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竜王は魔女の弟子

エルトベーレ

第19x話 竜脈

「お前か……。まぁ、詳しいことは理事長室で聞こう」
「はい……」
「えっ、理事長っ?!」
"五条"の人間なのに、知らなかったのか……。
といっても、俺も入学の際に一度、その後にもう一度呼び出されただけだが。


九条羽衣うい
九条家の当主にして、ここ、護城学園の理事長。当然、九条流剣術の使い手で、霊術にも長けているらしい。


俺たちはそのまま理事長室に転移させられ、事情を説明する。
「この学園の生徒には、知らせてもいいんじゃないっすかね。……あんな事件もあったことだし」
「……私としても、そうしたいところなんだがな……」
この前の襲撃事件も、この"力"が関係していることは間違いなく、それは理事長も気付いているようだった。


「万が一の時は……"駆除"して構いませんから」
「……はぁ。わかった……。"レベル2"までは許可しよう。それ以上を許可なく使った場合は、相応の処分になると思え。……今のお前なら、それでも充分危険だがな」
「ありがとうございます」
寛大な対応に、俺は深々と頭を下げる。


「それから、情報の開示だが、こちらは黙認しよう。どうせ大会で使うなら、隠そうとしても隠し切れないだろうからな。ただし、必要最低限に収めろ。あまり余計なことを話して、生徒達の恐怖心や好奇心を煽るのは本意ではない」
「わかっています」


「……話は以上だ。"主人"が見つかったら、紹介しろよ」
などと、ここまで凛としたまま一切表情を変えなかった理事長が、最後に悪戯な笑みを見せた。まるで母親かのような物言いだ。



俺たちは退室すると、千条に拉致られ、そのまま彼女の部屋に連れ込まれた。


「さぁ、説明してもらうわよ」
白とピンクを基調とした女の子らしい部屋で、少し物が散らかっているのが妙に生活感がある。
ほのかに香ってくる甘酸っぱい匂いは、たとえるなら……柑橘系だろうか。
俺は適当に腰を下し、挑戦的な態度で口を開く。


「それじゃあまずは、お前がどう感じたかを聞かせてもらおう。答え合わせはその後だ」
もちろん、ただからかっているわけではない。彼女の分析能力、思考力を量るためでもある。
「霊術を打ち消す力……とか?」
あらかじめ目星はついていたのか、彼女はそんなに間を取らずに答えた。


「それから?」
「うぅ……他にもあるの?」
今度はしばし考え込んだが、何も思い浮かばなかったようだ。
霊術を打ち消すってところは大体あってるが、観察力には乏しいみたいだな。もっとも、そんな余裕はなかっただけかもしれないが。


「俺のこの力は"竜脈りゅうみゃく"と呼ばれるもので、霊力とは違うものなんだ。そいつが霊力を拒絶する性質を持っていてな。霊脈そのものや、霊術による干渉を受けないのさ」
「"竜脈"……?」
「お前にもあるぞ」
「ほ、ホントっ!?」
俺の言葉に、千条は自分の体を眺めまわす。
……こいつ、バカなんじゃないか?


「誰でも持ってるが、普通は見えないし、その力を扱うこともできない。竜脈ってのは、人体を流れる霊脈とは違って、直接生命活動に関わっていない、いわば余分な力だからな。その力に魅入られた者だけが、呼び覚ますことができるんだよ」
「あんたは、その魅入られた者だって言うの?」
少し悔しそうな眼差しを向けられる。ここまではメリットしか話していないから、羨ましいのかもしれないな。


「竜脈が見え、扱えるようになるには、必ず"きっかけ"がある」
「"きっかけ"?」
「……精神がぶっ壊れるほどの体験をすることだ。さっきお前も見ただろ? 竜脈の力は、常に持ち主の意識を飲み込もうとしてくる。精神がぶっ壊れると、間違いなくこの力に意識を乗っ取られ、暴走させちまう……」
「あぁ、助かったっていうのはそういうことだったのね……」
正直、意識を乗っ取られかけていて、あのまま止めてくれなかったら、何をしでかしていたかわからない。


「竜の力を支えるのは"支配"の欲求だ。あんなに恐怖で怯えた顔されたら、もっとぐちゃぐちゃにしてやりたくなっちゃうだろ?」
「……っ!?」
あの時のことを思い出したのか、千条は恥ずかしそうにしつつ、警戒心を丸出しにして身体を縮こませる。


「いや、今は別に何もしねぇよ……。何か質問はあるか?」
「うーん……今のところは。というか、まだうまく整理できてないし……」
「そうか。……それで、組んでくれるのか?」
俺としては、早くその答えが聞きたい。その答えが聞けるまで、この部屋を去らないまである。


「いいわよ。あんたと組むわ」
「どうも。助かるよ」
意外とあっさりと承諾された。まぁ、ここまで話したんだし、承諾してもらえなかったらただの話し損だからな。
だが、これで優秀な後衛が手に入った。バックアップは彼女に任せて、俺は思う存分前線で暴れられる。


「今週末、空いてるか?」
「……トレーニングよね?」
一瞬考え込んでから、彼女が自分の考えたことがバカらしかったのか、自嘲気味に視線を逸らした。


「なんだよ、デートの方が良かったか?」
「デートならお断りよ。なんで私がこんな変態と……」
「トレーニングだって言ってんだろ。それに、その件は謝ったし、もう怒ってないって……」
「謝れば何してもいいわけじゃないのよ」
……こいつめんどくさい。やっぱり組むんじゃなかったか、と早くも後悔を感じる。


「とにかく、今週末な。場所は俺が確保しとくし、適当な時間に迎えに行くから」
「適当って、あんたねぇ……。まぁ、任せるわ……」

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