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竜王は魔女の弟子

エルトベーレ

第13話 襲撃

決闘の最中は、結界に侵入することはできないので仕掛けてこないと思ったが、もし仕掛けてくるなら、この疲れきっている今だろう。油断はできない。
とはいえ、疲れきってしまっているのも事実。それは新川さんも同じようで、二人してそのままベンチにもたれこむ。


「颯太さん、すごかったです。……正直、ちょっと危ないかと思いました」
それでもちょっとなんだな。彼女のことだから、油断なんてしていないんだろうけど、でも、勝ちたかったという思いはやはりあった。


「いや、それ以上に新川さんがすごいんだって。こっちだって本気でやったのに……。……最後のは読んでたのか?」
「いえ、体が勝手に反応していました」
本当に敵わないな、この子には……。俺の常識の外にいると思った方がいいみたいだ。


「まぁあれは、私の必殺技みたいなもんですから」
「あの居合の逆風斬りか……。たしか、二年の二条さんも、似たような居合の技使ってるよな?」
「それはそうですよ。二条先輩も私も、剣技のベースは同じ九条くじょう流剣術ですから」


九条流剣術。"五条"の家柄の中でも名門中の名門と聞く。実際にその剣術と対戦したのは初めてだが、これほどとは……。


「それにしては、構えが結構違わないか?」
二条さんの一撃はほぼ水平の左薙ぎ。対して新川さんの一撃は、足元から肩口にかけての逆袈裟だ。


「私も二条先輩も、自分の体格や剣のスタイルに合わせて工夫してますから。本当は、二条先輩の方が九条流の型と離れているんですよ?」
「そうだったのか。新川さんのスタイルは、やはりスピードと、受け流し、か?」
「そうですね。攻防一体で、すぐに反応できるようにしてます」
「疲れないか?」
「ふふっ、確かに疲れます」
その無垢な笑顔は、そんなこと考えてなかったというような、純粋に剣技にかける気持ちが伝わってくるようだった。


そんな一時に、邪魔が入る。
「下がれっ!」
待機していた二条さんが、見えないところからの一撃を、刀身を鞘に収めたままで受け止める。
まったく気配すら感じなかったのに、この人もとんでもない人だな……。


「牧野、お前はそいつを連れて逃げろ。あとは、私がやる」
「わかりました。行こう、新川さん」
「は、はいっ」
俺は新川さんの手を取って、校舎へ駆け込むも、見えないところから、右肩に斬撃を受けた。
傷の入り方からして、恐らく背後からだ。


「颯太さん!!」
「新川さんは……早く……校舎に……」
俺はなんとか立ち上がるが、普段通りに動けそうにはない。
それに、霊脈を用いた治癒が効かないっていうのもどうやら本当らしい。これはあんまり強がってもいられないな……。


「嫌です! ケガした颯太さんを置いてなんて……」
「そこだっ!」
新川さんに斬りかかる一撃を、刀を抜いて受け止めるも、さっきの傷が痛んで力が入らず、そのまま肩口まで押し斬られてしまう。
見えなくても集中すれば、微かに気配を感じることはできるようだ。


「新川さん、行ってくれ。……大丈夫。負けっぱなしで、死んだりしないから」
「颯太さん……。わかりました。今は、私は足手まといみたいですしね……」
新川さんが校舎に入っていったのを確認して、俺は見えない相手の気配を探す。


「そこっ!」
右腕は力が入らないので、左手に持ちかえて刺突するが、避けられてしまう。
……やはり、感じられる。霊脈の流れがわずかに漏れているのがわかる。


「牧野、大丈夫か?」
「まぁ、今はなんとか、ですね……」
「すまないな……。犯人が単独だと決めつけたのは、私の失態だ。無理はするなよ。あまり傷を負うと、致命傷になるぞ」
二条さんの警告に従いたいのはやまやまだが、身体の自由がきかなくなってきているのも事実。
しかしながら、見えない相手を二人まとめて相手にするのは、いくら二条さんでもかなり難しいはずだ。どうにかしてこの状況を打破できないものか……。


「颯太くん!」
「先輩……!」
校舎の方から現れた頼れる助っ人に、思わず笑みを漏らすが、上から剣を振り下ろす気配を感じた。
避けることもできず、覚悟を決めて目を閉じるも、その見えない刃は俺には届かなかった。


「颯太くんは、死なせないわよ……!」
その言葉に目を開けると、先輩の障壁が、全方位から俺を守っていた。
先輩はそのまま、霊力を使って見えない相手を噴水の中に突き飛ばし、霊脈を操作して水を凍らせ、閉じ込めた。


だが、あまり無茶に使うと先輩もすぐにリミットがきてしまう。
「先輩っ!」
力を振り絞って、先輩が崩れたところに駆けつけ、彼女の小さな身体を支える。


「二条さんはあいつらを!」
しかし、奴らは氷を切り裂いて、既に逃げ失せていた。
「……この、二流剣士……っ」
先輩が二条さんに向けて悪態をつく。珍しく目に見えて怒っていた。
「……返す言葉もない」


「颯太くん……傷を見せて?」
先輩は探るように俺の傷口をさすると、何かを摘まんで潰すような仕草をした。
「痛っ」
「あっ、ごめんね……」
「いえ、大丈夫です」
「阻害の術式は壊したから……、これで、治癒も効くはず……」
試してみると、確かに霊術が効くようになっていた。
しかし、先輩は俺の腕の中で意識を失ってしまい、ひとまず旧図書館まで運んだ。

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