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竜王は魔女の弟子

エルトベーレ

第16x話 VS牧野颯太

昨日とはうって変わって、屋外競技場は閑散としていた。
やはりランキング一位の影響だったんだな、あの人だかりは。


牧野は既にフィールドに現れており、その手には刀が握られていた。
「さて、じゃあ始めようか」
決闘結界が展開され、電子生徒手帳を"決闘"モードで起動する。


今日も俺の得物は打刀。反応してすぐに手を出せるということで、小さくて軽いものを好んで使っていたが、今は瞬間移動がある。一撃の威力を重視したい。


まずは牧野が先手を切ってきた。奴は武術の腕も確かなようで、本当に厳しいところを突いてくる。
俺の反応力や体捌きを量るためだろうが、そう簡単に量らせてたまるか。力で押し切って、ねじ伏せてやる!


しかし、牧野は素早く俺の一撃を避け、俺の懐に迫ってくる。俺の瞬間移動を警戒してか、空振って隙を作らないよう、軽い突きを続けざまにいれてきた。
ただ、スピードが速く、かわしきれないと判断し、俺はやむ無く瞬間移動を使い、牧野の背後に移動する。


俺が一撃をいれようとすると、牧野は俺の瞬間移動に素早く反応し、振り返って水平に斬りかかってくる。
それを瞬間移動でよけて、再度彼の背後に移動するも、それすらも読まれていたようで、回転を利用してそのまま斬りつけてきた。
俺はその一撃を、咄嗟に刀を立てて受けようとするが、不安定な体勢で受けたせいか、力で押し負けてしまい、後ろに押し飛ばされてしまった。


俺は立ち上がり、今度は奇襲をかける。
刀を構えて走り寄る途中、瞬間移動で上空に飛び、そのまま勢いをつけて、牧野目掛けて唐竹に振り下ろした。
直撃するギリギリまで気付かれずに済んだが、やはりそう簡単にはうまくいかない。


俺の剣撃に合わせて、牧野は刀の峰に手を添えつつ受けきってくる。あわよくばとも思ったが、大した反応力だ……。だが、その体勢は隙が大きい。
俺はすかさず、その懐に瞬間移動し、逃がさないよう素早く斬り上げた。しかしながら、障壁を張られて直撃は避けられてしまう。
力で後ろへ押しきったが、こっちの攻撃に、こうも素早く対応されては勝ちの目は薄い。


するとここで、牧野が仕掛けてきた。
霊脈を操作したのか、辺りの気温が下がり、水蒸気は氷の結晶になっていく。
さらに牧野は、結界術式を展開する。昨日、奴が千条との試合で使って見せた、あの氷の空間制御型結界術式。
昨日見た感じでは、"十六夜"ほど厄介な代物でもなさそうだったが。


「千条の結界術式か……。同じものとは芸がないな」
「千条さんとは違って、俺は専門じゃないんでな。だが……、奥義の真髄ってやつを見せてやるよ」
専門じゃないのに奥義とはな……。思わず内心で苦笑いするも、奥義と聞いて焦りがないと言えば嘘になる。


牧野が氷の結晶の一つを動かすと、他の結晶も一斉に結界内を飛び回り始めた。
これに当たるとヤバそうだが、安全地帯もなさそうだ。そんなところを、牧野は斬りつけてくる。
これを直撃するよりはマシだと判断し、瞬間移動で刃の届かない範囲まで退くが、代わりに氷の刃が俺の身体を裂く。


牧野はさらに刀で襲いかかり、俺は瞬間移動で避けるも、再び氷の刃の餌食になってしまう。その繰り返しだ。
恐らく、元々刀で直撃を取るつもりはなく、こうして消耗させるのが奴の狙い。
……だが、こちらも狙いは同じ。


と、不意に牧野の姿が消え、気付くとその気配は俺の背後にあった。
これはどう見ても瞬間移動だ。奴も使えたのか……!?


これは想定外だった。ただでさえ障壁を使われ、こちらの一撃はまともに通らないのに、瞬間移動まで使えるとなると、俺の攻撃はまず届かないと考えていい。
俺は背後からの牧野の一撃をもろに受けてしまうが、傷が深くなる前に、瞬間移動で結界の端まで移動する。ここなら背後を取られずに済む。
今の俺ではまだ、瞬間移動に反応しきれないし、奴の行動を読めるほど賢くもない。
防戦一方だが、突破口が開けるまでは、何とか凌がなければ……。


ここで牧野は攻撃パターンを変え、宙を舞う氷の刃で、俺を狙い撃ってくる。
さすがに受けきれる量ではないので、やむ無く瞬間移動を使うが、その狙いは段々と正確に、俺を追尾するようになっていく。
奴のことだ、移動先を読んでいるとかなんだろう。もはや瞬間移動までも通用しないというのか……。


だが氷の結晶を全て避けきると、この結界も消滅した。ようやく、奴もバテ始めたか……。
「……そろそろ疲れてきたんじゃないか?」
俺はこれからが本番と言わんばかりに、思わず笑みをこぼす。


昨日莉奈さんが提案してくれた、牧野颯太の攻略法。
俺の狙いは最初からこれだった。


――――
――


「こっちがあちこち逃げ回っていたら、颯太くんはしびれを切らして大技に打って出ると思うの」
この真面目モードの莉奈さんは、かなり賢いし、分析も緻密だ。素直に聞き入れるだけの価値は、大いにある。


「あの千条の結界術式か……」
「そうそう。あれって、結構維持するのは大変なんだって。その大技も何とかして凌げば……」
「そうか、霊力切れを狙うのか!」
霊力が切れてくると、体力も大幅に落ちる。動きも鈍るし一石二鳥だ。


「うんうん。いくら霊術の達人と言えど、霊力が切れれば使えないからねー。もともと颯太くんは、愛璃亜ちゃんみたいに特別霊力量が多いわけでもないし」
正攻法とは言えないが、一番確実に勝ちの目を作れるだろう。
俺は正直、莉奈さんや牧野のように頭は良い訳じゃない。こうでもしてアドバンテージを取らないと、今回の試合は厳しいだろう。
……まさか、そこまで考えてくれているのか?


「……さすが、惚れ直したぜ」
「えぇっ!?」
一気に赤く染まる純情な莉奈さんも、結構可愛らしい。それに、いい匂いするしな。
……あぁ、そうだ。せっかくだし……。


「莉奈さん……」
「あっ、んっ、ちょっとっ、凌太くん?!」
そっとその愛らしい身体を抱き寄せると、莉奈さんの柔らかく優しい香りが俺を包み込む。
……落ち着いた。これなら明日も大丈夫だ。


――――
――


うん、大丈夫だ。莉奈さんの香りも思い出せる。まだ劣勢には変わりないが、落ち着いている。


俺は反撃を開始し、瞬間移動で奴の背後に飛ぶ。と、次の瞬間には奴の正面に戻り、背後を気にして体勢が崩れたところを斬りつける。
これが見事に奴の肩口に決まり、初めて奴にダメージが通った。


やはり霊力を消耗し、障壁も、さっき見せた瞬間移動も、そう易々とは使えないのだろう。
これはどう見ても好機。この隙に、叩き込めるだけ叩き込む。
一太刀、また一太刀と、瞬間移動で撹乱しながら、着実に牧野にダメージを蓄積させていく。


牧野も、今の状態では、刀では対応できないと判断したのか、刀を手放し、腰に提げた短刀を抜いた。
今度は俺の斬撃も何とか受けられている。だが、それならこっちも同じこと。
俺も打刀を手放し、霊力を固めて短刀を作り出す。
俺は瞬間移動にしか霊力を割いていないので、まだまだ余力はある。しかも霊力の塊であるこの短刀は、重さをほとんど感じず、切れ味も並大抵ではない。
一気に形勢が逆転していく。


だが、何度斬り結ぶも、なかなか決定打にならない。瞬間移動を混ぜても、牧野はそれに対応してくる。
いつの間にか、こっちも消耗させられていっていた。


こうなったら地力の勝負。俺の斬撃を身を屈めてかわした牧野に、俺はこれで決めようと、今までよりも素早く力を込めて、短刀を振り下ろす。
しかし、刃は空を斬り、牧野の短刀が俺の腹部を貫いた。


狙いが僅かにズレていた。いや、そんなはずはない。牧野の方が、僅かに動いたのだ。これが奴の、瞬間移動……。


だが、消耗しているのはお互い同じ。
まだ勝負を諦めきれない俺は、瞬間移動で素早く距離を取るが、牧野は瞬間移動で俺の背後に先回りする。
瞬間移動で牧野の背後や懐に移動しようとするが、瞬間移動で回り込まれてしまう。
何度も試すが、なぜだか一度も先手が取れない。


そしてついに、瞬間移動をもってしても、奴の短刀に捉えられてしまう。
「俺の……負けだ」
背後から脇腹を貫かれ、膝をついた俺は、悔しくも降参を宣言した。
気が抜けると、思ったより激しく消耗していたようで、意識も遠退いていった。

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