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竜王は魔女の弟子

エルトベーレ

第19話 初々しい二人 前編

男子寮と女子寮を繋ぐエントランス。
待ち続けて三十分ほど経ったから、もうすぐ待ち合わせの時間、か……。
待ち合わせの時間が近づくにつれ、時計を見る頻度も増していく。自分でも、落ち着かなくなってきているのが嫌というほどわかる。


「あ、あのっ、お、お待たせしましたっ」
そのどことなく初々しい声に顔を上げると、なぜか恥ずかしそうな様子のメイちゃんが、こっちに向かってきていた。


丈は膝上くらいで、随所にレースをあしらった白いゆったりとしたワンピースに、コントラストの映える落ち着いたベルトが、彼女の細いウエストを強調させている。
今日はヒールも少し高いみたいだ。その楚々とした姿は、初夏の風に舞う妖精を思わせる。


「颯太さん……?」
普段はもっと飾り気のない……、いや、今日もそこまで派手に着飾っているわけではないけれども、いつもとはまた違ったかわいらしさに溢れるメイちゃんに、思わず見惚れてしまっていた。


「今日はその……、一段とかわいい格好だね」
先輩の時に学習した俺は、同じ失敗はするまいと、まずは服装についてふれる。
「あ、ありがとう、ございます……っ」
メイちゃんはどうやら緊張しているようで、さっきから頬が紅潮しっぱなしだ。
俺の言葉で、余計に緊張させてしまったかもしれない。


「……あ、えっと、俺、街に出たことほとんどないんだ。今日は、案内も任せていいかな……?」
「は、はいっ。……でも、どうして街に出たことが?」
「家が厳しくてさ。俺の父さん、組長だから」
外出歩くのに、いちいち黒服の男たちについてこられるのも嫌だからな。


「そ、そうだったんですか……」
「あぁ、俺は堅気だから安心していいよ。ただ、父さんにはみっちり扱かれたけどね」
「なるほど、颯太さんの独特な武術は、そのお父様から教わったものだったんですね」
そんな話をしながら、俺たちはメイちゃんの案内で、商業エリアに無事到着する。


「ここ、商業エリアはショッピングに特化した地区なので、欲しいものはほとんどここで手に入りますよ。颯太さんは、何か見たいものとかありますか?」
「うーん……、メイちゃんの買い物に付き合うってのじゃダメか? 正直、あんまり欲しいもの浮かばないんだ。一緒に回ってるうちに見つかるかもしれないしさ」
「そういうことなら、わかりました」


それから上機嫌なメイちゃんに連れられて、彼女の行きつけのお店やら、気になるお店を回っていった。
その最中では、洋服やスイーツに目がなかったり、かわいいものに反応したりと、普段は刀を振るっているとは思えないような、少女としての一面を見せてくれる。


「次はどこ行くんだ?」
「今度は、ここです」
言われるままに案内されたのは、アンティークな食器が所狭しと並べられた店だった。


「この前ティーカップを割ってしまったので、この機会に新調しようと思いまして」
「ティーカップってことは、紅茶を飲むのか?」
「颯太さんは、緑茶の方が好きですか?」
「いや、特に気にしたことはないな。お茶はお茶だろ?」
俺が軽率にもそんなことを言うと、メイちゃんは珍しく、お茶について熱く語り始めた。


「一口にお茶と言っても、全然違うんですよ。確かに同じ葉を使っていますけど、日本茶と紅茶では製法が違って、味も香りも様々なんです」
「そ、そうなのか……」
まさか、メイちゃんにそんなこだわりがあるなんて、知らなかった……。


「今度、颯太さんにも淹れてあげますよ」
「ホントか!? ありがとう、メイちゃん」
メイちゃんが選んでいる間、俺はうっかりぶつかって割ったりしたら怖いので、店の外で待っていた。


そんな時だった。
「……ねぇ君、メイの彼氏なの?」
突然背後から声をかけられた。


振り返ると、整った顔立ちに、見事なプロポーション、落ち着いた茶髪をポニーテールにした少女が立っていた。
顔はやや幼げに見えるが、その佇まいから、歳は同じか少し上くらい、といったところか。
それにしても、まったく気配を感じなかった。……何者なんだ? この人。


「えと……どちら様です?」
「ふふん、名乗るほどの者でもないわ」
「颯太さん、お待たせ……って、姉さん?!」
買い物を終えたメイちゃんが戻ってきたことで、この少女の正体が瞬時に明らかになる。
それとともに、何とも言えない空気に包まれる。


「こほん……、それで、この人、メイの彼氏?」
「ち、違いますっ!」
顔を真っ赤にしながら猛烈に否定される。そんなに嫌なのか……。


「ふーん……? それにしては……」
などと、お姉さんはメイちゃんの姿を上から下まで舐めるように眺めまわす。


「そ、颯太さん、行きましょう。この人に関わってはいけませんっ」
「あ、おい、メイちゃんっ」
「ちょっと、冷たいんじゃないの? ……久しぶりに会ったのにぃ」
ちょっとふてくされたようなその言葉に、俺の腕を強引に引っ張っていこうとしたメイちゃんは足を止めた。


「……あの、立ち話もなんですから、そこ入りませんか?」
姉妹の間で何があったかは知らないが、この雰囲気はなんだか居心地が悪い。
俺は張り詰めた空気に割って入るように、近くの喫茶店を指さした。

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