ヘンリエッテは野心家である。
第2話 最初の授業
一体なんなのあの子……。
あの子の障壁、すべてピンポイントに私の攻撃した一点のみに張られていた。あの一瞬であれだけ正確に、そして強固なものを張れるなんて……。
それに最後の一撃。私は本気だった。あの子の障壁を打ち破る自信はあったし、気絶くらいは覚悟してもらおうと思って打ち込んだ。
それなのに……。
ユリア・ヘンリエッテ・フォン・エッフェンベルク。あなたは私の前に立ちはだかる壁になりそうね。これからの学校生活も、少しは楽しめそうで安心したよ。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
はっと飛び起きると、窓からはまぶしい朝日が差し込んでいた。
ああ、そっか。あの後は疲れちゃって、部屋に帰ったらすぐ寝ちゃったんだ。
シャワー浴びて、準備しよう。今日から本格的に、授業が始まるんだ。今から楽しみ!
教室に着いて、昨日と同じ席に座る。別に席は決まってないけど、なんとなく同じ席に座った。
今日は、隣に誰もいない。アンネは……ちょっと遠いな。嫌われちゃった……かな。
ビルクナー先生が教室に入ってきて、ようやく授業が始まる。
「入学を認められたお前たちは、それなりに魔力の制御ができるはずだ。今日はまず、魔力に指向性を持たせることから始める」
ついてこい、とビルクナー先生は開始早々教室を出て、演習棟の訓練場に場所を移した。
「それなりに制御できると言っても、暴走させるバカもいる。そういう奴は補習だから覚悟しとくように。では、二人一組でペアを作れ」
えっ……あ、アンネは……もうペア作ってるし! どうしよう、昨日のうちに誰か友達作っとくんだったなぁ……。
「あ、あの、もし相手決まってなければ……僕と組まない?」
そう、おどおどした様子で話しかけてきたのは、わたしよりも背の低い男の子だった。
「いいよ。わたしはヘンリエッテ。よろしくね」
「あ、僕はハンス。よろしく」
これでなんとかペアは作れた。
「全員組めたな? 次に、お互いに向かい合って、腕を伸ばして立ち、手を合わせろ」
ハンスの正面に立って、手を伸ばし、手のひらを重ねる。あ、手は彼の方が大きい。
「よし。その状態から魔力を相手に向けて流し込み、相手を突き飛ばしてみろ。順番を決めて交互にやるように」
「えっと、どっちからにする?」
「じゃあ、わたしからでいい?」
「わかった」
先生の言ったとおり、腕に魔力を流し、手のひらから放出するイメージで……。
「うわぁっ!」
ハンスが後ろに突き飛ばされた。って、結構飛んだわね……。手加減したつもりなんだけど、まだ強かったかな。
「ごめん、大丈夫?」
「ああ、うん、大丈夫」
今度はハンスがわたしに向けて魔力をぶつけてくる。
あ、確かに手のひらから腕を伝って衝撃が来る。でも、少し後ろに押し返されただけで、突き飛ばされはしなかった。
「やっぱり僕なんかの魔力じゃ、こんなもんだよね……」
「あの、なんかごめんね……」
そう、魔力の量には個人差がある。それが必ずしも優劣になるわけじゃないけど、不利に働くことが多いのは事実。
わたしとは、違うんだ。
「その他にも、足先に向けて流してみれば、普通より高く跳躍できたり、相手から向けられた魔力の向きを変えることもできる。それの応用が障壁魔法だな」
へぇー、とか思ってしまう。使っていても、原理までは知らなかったりするのだ。
ここで授業終了を告げる鐘が鳴り、わたしたちは教室に戻った。
「組んでくれてありがとうね、ヘンリエッテさん」
別れ際に、ハンスは屈託のない笑顔を見せた。
「こちらこそ、ありがとうね」
あの子の障壁、すべてピンポイントに私の攻撃した一点のみに張られていた。あの一瞬であれだけ正確に、そして強固なものを張れるなんて……。
それに最後の一撃。私は本気だった。あの子の障壁を打ち破る自信はあったし、気絶くらいは覚悟してもらおうと思って打ち込んだ。
それなのに……。
ユリア・ヘンリエッテ・フォン・エッフェンベルク。あなたは私の前に立ちはだかる壁になりそうね。これからの学校生活も、少しは楽しめそうで安心したよ。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
はっと飛び起きると、窓からはまぶしい朝日が差し込んでいた。
ああ、そっか。あの後は疲れちゃって、部屋に帰ったらすぐ寝ちゃったんだ。
シャワー浴びて、準備しよう。今日から本格的に、授業が始まるんだ。今から楽しみ!
教室に着いて、昨日と同じ席に座る。別に席は決まってないけど、なんとなく同じ席に座った。
今日は、隣に誰もいない。アンネは……ちょっと遠いな。嫌われちゃった……かな。
ビルクナー先生が教室に入ってきて、ようやく授業が始まる。
「入学を認められたお前たちは、それなりに魔力の制御ができるはずだ。今日はまず、魔力に指向性を持たせることから始める」
ついてこい、とビルクナー先生は開始早々教室を出て、演習棟の訓練場に場所を移した。
「それなりに制御できると言っても、暴走させるバカもいる。そういう奴は補習だから覚悟しとくように。では、二人一組でペアを作れ」
えっ……あ、アンネは……もうペア作ってるし! どうしよう、昨日のうちに誰か友達作っとくんだったなぁ……。
「あ、あの、もし相手決まってなければ……僕と組まない?」
そう、おどおどした様子で話しかけてきたのは、わたしよりも背の低い男の子だった。
「いいよ。わたしはヘンリエッテ。よろしくね」
「あ、僕はハンス。よろしく」
これでなんとかペアは作れた。
「全員組めたな? 次に、お互いに向かい合って、腕を伸ばして立ち、手を合わせろ」
ハンスの正面に立って、手を伸ばし、手のひらを重ねる。あ、手は彼の方が大きい。
「よし。その状態から魔力を相手に向けて流し込み、相手を突き飛ばしてみろ。順番を決めて交互にやるように」
「えっと、どっちからにする?」
「じゃあ、わたしからでいい?」
「わかった」
先生の言ったとおり、腕に魔力を流し、手のひらから放出するイメージで……。
「うわぁっ!」
ハンスが後ろに突き飛ばされた。って、結構飛んだわね……。手加減したつもりなんだけど、まだ強かったかな。
「ごめん、大丈夫?」
「ああ、うん、大丈夫」
今度はハンスがわたしに向けて魔力をぶつけてくる。
あ、確かに手のひらから腕を伝って衝撃が来る。でも、少し後ろに押し返されただけで、突き飛ばされはしなかった。
「やっぱり僕なんかの魔力じゃ、こんなもんだよね……」
「あの、なんかごめんね……」
そう、魔力の量には個人差がある。それが必ずしも優劣になるわけじゃないけど、不利に働くことが多いのは事実。
わたしとは、違うんだ。
「その他にも、足先に向けて流してみれば、普通より高く跳躍できたり、相手から向けられた魔力の向きを変えることもできる。それの応用が障壁魔法だな」
へぇー、とか思ってしまう。使っていても、原理までは知らなかったりするのだ。
ここで授業終了を告げる鐘が鳴り、わたしたちは教室に戻った。
「組んでくれてありがとうね、ヘンリエッテさん」
別れ際に、ハンスは屈託のない笑顔を見せた。
「こちらこそ、ありがとうね」
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