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竜王は魔女の弟子

エルトベーレ

第15x話 秘策

「さて、始めましょうか」
さすが、新入生首席でランキング一位は注目度が違う。屋外競技場には観衆が溢れんばかりに詰めかけている。


「あぁ」
こう、周囲に持て囃されているのを見ると、その余裕な笑顔をすぐにでも歪めてやりたいと、そう思ってしまう。


決闘結界を展開し、電子生徒手帳を"決闘"モードで起動する。


開始の合図が鳴るが、お互いに仕掛けない。
できれば瞬間移動は奥の手にしたいので、俺は打刀を構えるだけに留める。


「来ないなら、こちらからいきます!」
まったく攻める様子のない俺にしびれを切らしたのか、一条は自ら間合いを詰めて、霊力を帯びた拳を振るう。


右拳の一撃目は、次の攻撃がくることも考えて、その左側に避ける。確かに速いが、まだかわせるレベルだ。
そこに続く左拳の二撃目は、斜め下から突き上げるような一発だったが、それは後ろに退いて避ける。
一条はそのまま体の捻りを利用して、三撃目、右脚で鋭い蹴りをいれてくる。左拳に力を込めているのが見えた。恐らく回転に逆らわずに、避けた先に撃ち込んでくるのだろう。
そして残念ながら、パンツは見えない。なんという鉄壁。


ここはあえてその誘いに乗って、蹴りを身を屈めて交わし、懐に迫る。
予想通り、素早い左拳の四撃目が飛んでくるも、受け止めようと構えを見せて、俺はここで奥の手を使う。
俺が受けの体勢をとったことで、その防御を貫通する一撃を撃ち込もうと力強く踏み込んだことが仇となり、一条は空振った末に大きく体勢を崩した。
俺は一瞬で一条の背後に移動しており、すかさず刀で左脇腹を裂く。
予期せぬ一撃に、一条は素早く後退して体勢を立て直そうとするが、俺は追い打ちをかけるように再び彼女の背後に移動し、刀で斬りつける。


しかし、これは向こうも読んでいたようで、すかさず反撃してくるが、俺はそれに反応して、またも彼女の背後に移動する。そして止めの一撃。
右肩を貫かれ、一条はその場に膝をついた。


「……降参、です」
観衆は意外な展開にどよめいている。何しろ、一条はこれまで無敗だったのだから。



競技場を出ると、どこからともなく莉奈さんが現れる。
また時空の彼方からか……。


「愛璃亜ちゃんと颯太くんの試合、まだやってるみたいだけど、見に行く?」
「当たり前だ」
「よしっ」
莉奈さんが俺の肩に手を置くと、次の瞬間には屋内競技場の観客席にいた。


状況的には、千条が押しているみたいだ。今回は違う結界が展開されているが、それでも圧倒的優位には変わりない。
牧野の方も、速さで翻弄しているが、千条の攻撃をいくつも受けている。


「颯太くん、何で障壁使わないんだろうね。突攻をかけるなら、全身を覆った方がいいのに……」
そう言えば莉奈さんから聞いたが、あの牧野颯太は、莉奈さんの双子の姉で"堅牢の魔女"と呼ばれる天宮茉奈の弟子だという。


「何か考えがあるのか……?」
「かもねー。攻めてるようには見えないし」
「……どういうことだ?」
俺には攻めてるようにしか見えないが……。


「一撃目は誘い、二撃目に崩し、三撃目に押し流し……」
莉奈さんの言葉に合わせて見てみると、確かにその通り、隙を作るために攻撃しているように見える。


「隙を作ったら、何か仕掛けるつもりなんじゃないかなー。颯太くんは、何か仕掛ける前は崩しにかかることが多いみたいだし」
俺はより注意して舞台を見つめる。
すると、ついに千条に隙ができる。莉奈さんの言った通り、その機を待っていたかのように、牧野は結界術式を展開した。


「これって、千条式の空間制御型結界術式じゃ……。何で颯太くんが……?」
さっき障壁に霊力を割かなかったのは、この結界を張るために温存していたのか……。
ここから一気に戦況はひっくり返り、そのまま牧野が勝利した。


「牧野颯太……!」
何だか急に、内側から湧き上がってくる。
技量も確かなようだが、それだけじゃなく、頭もキレる奴みたいだ。今から試合が楽しみで仕方がない。


「凌太くん……?」
じっとしていられなかった俺は、奴の向かった控え室の近くまで飛び、試合を申し込みに行く。


控え室には、新川ともう一人男子がいたが、そっちに意識は向かない。次の相手だけを見据えて言った。
「おい、明日の最終戦……、俺と試合しろ」
牧野も、俺を強く見据えて、俺の申請を受諾した。
「……わかった。こっちから申し込む手間が省けたぜ」
「ふん……」


用事を済ませた俺は、莉奈さんの元へ戻る。
「たった今、試合を申し込んできた」
「今っ!? あはっ、それほど楽しみなんだね、手合わせするのが」
「そうかもな」


そのまま莉奈さんの部屋へ拉致られ、情報をもらう。
「颯太くんはお姉ちゃんの弟子だから、普通は知らないような術式も使ってくる可能性が高いよ」


「あれで接近戦もいけるんだろ? ……どうすんだ?」
考えなしに突っ込んだら、すぐにやられてしまうだろう。いくらか策は用意しておきたい。


「でも凌太くんには、瞬間移動があるじゃん。……どうせ対策されるだろうけど」
「ダメじゃん……」
「それに、あたしが教えられる範囲のことは、お姉ちゃんも知り尽くしてるから、意表もつけないよ……」
今回はさすがに、莉奈さんにも頼っていられないか……。


「と、思うでしょ?」
「え……?」

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