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竜王は魔女の弟子

エルトベーレ

第24x話 双葉杯 開幕

週が明け、今日からまた莉奈さんとの朝練が再開される。が、俺を迎えに来たのは一人ではなかった。


「お、おはよう……」
「おはよう……」
莉奈さんと一緒に、なぜか千条がいた。まさか、こいつも……?


「……莉奈さん、こいつはどうして拾ってきたんだ?」
「パートナーなんでしょ? 一緒に練習した方が良くない?」
たしかにそうだが……。俺はこの莉奈さんとの時間を毎日楽しみにしてたのに……。


「そういうわけで、よろしくね」
「それにしても、凌太くんが愛璃亜ちゃんと組むとはねー……」
「……何だよ?」
意味深な視線を送ってくる莉奈さんに、俺は嫌な予感がした。……千条は特に何とも思っていないようだが。
「いやぁ、そんなに愛璃亜ちゃんの胸が気に入っちゃったのかなーと思って」
「なっ!? ……そ、そうなの?」
「ち、違う! 断じて違うぞ!」
まったく、なんてことを言いだすんだ、莉奈さんは。千条も軽く本気にしている。が、意外にも、そこまで怒った様子はなかった。
「と、とにかく、朝練だろ?」
「はいはい。じゃあ、行こうかー」



そんなこんなで、莉奈さんには朝、武術の訓練をしてもらい、放課後に俺と千条で霊術と竜脈の力の調整をする。そんな練習を続けていくうちに、いよいよ双葉杯当日がやってきた。


「千条、調子はどうだ?」
「上々ね。そっちは?」
「同じくってところだな。……これに勝てば、明日の準決勝行きだ」
「えぇ、楽しみね……!」


トーナメント制の双葉杯は、一日目は準々決勝まで行い、二日目に準決勝と決勝を行う。これが今日の最終戦、準々決勝。
ここまで短いインターバルしかないため、疲労も蓄積しているが、まだ竜の力も使っていないし、何とかなるだろう。


『準々決勝第一試合出場選手は入場してください』
そのアナウンスが聞こえ、俺と千条は目配せして、屋内競技場のフィールドへ向かった。



『さぁ、本日も大詰め! 明日の準決勝行きを賭けた最初の試合、まずは東ゲート! 二年生、桜井さくらい志保しほ&一年生、一条美鳳!!』
その騒がしい実況とともに、向かいのゲートから名前を呼ばれた二人が出てきた。


『そして西ゲート! 一年生、千条絢郁&同じく一年生、冰波凌太ーッ!』
俺達もゲートから入場し、所定の位置につく。


「しっかり牧野たちも残ってるし、ここで俺たちが負けるわけにはいかないよな?」
「ふふん、当然ね」
『試合開始ー!!』


その合図とともに、まずは役割を分担する。遠距離主体の千条と、近距離主体の一条では分が悪い。だが、二年生の桜井は槍を得意とした中距離型だったはずだ。そっちを千条に任せた方が、まだ勝機はある。


俺は千条を狙わせないように一条の背後に飛び、打刀で足元を払う。
さすがに新星杯でも瞬間移動は見せていたし、これは避けられたが、狙いは千条から遠ざけること。ひとまずはこれでいい。


一方の千条は結界を展開せず、炎の玉を高速で連射し、桜井を寄せ付けない。……あっちは大丈夫そうだな。
『桜井選手、押されています! 四方八方から襲いかかる炎に耐えきれるか!?』
『千条の術式は派手で豪快なものが多いからねぇ』
千条の様子は実況と解説を聞けばわかる。なら、俺も負けてられない。


一条の得物はカイザーナックル。指の背の部分から爪のようなものが出ている。ただでさえ一撃もらうとやばいってのに……。
俺は一条にあえて接近戦を挑み、瞬間移動でわずかに動いて、彼女の拳を紙一重でかわしながら、反撃を入れる。


しかし、一条も簡単には通さない。なんと、俺の剣撃を拳で弾き、そのまま流れるような連撃を入れてくる。
俺は瞬間移動で空中に退避し、打刀を投げ槍の要領で一条に投げつけ、その間に短刀に持ち替えた。


『おぉっと、冰波選手、武器を手放した?!』
『一条流のような超接近戦の場合は刀ですら邪魔になるわ。短刀なら速度もつくし、当然の選択だねぇ』
『冰波選手、そのまま突っ込むが、一条選手も受けて立つ! 両者相打ちかァ!?』
刀は避けられることはわかっていたが、持ち替える時間を稼いだ俺は、上から反動をつけて振り下ろすが、それは一条も予想の範囲内。


普段の俺なら、ここは迷わず背後に飛んでいたが、今回はそんな芸のないことはしない。
ギリギリまで引きつけて、一条がカウンターで出した右拳の触れる瞬間に、すり抜けるようにその拳の下に瞬間移動する。そのまま短刀を突き出し、腹を裂く。
つもりだったが、ここでもそうはいかない。一条は咄嗟に左手で短刀を掴み、突き刺さる直前に止めてみせた。押し負けまいと力を込めて震える彼女の手からは、赤い滴がしたたり落ちる。
『一条選手の、息を飲むような絶妙のブロックが決まったぁーっ!!』


一条は空振った右拳をそのまま俺に叩き込むが、俺はそれを空いている左手で受け止める。さっき持ち替えていなければ、これは受けられなかった。
『冰波選手も負けじと止めるっ!』
霊力を込めているせいか、女の子にしてはかなり力が強い。気を抜くと押し負けてしまいそうだ。


「接近戦で私と張り合えるなんて……、やりますね……!」
「あいにく……、うちの師匠も近接型なんでね……!」
一条の表情にはまだ余裕がある。たぶん、まだ霊力を込めれば押し返せるのだろう。だが、その瞬間こそが転換点……!


『ここまで圧倒していた千条選手、段々と距離を詰められていっています!』
『もう見切られたかな……』
そんな不穏な実況が聞こえ、俺は勝負を仕掛ける。……本当はまだ温存したかったが仕方ない。


俺は竜脈を刺激し、力を引き出す。
すると、一条の拳から力が抜けていくのがわかった。俺はすかさず短刀を腹部に押し込み、そのまま横に裂く。
「く……ぅっ、なんで……っ!?」
一条の表情からは明らかな動揺が見て取れた。霊力がかき消されていくのが、自分自身でもわかったのだろう。
『ついに! これまで互角だった二人にも動きがありました! 一条選手、これは痛恨の一撃!!』


だが、霊術が使えなくてもさすがに一条家の者だ。力の面で劣ると判断した彼女は、スピードに切り替えて、素早い連撃を繰り出してくる。
この状態では瞬間移動は使えないし、これはいちいち避けてもいられない。しかし、こここそが、莉奈さんとの鍛錬の成果を発揮するところでもあった。
幸い、相手の動きはまだ目で追える。ただ避けるのではなくて、攻撃に繋げる……!
彼女の拳を避けてそのまま懐に入り、反撃の反対側の拳を封じつつ、腕で突かずに、拳を構えたまま体ごと突っ込んだ。
これを受けた彼女は、俺の腕を引きつつ仰け反るように倒れ、俺も一緒になって倒れてしまった。

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