竜王は魔女の弟子
第14x話 瞬間移動
「あ、おはよー。いやぁ、ひどい負け方だったね」
「うるせぇ……」
「胸を揉め! ってアドバイスしたつもりはなかったんだけどなー」
どうやら医務室で治療されていたようだ。真っ先に言われることがそれか……。
「……掴んだのが腕だったら勝ってたんだ」
「でも、掴んだのが胸で、ちょっとはラッキーって思ってるでしょ?」
「…………ちょっとな」
ふと、左手の感触を思い出してしまう。女の子の胸っていうのは、あんな柔らかいものなんだな……。
「あはは、素直だねー。ちゃんと謝っときなよー?」
「あの様子じゃ、謝ったって許しちゃくれねぇよ……」
「許されるかどうかじゃなくて、謝るってこと自体に意味があるんだよっ!」
「気が向いたらな」
少し休んだら部屋に戻り、ベッドに横になる。次の相手は一条美鳳だ。千条愛璃亜よりも、格段にでかい……強い相手だ。
そんなことを考えていると、突然、どこからともなく莉奈さんが現れた。
「お、おい、どこから……?!」
「んー、時空の彼方から?」
恐ろしい人だな。セキュリティ無視かよ……。
それでも俺は起き上がろうとしないので、莉奈さんもベッドに腰かけた。
「何しに来たんだ……?」
「美鳳ちゃんの攻略法、知りたくない?」
そのハニートラップでも仕掛けそうな笑みに、俺はたまらず食いつく。いや、食いついたのは話の方だが。
「知りたい。あ、試合の方だよな?」
「え? 他に何があるの?」
「いや、何でもない」
そういう知識には疎いのか。まぁ、純粋純情そうだしな。
「近接戦がヤバいってのは知ってるぞ。あと、距離をとっても強引に詰められるってのもな」
「それなら話が早いね。近接戦で重要なことって、何かわかる?」
「そうだな……、動きを見切ること、動きを見切らせないこと、か?」
相手の攻撃をいかにかわし、自分の攻撃をいかに当て、自分の攻撃をかわさせず、相手の攻撃を当てさせない。これに尽きると思う。
「そうそう。まぁそれは、普通の戦いなら、ね」
「普通の戦いなら……?」
「あの子の一条流近接術は、ちょっと厄介でねー……。動きも素早いわりに、一撃が重いから、当たったら結構ヤバいよ?」
一撃ももらわずにってのは、条件が厳しいな。
それに加えて、霊術で動きを縛ってくるんだから、確かに厄介かもな。
「でも、突破口があるから来たんだろ?」
「うん。あたしがどうやってここに来たか、覚えてる?」
あのスタイリッシュ不法侵入か……。
「いや、何をしたのかはわからなかった」
「じゃあ見てて。それで、使えそうか判断してよ」
「わかった」
俺はようやく起き上がって、莉奈さんのすることを見極めようと、集中する。
「いくよ?」
莉奈さんが右手の指を弾いた次の瞬間、莉奈さんは奥の台所の方に立っていた。
そしてもう一度指を弾くと、今度は俺の背後に座っていた。
「……瞬間移動か?」
そういえばこの人、観覧杯でも回避に使っていたな。思い返すと、受けをほとんどせずに、全てこれでかわしきっていた。
「正解! ……どう? 使えそう?」
「あぁ。でも、そんなすぐにマスターできるもんか? これ」
「長距離を飛ぶのはキツいだろうけど、相手の背後に回るくらいあれば充分だよね?」
「そうだな。それで充分だ」
早速、莉奈さんに術式の基本構造を教わる。
「空間座標の測り方は知ってるよね? ここに移動先の座標をいれればいいの。この式は時間座標には触れないから、文字通り、瞬間ってわけ」
「なるほどな。実は頭いいんだな、莉奈さんは」
「もっと褒めてくれてもいいのよ?」
「わーすごいなー」
「棒読みじゃんっ!」
構造を理解したところで、一度試してみる。ちょっと長いが、先程教わった式に移動先の座標をいれて、暗唱する。
さっきまでテーブルに向かっていたはずが、ベッドの上にいる。うまくいったみたいだ。
「すごいじゃん! じゃあ、ステップ2ね。術式を展開させる方法は三つあるの。知ってる?」
「詠唱以外に何があるんだ?」
「思念と、簡略装置ね」
「簡略装置?」
「式をあらかじめ記憶させたり、書いておいて、霊力を流し込むだけですぐに発動できるアイテムのことだよ。これがそれ」
と、莉奈さんは右手の人差し指につけた指環を見せてくれた。
「これには瞬間移動術式を記憶させてあるから、座標だけ指定すればすぐに飛べるの」
「これは、どこで?」
「初優勝の記念でもらえるよ」
俄然やる気が湧いてくる。こんなチートアイテムがあれば、戦術としてはかなり幅が広がるだろう。
「それで、詠唱はデメリットが大きいのはわかるよね?」
「発動のタイミングもバレるし、場合によっては、何をするかまでバレる可能性がある……」
「うんうん、ホントに優秀だねー。だから、思念で展開させた方がいいと思うの」
思念ってのはつまり、頭の中でってことだな。たとえばこんな風に……。
ベッドにいた俺は、再びテーブルに向かっている。なるほど……。
「すごいねぇ、こんな簡単にマスターされちゃうと、あたしとしては複雑な気分だよー」
「いや、莉奈さんの教え方が上手いんじゃないか?」
「嬉しいこと言ってくれるねぇ」
その表情は、本当に心の底から嬉しそうだった。つい、頭を撫でたくなってしまう。
「ん? どうかした?」
「いや、何でもない」
「……いけそう? 勝つビジョンは見えた?」
「あぁ、ありがとう」
やっぱり我慢できなくて、小さな師の頭を撫でる。
「わっ……!? でも、ふふん、心地いいねぇ……」
最初は驚いていたが、嬉しそうなので、しばらく続けていた。
「うるせぇ……」
「胸を揉め! ってアドバイスしたつもりはなかったんだけどなー」
どうやら医務室で治療されていたようだ。真っ先に言われることがそれか……。
「……掴んだのが腕だったら勝ってたんだ」
「でも、掴んだのが胸で、ちょっとはラッキーって思ってるでしょ?」
「…………ちょっとな」
ふと、左手の感触を思い出してしまう。女の子の胸っていうのは、あんな柔らかいものなんだな……。
「あはは、素直だねー。ちゃんと謝っときなよー?」
「あの様子じゃ、謝ったって許しちゃくれねぇよ……」
「許されるかどうかじゃなくて、謝るってこと自体に意味があるんだよっ!」
「気が向いたらな」
少し休んだら部屋に戻り、ベッドに横になる。次の相手は一条美鳳だ。千条愛璃亜よりも、格段にでかい……強い相手だ。
そんなことを考えていると、突然、どこからともなく莉奈さんが現れた。
「お、おい、どこから……?!」
「んー、時空の彼方から?」
恐ろしい人だな。セキュリティ無視かよ……。
それでも俺は起き上がろうとしないので、莉奈さんもベッドに腰かけた。
「何しに来たんだ……?」
「美鳳ちゃんの攻略法、知りたくない?」
そのハニートラップでも仕掛けそうな笑みに、俺はたまらず食いつく。いや、食いついたのは話の方だが。
「知りたい。あ、試合の方だよな?」
「え? 他に何があるの?」
「いや、何でもない」
そういう知識には疎いのか。まぁ、純粋純情そうだしな。
「近接戦がヤバいってのは知ってるぞ。あと、距離をとっても強引に詰められるってのもな」
「それなら話が早いね。近接戦で重要なことって、何かわかる?」
「そうだな……、動きを見切ること、動きを見切らせないこと、か?」
相手の攻撃をいかにかわし、自分の攻撃をいかに当て、自分の攻撃をかわさせず、相手の攻撃を当てさせない。これに尽きると思う。
「そうそう。まぁそれは、普通の戦いなら、ね」
「普通の戦いなら……?」
「あの子の一条流近接術は、ちょっと厄介でねー……。動きも素早いわりに、一撃が重いから、当たったら結構ヤバいよ?」
一撃ももらわずにってのは、条件が厳しいな。
それに加えて、霊術で動きを縛ってくるんだから、確かに厄介かもな。
「でも、突破口があるから来たんだろ?」
「うん。あたしがどうやってここに来たか、覚えてる?」
あのスタイリッシュ不法侵入か……。
「いや、何をしたのかはわからなかった」
「じゃあ見てて。それで、使えそうか判断してよ」
「わかった」
俺はようやく起き上がって、莉奈さんのすることを見極めようと、集中する。
「いくよ?」
莉奈さんが右手の指を弾いた次の瞬間、莉奈さんは奥の台所の方に立っていた。
そしてもう一度指を弾くと、今度は俺の背後に座っていた。
「……瞬間移動か?」
そういえばこの人、観覧杯でも回避に使っていたな。思い返すと、受けをほとんどせずに、全てこれでかわしきっていた。
「正解! ……どう? 使えそう?」
「あぁ。でも、そんなすぐにマスターできるもんか? これ」
「長距離を飛ぶのはキツいだろうけど、相手の背後に回るくらいあれば充分だよね?」
「そうだな。それで充分だ」
早速、莉奈さんに術式の基本構造を教わる。
「空間座標の測り方は知ってるよね? ここに移動先の座標をいれればいいの。この式は時間座標には触れないから、文字通り、瞬間ってわけ」
「なるほどな。実は頭いいんだな、莉奈さんは」
「もっと褒めてくれてもいいのよ?」
「わーすごいなー」
「棒読みじゃんっ!」
構造を理解したところで、一度試してみる。ちょっと長いが、先程教わった式に移動先の座標をいれて、暗唱する。
さっきまでテーブルに向かっていたはずが、ベッドの上にいる。うまくいったみたいだ。
「すごいじゃん! じゃあ、ステップ2ね。術式を展開させる方法は三つあるの。知ってる?」
「詠唱以外に何があるんだ?」
「思念と、簡略装置ね」
「簡略装置?」
「式をあらかじめ記憶させたり、書いておいて、霊力を流し込むだけですぐに発動できるアイテムのことだよ。これがそれ」
と、莉奈さんは右手の人差し指につけた指環を見せてくれた。
「これには瞬間移動術式を記憶させてあるから、座標だけ指定すればすぐに飛べるの」
「これは、どこで?」
「初優勝の記念でもらえるよ」
俄然やる気が湧いてくる。こんなチートアイテムがあれば、戦術としてはかなり幅が広がるだろう。
「それで、詠唱はデメリットが大きいのはわかるよね?」
「発動のタイミングもバレるし、場合によっては、何をするかまでバレる可能性がある……」
「うんうん、ホントに優秀だねー。だから、思念で展開させた方がいいと思うの」
思念ってのはつまり、頭の中でってことだな。たとえばこんな風に……。
ベッドにいた俺は、再びテーブルに向かっている。なるほど……。
「すごいねぇ、こんな簡単にマスターされちゃうと、あたしとしては複雑な気分だよー」
「いや、莉奈さんの教え方が上手いんじゃないか?」
「嬉しいこと言ってくれるねぇ」
その表情は、本当に心の底から嬉しそうだった。つい、頭を撫でたくなってしまう。
「ん? どうかした?」
「いや、何でもない」
「……いけそう? 勝つビジョンは見えた?」
「あぁ、ありがとう」
やっぱり我慢できなくて、小さな師の頭を撫でる。
「わっ……!? でも、ふふん、心地いいねぇ……」
最初は驚いていたが、嬉しそうなので、しばらく続けていた。
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