竜王は魔女の弟子
第23話 双葉杯 開幕
それからは、先輩と分身の訓練、メイちゃんとユイさんとの実戦訓練を経て、ついに双葉杯の当日。
双葉杯は観覧杯と同じくトーナメント形式で、準決勝と決勝は翌日に行われる。
タッグバトルとなる双葉杯は、ペアのうちどちらか一人が戦闘不能となった段階で勝敗がつく。ここまでの試合は手の内をできるだけ見せずに、メイちゃんとのツートップですぐに決着を着けてきた。
そしていよいよ準々決勝。これに勝てば、明日の準決勝に進出となる。
気がかりなことはあったが、それを気にしてもいられない。今はメイちゃんと、この試合を勝つことだけを考えないと……!
「メイちゃん、次だけど、なかなか厄介な相手になったね……」
「えぇ、こういうタイプは相手にしてきませんでしたからね……」
次の相手のデータを見ながら、俺とメイちゃんは不安げに顔を見合わせた。
『準々決勝第四試合出場選手は入場してください』
アナウンスが聞こえ、フィールドに足を向ける。
「でも、メイちゃんとなら、勝てる気がするよ」
「私も、こんなところで負けるつもりはありませんから」
そう言うメイちゃんは、放送席を見つめていた。
レーティング形式だった新星杯とは違い、今日は実況がついている。その解説に、ユイさんが呼ばれているのだという。
……これは確かに、無様な負けは許されないな。
『さぁさぁ、本日の最終戦! 準決勝行きを賭けた最後の試合! 東ゲートから入場するのは、一年生ペア、新川メイと、牧野颯太!! なんと! ここまで全ての試合で一分以内に決着をつけていますっ!』
実況の声に応じるように、俺たちはゲートを通って入場する。
『そして西ゲートからは、序列一桁ペア、三年生、上代真郷&二年生、小川麻悠ー!』
相手もゲートから出てくる。いざ対面してみると、ものすごい覇気を感じる。さすがに序列上位は纏っている雰囲気が違う。
「メイちゃん、まずは手筈通りにいくよ」
「はいっ」
『試合開始ーッ!!』
まずはメイちゃんに前衛を任せ、俺は後方から霊術を展開する。
メイちゃんの肩には俺の分身。今回は、目の役割と、メイちゃんとを繋ぐ電話のような役割しか持たせないため、割く霊力は必要最小限に抑えてある。
『おぉっと、一年生ペア、パターンを変えてきたぞー!』
『いよいよコンビネーションが見れるのかしら』
相手の武器は、二人ともカイザーナックル。どちらも近接型で、元々脇差を使うメイちゃんには、そこそこ有利な相手と言えるだろう。
だが、三年の上代さんは動きが速くはないものの、一撃一撃の威力は底知れない。一方で、二年生の小川さんの、その拳撃の速さや反応のスピードも侮れない。
俺は氷晶を作り出し、メイちゃんを援護する。行動を縛れれば、メイちゃんも動きやすくなるだろう。そう思っていた。
しかし、彼らは俺の氷晶を避けようともせず、何の気なしに、メイちゃんに拳を振るう。実際、氷晶がその身を直撃しても、彼らを傷つけることはなかった。
だがそこは、メイちゃんの強さが光る。メイちゃんはその圧倒的な反応速度をもってして、二対一でも充分に対応できている。
俺は何とか彼女を助けようと、今度は彼らの足元から束縛術式を展開し、足止めしようとする。しかし、これも容易く振り払われてしまう。
霊術を力づくで攻略しようなんて……無茶苦茶だ……。これが序列一桁の戦い方だっていうのか……。
だが、項垂れている暇はない。こうしている間にも、メイちゃんは戦ってくれている。
相手にかける霊術がダメなら、自分を強化すればいい。
俺は瞬間移動でメイちゃんの側に飛び、ツートップに戻る。俺の分身には、メイちゃんの死角となっている背後、上空を監視させる。
すると今度は、相手側に動きがあった。
『一年生ペアはツートップに戻ったが、今度は上級生ペアが仕掛けるようです!』
距離を取った二人のうち、上代さんが大地に手をつき、まるで埋まっている大根を引き抜くかのように、大地をごっそりとくり抜いた。
『で、出たーッ! 上代選手の得意技、"クレイモア"!』
『……フィールドを直す人の身にもなってほしいものよね』
その実、フィールドはほぼ全壊。まともな足場なんて残っていない。
くり抜いた大地を構成しなおして、上代さんは巨大な岩石の剣を作り出した。その大きさから、ゆっくり振るだけでも剣先はかなり速度がつくというのに、彼はこれを軽々と振り回す。
……っていうか、クレイモアってこんな武器じゃないだろ。
俺とメイちゃんはその剣撃をかわしつつ、その速度が遅く、隙も大きい彼の懐へと迫っていく。しかし、これは読まれないはずがない。そこに待ち構えていたのは、拳を構えた小川さん。
俺たちはある程度の距離を維持して止まり、なんとか直撃を食らわずに済んだ。
「颯太さんっ、どうするんですかっ?」
「この剣、切れないか?」
「こんなに速度がついてたら、押し負けてしまいますっ」
かわせてはいるものの、そこにとどまってしまっている。その先の打開策に行きつけない。
そんな時、剣撃を翻したメイちゃんが、突如地面から伸びてきた岩石の腕に捕えられてしまう。
『ここで捕まってしまったー! これは絶体絶命か……っ!?』
どうする……? どうすれば……。
考えれば考える程、焦りは増していくばかり。
だが、落ち着いて考えろ。思考を加速させろ。何かあるはずなんだ。何か……。
「颯太さんっ」
分身を通してメイちゃんの声が聞こえた。彼女は焦っていない。落ち着いていた。
その時、はっとした。分身の視点、つまりメイちゃんの視点から見た俺は、突破口を見出したのだ。
なんだ、道は開けているじゃないか……! だが、これは俺だけでは厳しい。メイちゃんの力を借りなければ……。
双葉杯は観覧杯と同じくトーナメント形式で、準決勝と決勝は翌日に行われる。
タッグバトルとなる双葉杯は、ペアのうちどちらか一人が戦闘不能となった段階で勝敗がつく。ここまでの試合は手の内をできるだけ見せずに、メイちゃんとのツートップですぐに決着を着けてきた。
そしていよいよ準々決勝。これに勝てば、明日の準決勝に進出となる。
気がかりなことはあったが、それを気にしてもいられない。今はメイちゃんと、この試合を勝つことだけを考えないと……!
「メイちゃん、次だけど、なかなか厄介な相手になったね……」
「えぇ、こういうタイプは相手にしてきませんでしたからね……」
次の相手のデータを見ながら、俺とメイちゃんは不安げに顔を見合わせた。
『準々決勝第四試合出場選手は入場してください』
アナウンスが聞こえ、フィールドに足を向ける。
「でも、メイちゃんとなら、勝てる気がするよ」
「私も、こんなところで負けるつもりはありませんから」
そう言うメイちゃんは、放送席を見つめていた。
レーティング形式だった新星杯とは違い、今日は実況がついている。その解説に、ユイさんが呼ばれているのだという。
……これは確かに、無様な負けは許されないな。
『さぁさぁ、本日の最終戦! 準決勝行きを賭けた最後の試合! 東ゲートから入場するのは、一年生ペア、新川メイと、牧野颯太!! なんと! ここまで全ての試合で一分以内に決着をつけていますっ!』
実況の声に応じるように、俺たちはゲートを通って入場する。
『そして西ゲートからは、序列一桁ペア、三年生、上代真郷&二年生、小川麻悠ー!』
相手もゲートから出てくる。いざ対面してみると、ものすごい覇気を感じる。さすがに序列上位は纏っている雰囲気が違う。
「メイちゃん、まずは手筈通りにいくよ」
「はいっ」
『試合開始ーッ!!』
まずはメイちゃんに前衛を任せ、俺は後方から霊術を展開する。
メイちゃんの肩には俺の分身。今回は、目の役割と、メイちゃんとを繋ぐ電話のような役割しか持たせないため、割く霊力は必要最小限に抑えてある。
『おぉっと、一年生ペア、パターンを変えてきたぞー!』
『いよいよコンビネーションが見れるのかしら』
相手の武器は、二人ともカイザーナックル。どちらも近接型で、元々脇差を使うメイちゃんには、そこそこ有利な相手と言えるだろう。
だが、三年の上代さんは動きが速くはないものの、一撃一撃の威力は底知れない。一方で、二年生の小川さんの、その拳撃の速さや反応のスピードも侮れない。
俺は氷晶を作り出し、メイちゃんを援護する。行動を縛れれば、メイちゃんも動きやすくなるだろう。そう思っていた。
しかし、彼らは俺の氷晶を避けようともせず、何の気なしに、メイちゃんに拳を振るう。実際、氷晶がその身を直撃しても、彼らを傷つけることはなかった。
だがそこは、メイちゃんの強さが光る。メイちゃんはその圧倒的な反応速度をもってして、二対一でも充分に対応できている。
俺は何とか彼女を助けようと、今度は彼らの足元から束縛術式を展開し、足止めしようとする。しかし、これも容易く振り払われてしまう。
霊術を力づくで攻略しようなんて……無茶苦茶だ……。これが序列一桁の戦い方だっていうのか……。
だが、項垂れている暇はない。こうしている間にも、メイちゃんは戦ってくれている。
相手にかける霊術がダメなら、自分を強化すればいい。
俺は瞬間移動でメイちゃんの側に飛び、ツートップに戻る。俺の分身には、メイちゃんの死角となっている背後、上空を監視させる。
すると今度は、相手側に動きがあった。
『一年生ペアはツートップに戻ったが、今度は上級生ペアが仕掛けるようです!』
距離を取った二人のうち、上代さんが大地に手をつき、まるで埋まっている大根を引き抜くかのように、大地をごっそりとくり抜いた。
『で、出たーッ! 上代選手の得意技、"クレイモア"!』
『……フィールドを直す人の身にもなってほしいものよね』
その実、フィールドはほぼ全壊。まともな足場なんて残っていない。
くり抜いた大地を構成しなおして、上代さんは巨大な岩石の剣を作り出した。その大きさから、ゆっくり振るだけでも剣先はかなり速度がつくというのに、彼はこれを軽々と振り回す。
……っていうか、クレイモアってこんな武器じゃないだろ。
俺とメイちゃんはその剣撃をかわしつつ、その速度が遅く、隙も大きい彼の懐へと迫っていく。しかし、これは読まれないはずがない。そこに待ち構えていたのは、拳を構えた小川さん。
俺たちはある程度の距離を維持して止まり、なんとか直撃を食らわずに済んだ。
「颯太さんっ、どうするんですかっ?」
「この剣、切れないか?」
「こんなに速度がついてたら、押し負けてしまいますっ」
かわせてはいるものの、そこにとどまってしまっている。その先の打開策に行きつけない。
そんな時、剣撃を翻したメイちゃんが、突如地面から伸びてきた岩石の腕に捕えられてしまう。
『ここで捕まってしまったー! これは絶体絶命か……っ!?』
どうする……? どうすれば……。
考えれば考える程、焦りは増していくばかり。
だが、落ち着いて考えろ。思考を加速させろ。何かあるはずなんだ。何か……。
「颯太さんっ」
分身を通してメイちゃんの声が聞こえた。彼女は焦っていない。落ち着いていた。
その時、はっとした。分身の視点、つまりメイちゃんの視点から見た俺は、突破口を見出したのだ。
なんだ、道は開けているじゃないか……! だが、これは俺だけでは厳しい。メイちゃんの力を借りなければ……。
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