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竜王は魔女の弟子

エルトベーレ

第14話 千条式霊術 前編

「……あの、本当にすまなかった」
二条さんが頭を下げて謝るが、俺はかえって恐縮してしまう。


「謝らないでくださいよ。あんなのを相手にできるだけでも充分すごいんですから。俺の方こそ、足手まといになってしまって……」
「……お前ってやつは、本当に……。私は理事長に報告してくる。そこの小さい魔女には、また後で怒られることにしよう」
そう言って、二条さんは旧図書館をあとにした。


俺は先輩が目を覚ましたあとで、先輩を部屋まで送っていった。
その途中で、先輩はなにやら奇妙なことを言っていた。
「あの二人組のうち、片方は姿は透過していても霊力までは隠しきれていなかった。でも、もう片方からは全くと言っていいほど霊力が感じられなかったわ」
「霊力を感じ取れた方が、透過の術式を使ってるってことですか?」
「いえ、あっちが使っていたのは治癒を阻害する術式。そうなると、霊力を用いずに透過していたことになるわ。一体どうやって……」
俺にはその力について心当りがあった。
だが、確証もないし、その可能性について考えたくなかった俺は、黙って先輩の話を聞いていた。



それにしても、結局新川さんには勝てなかったな。鍛練の時とは違って、今回は霊術も織り混ぜてみたけれど、全然通用しなかった。


今日の相手は、その新川さんを破った現在二位の新入生次席、千条愛璃亜にするつもりだ。
千条式霊術は、幼い頃に母さんから多少教えてもらったことがあるし、今は先輩から古代霊術の改良型も教わっている。この試合、負けられない。


「あの、颯太さん、大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ。……昨日は、危険なことに巻き込んじゃってごめん」
一応、事情を説明していたとはいえ、下手をすれば命の危険に関わっていた。少し軽率だったかもしれない。
「そんな、承知の上でしたし……」


そんな時、教室に千条さんが現れた。
俺は誰かに先を越されないよう、新川さんに一言断って、試合を申請しにいく。


「千条さん。今日、試合お願いできませんか?」
「……いいわよ、別に」
あからさまに不機嫌な様子だが、俺は何かした覚えはない。というより、彼女は別のことを考えているようだった。


「颯太さん、愛璃亜さんと試合するんですね……」
席に戻ると、新川さんは心配そうに呟いた。


「新川さんは、千条さんに負けたんだっけか」
「はい。どうもああいう相手は苦手で……」
千条さんは広範囲攻撃を多用するから、新川さんの得意な接近戦に持ち込めないんだろう。
「千条式の、空間制御型結界術式か……」
「ご存知なんですか?」
「まぁね。あれを壊すのは、理論的には簡単なんだ。あの家の術式には属性があって、それに相性のいい結界術式を張り直せば打ち消せる」
言うのは易いがやるのは難い。そもそも、あんな大層な結界術式を張れるのは、霊術を専門に学んできたようなやつらだ。普通は破れない。


「でも、颯太さんならって、ちょっと期待してます」
「ちょっとだけかぁ……」
「ふふ、じゃあ、すごい期待してますね。頑張ってくださいっ」
新川さんは、剣を交えた相手の力量を量り違える人ではない。
そんな彼女に期待してもらえるということは、俺はその実力を認められているということだろう。ぜひその期待には応えたい。



放課後、屋内競技場で千条さんを待つ。
さすがは新入生次席、一条さんに負けず劣らず観客が詰めかけている。


「待たせたわね」
「まだ時間前だ。でも、もう始めるか?」
「私は構わないわ」
そう言うと、千条さんは決闘結界を展開し、電子生徒手帳を"決闘"モードで起動する。


千条さんはいつも、開始の合図と同時に結界術式を展開する。まずはダメ元で、開幕速攻だ!


開始の合図が鳴ると、やはりいつも通り、千条さんは結界を張る。
俺は霊力を固めて剣を形作ると、脚力を強化して速攻をかける。


だが、今回千条さんが展開した結界により、フィールドの温度が急上昇し、灼熱の大地と化す。千条さんは高熱を帯びた地盤の一部を蹴りあげて、盾代わりに俺の一撃を防いだ。


千条式の結界術式は、基本、術者に影響を与えない。つまりこの高温でも、彼女だけは、初夏の涼しげな気温の中にいるのだ。


「千条式霊術第弐拾壱式"灼烈花苑しゃくれつかえん"か……」
「あら、知ってるのね」
「まぁ、俺も霊術使いの端くれだからな」


もちろん、この結界の副産物についても知っている。
千条式霊術第弐拾弐式"火彩龍かさいりゅう"。
燃え上がった炎が龍の形をとり、意思をもったように襲いかかってくる。これを斬って捨てるも、こいつはこの結界を破らない限り、再生して何度でも襲ってくる。……厄介な代物だ。


「ちっ、面倒な結界を張ってくれたな……」
だが、この属性の結界なら、こちらにとって好都合でもあった。
俺は千条式霊術第参式"凍刃とうじん"を用いて、霊力の剣に"冷"属性を付与する。"灼烈花苑"の"熱"属性には相性がいい。
ただし、対の属性なので、向こうもこちらに相性がいい。


「へぇ……。あんた、うちの術式使えるんだ。でも、まだまだね。"火尖槍かせんそう"!」
千条さんの持っていた槍に、"熱"属性が付与される。
しかも、俺の"凍刃"のような単純なものと違い、攻撃範囲を拡大する効果もある高位の術式だ。


だが、俺の方が小回りはきく。
俺は千条さんと"火彩龍"の攻撃を避けつつ、隙をみては一撃を加えていく。しかし、ギリギリのところでかわされたり、受けられたりと、まともなダメージにはならない。


もっと大きな隙を作らないと、戦局をひっくり返す反撃の一手を打てそうにない。


無傷で突破するのは無理だと判断した俺は、決死の猛攻に打って出る。
できるだけ避けずに、速さで圧倒し、体勢を立て直す余裕を与えない。
千条さんの突き出した槍が、肩や脇腹を貫いても、構わず攻撃の手を緩めず、追い詰めていく。


ここで千条さんは、一度大きく後ろに下がって距離を取ろうとした。俺はここが好機とみて、一気に術式を展開した。

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