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竜王は魔女の弟子

エルトベーレ

第18x話 隠された力

翌朝、俺は教室に入ると、目当ての人物を探す。
しかし彼女は、探す手間が省けるくらいに目立っていた。よくも悪くもだが。


何やら揉め事があったようで、男子生徒を引っ叩いて、彼女は自席に戻ってきた。その男子生徒のところには、牧野もいる。
……なるほど、面白い。


俺は不機嫌そうな彼女の元に行き、莉奈さんにも言われていたことだし、とりあえず先日の非礼を詫びる。
「……この前は、すまなかった」
「はぁ? ……別に、もうどうでもいいけど」
案外根に持っていないようだ。っていうか、俺のこと覚えてる……よな?


「それで、折り入って頼みたいんだが、俺と組んで双葉杯に出てくれないか?」
「断るわね。……こんな変態と、組めるわけないでしょ?」
随分な覚え方をされてるみたいだ。だが、今のこいつには、揺さぶりがききそうだ。
「……俺は、打倒牧野だ。お前はどうなんだ?」
俺の揺さぶりに、千条はまんまと反応し、興味を示す。


「……へぇ、面白いわね」
「じゃあ……」
「でも、簡単には受けられないわ」
さすがにそこまでチョロくはないか……。
俺がさらに口を開く前に、千条は続けた。
「私と決闘しなさい。使えるかどうかは、そこで判断するわ」
「……わかったよ」
上から目線なのはムカつくが、そうも言ってられない。この機会に、俺への評価を改めさせてやる!


「ただし、観客はなしにしようぜ? 手の内がバレちゃ、面白味も半減するだろ?」
「ふふん、いいわよ」
俺が何か手を隠しているとみて、千条は俄然乗り気になる。
いつも不機嫌な感じだが、意外と扱いやすい奴なのかもしれない。



授業が終わり、放課後。俺と千条は屋上に上がり、入り口を締め切る。
「さて、じゃあ見せてもらおうかしら!」
千条は決闘結界を展開し、電子生徒手帳を起動しようとする。俺はそこで、彼女を制した。


「あ、ちょっと待ってくれよ」
「……何? まさか、今更怖気づいたわけじゃないでしょうね」
「電子生徒手帳は使わないでくれないか?」
電子生徒手帳の"決闘"モードを起動しなければ、正式な"決闘"としては認められない。何があったとしても自己責任となる。
だが、俺ができれば避けたいのはそこではない。"決闘"モードを起動すると、映像として記録されてしまうのだ。


「はぁ? 何でよ」
「この力、実はまだ使用許可取ってないんだ。理事長には、"できるだけ使うな"、と言われてるからな」
千条は頭で整理しきれていないのか、戸惑いの色を浮かべたまま、一応、俺の要求を呑む。


「ただし、ルールは"決闘"に準じてもらうわよ」
「わかってる。殺しはしないさ。……たぶんな」
「なっ……!」
俺が力を少しばかり解放すると、千条は何かを感じ取ったようで、息を飲んだ。


「へぇ、この程度でも感じるのか。……敏感なんだな」
段階としては、"レベル1"といったところか。
俺はその状態のまま刀を構え、千条に走り寄って間合いを詰める。
千条は霊力を固め、剣を形作って迎え撃とうとするが、俺の剣撃によっていとも簡単に砕け散ってしまう。


この時、千条自身も何か変だと感じたのだろう。彼女は素早く距離を取り、霊脈を操作して炎の大波を起こし、俺を牽制する。
しかし、俺はその場を動かずに、迫りくる炎の波に向かって刀を振るうと、炎は霧散してしまう。
一見、剣圧による風でかき消したようにも見えるが、そうではないことは、千条の表情が証明してくれる。


"レベル2"。ここまでくると、一般人にも俺から溢れ出る"力"が、俺を覆うオーラのようなものとして視認できるはずだ。
この状態では、彼女はもう俺に手出しはできない。


千条はなおも炎の塊をぶつけてくるが、俺は避けようともせずに、歩いてゆっくりとその間合いを縮めていく。
実際、炎の玉が当たっても、まるで熔けて蒸発するように、消えていってしまう。


「あんた……なんなの……!?」
その千条の表情は、驚愕、恐怖、焦燥、困惑……そんなものが入り混じっているように見える。
……とてもいい表情だ。俺はこういう顔を見るのが大好きなんだ……。


俺との距離が詰まっていくにつれ、彼女の表情が段々と恐怖一色に染まっていく。
俺の意識は、その表情に吸い込まれていってしまう。逸る鼓動を抑えられない。


俺は彼女の顎に手を伸ばし、強引に顔を上げさせる。と、頬にじんわりとした痛みが広がり、押し留められていた意識が戻ってくる。
彼女が本能的に、俺を寄せ付けまいと平手打ちをしたのだ。


見れば、彼女は白黒のコントラストが鮮やかな双眸に涙を湛え、溢れ出そうとする感情を必死に押し殺していた。
「ごめん……。でも、助かった」
「えっ……?」
「危うく、理性を失うところだった」


この"力"はそれが厄介なところ。
下手をすれば、"力"に意識を乗っ取られる。だからこそ、使うなと言われているのだが。
「お前がいけないんだぞ。そんな顔するから……」
「い、意味わかんないしっ! っていうか、何なの……? 今の」
「それの説明は、連行されてからかな」
俺が視線を向けた先には、腰に打刀を下げ、胸元が大きく開いたスーツ姿の女性が、呆れ顔で立っていた。
相変わらず年甲斐にもなく色気を出しているが、本人の性格は恰好とはかけ離れているのを知っている。

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