長だ。改めて歓迎しよう」
と、男の人が自己紹介してくれた。
すると、続いて黒ロリの人も挨拶してくれる。
「我は深淵の魔女、リーゼロッテ・フォン・アイゼンシュタイン」
そして最後に、わたしをここに連れてきたお姉さんが名乗った。
「あたしはフェレーナ・ミヒャエリス。リズと同じで十三期生よ。よろしくね」
こうしてわたしは、個性的な面々が集まる『固有魔法研究室』に所属することになった。
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