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竜王は魔女の弟子

エルトベーレ

第12話 新星杯 後編

俺は、今までフィールドの隅々に仕掛けてきた術式を一斉に展開し、まずはフィールドを破壊する。
足場を奪ったら次は、槍の切っ先に霊力を集中させて、一条さん目掛けて突っ込み、上から振り下ろす。
しかし、そんな遠距離から突撃しても、攻撃先が予測され、簡単に避けられてしまう。
だが、もちろんこれは想定内。
本当の狙いは、一条さんが避けた際、破壊されたフィールドの下に降り立つこと。そこには、俺の術式が既に展開されている。


「っ……!? これは……っ」
フィールドの下に足をつけてしまった一条さんは、たちまち俺の術式に引っ掛かり、身動きを封じられた。
本当のところは、その場に縛り付けておくだけなので、拳の届く範囲に近付くと危ないのだが、その対策も、していないはずがない。
俺は体内の霊力をすべて、全身を覆う障壁に利用し、霊力を帯びた槍を構えて、弾丸のごとく突撃する。


一条さんも、唯一の勝ち筋、カウンターを狙うべく、俺の槍撃に合わせて拳を構える。
槍が突き刺さる瞬間に、見事に一条さんのカウンターが決まるも、俺の纏った障壁に阻まれ、槍は止まることなく一条さんを貫く……はずだった。


一条さんの、全霊を込めたカウンターは、俺の纏った未完成の障壁を打ち破り、油断していた俺に直撃したのだ。
しかし、これで終われない俺は、力を振り絞って、吹っ飛ばされる直前にそのまま槍を投げる。そして俺の放った槍もまた、見事に一条さんの左脇腹を貫いた。


吹っ飛ばされた俺は、地に這いつくばるようにして、なんとか意識を保ち、一条さんの方へ視線を向ける。
その視線の先にあったのは、槍で貫かれてもなお、俺の拘束術式を振り切る彼女の姿だった。
彼女はふらつきながらも、立ち上がれない俺の前にしゃがみこんで、俺の背に手を触れながら告げた。
左手には短刀が構えられたままだ。この状態ではまず避けきれない。


「降参……しますか?」
「……あぁ。……俺の負けだ」
策を講じても、それをも凌駕する強さ。これがランクが違うということなのか……。
だが一番の敗因は、未完成の術で、全力状態の一撃を受けきれると量り違えた慢心にあるだろう。



俺は昨日ぶりに医務室に運ばれ、そこに真っ先に先輩が駆けつけてくれた。
「颯太くん……。……カッコ悪かったね」
「……はっきり言われると、凹みますね」
「でも、よく頑張ったよ……」
そう優しく撫でてもらえたのは、正直すごく癒しになった。先輩にはっきり言われなくても、自分自身で気付いた未熟さに、虚しさを感じていたから。


「先輩……」
「無理しないで、もう少し休むといいわ」
「はい……」
そうしてしばらく、先輩の優しさに甘えていた。



それからしばらくは、なんの制限もなしに戦い、ここまで十四勝三敗で、残すは三戦。


そんな中、先輩から呼び出しがかかった。至急、旧図書館に来てほしいとのことだった。


旧図書館に着くと、そこには二条さんもいた。
「来たな。じゃあ、手短に説明する」
と、入るや否や、二条さんはいきなり話を始める。


「どうやら新星杯を荒らす輩がいるらしい。上位有力者の一部は既に襲撃され、現在も治療を受けている者もいる」
二条さんは電子生徒手帳の画面をモニターに映しつつ、続ける。


「これが現在のランキング上位だが、現在襲撃されていないのはこの四人。一位の一条、二位の千条せんじょう、四位の新川、五位の牧野だ」
「一位と二位の子は"五条"の子だし、襲撃される可能性は低いと思うわ。仮に襲撃されても、自力で撃退できるだろうしね」
「そうだな。だから次の標的として可能性が高いのは、お前か新川メイ、ということになる」
新川さんも、か……。


「犯人の目星は付いてるんですか?」
「いや、悪いが全くだ。犯人は犯行の際、透過の術式を使っているようなんだが、どうしてか霊術的に感知できないらしい」
「さらに犯人は、霊脈を遮断する悪質な術式を使い、治癒で傷を治せないようにしてるの」
悪質って、先輩もこの間使ってましたけどね……。


「とにかく、危険ということですね? なら、俺と新川さんが試合して、誘き出すっていうのは?」
「私も、それを提案しに来たんだ。私が得意な術式は認識の術式だ。何とかして見つけてみせる」
二条さんが付いてくれるなら心強い。


「颯太くん、新川さんにも先に話しておきなさいよ? それから、逢衣子。私には、三回命令できる権利があったわよね?」
「と、唐突になんだ……?」
「それを一回分使うわ。……絶対に、二人を守るって約束して」
「……わかった。約束しよう」
二人とも、いつになく真剣だった。
確かに、もしこちらの計画がバレたり、相手の正体を見破ったりしたら、逆上されて、怪我では済まなくなる可能性もある。



俺は新川さんに事情を話し、学園の中庭で試合することになった。
二条さんには近くに隠れて待機してもらっている。


「新川さん、何はともあれ、本気でやらせてもらうよ」
「望むところですっ」


決闘結界を展開し、電子生徒手帳を"決闘"モードで起動する。
「じゃあ、始めよう」


開始の合図と共に、新川さんは開幕速攻をかけてきた。
納刀した柄に手をかけたまま間合いを詰め、体に捻りを加えて半回転しながら逆袈裟の一撃、さらにすかさず逆の回転から袈裟の一撃を繰り出してくる。
それを刀の腹で受け流すが、体重に遠心力が加わり、一撃一撃が重い。しかし、それではいつものようなスピードは出ない。
俺はここぞとばかりに左薙ぎに斬り込むが、回転に合わせて受け流されてしまった。


「それは防御も兼ねているのか……」
「私のスピードばかりを気にしているようでしたから」
「だけど今日は俺も……こういうこともできるんだぜ!」


俺は霊脈を操作し、空気中の水蒸気を凍らせて、氷の剣を作り出す。今日は幸い湿度も高い。だいぶ密度の濃いやつが作れたと思う。
俺はさらに、氷の剣に霊術をかけて、四本同時に操り、新川さんに斬りかかる。
しかし、四本を駆使して素早く連撃を放っても、有効な隙を作ることができない。それどころか、完全に退路を断ったと思ったら、氷の剣を斬り壊されてしまう。


だが、それならそれで、次の手は考えてある。
俺は次の術式を展開し、砕けた氷片を宙に浮かべ、いくらか新川さんに向けて射出してみる。
さっきよりも一つ一つが小さいため、スピードが出る。この速度なら、剣では受けきれないだろう。
しかし、ここでの狙いは当てることではない。
このスピードなら避けられるだろうが、重要なのは、避けることを余儀なくさせて、相手の行動を縛ること。


「今度はこれで……っ!」
氷片で全方位を囲いこみ、一斉に撃ち込む。
しかし、あえて一ヶ所包囲を少し甘くし、退路を誘い込む。そこに斬りかかろうとも思ったが、それは恐らく読まれる。
ここはフェイントだ。八相に構えて、真っ正面から最速でいく!


「くぅ……っ!」
少し苦しげな表情で、新川さんは俺の用意した退路に逃げ込むも、刀身を立てて、防御の構えを取ったままだ。
フェイントは読まれたかもしれないが、あの構えはどこから来ても受けられるようにする汎用性の高いものだ。ということは、どこから来るかはまだ気付かれていない。
しかもあの構えでは、このスピードに反応こそできても受けきれない。


思った通り、俺の正面からの唐竹の一撃を受けきれずに、新川さんは地面に叩き付けられるようにして、大きく体勢を崩した。
思惑通り大成功とはいかないが、初めて新川さんにダメージが通った。このチャンスを逃さず、体勢を立て直される前に追い討ちをかける。


しかし、新川さんは受け身をとった際に、居合の構えに移行しており、いつの間にか誘い込まれていたのは俺の方だった。


あのときと同じ……、背筋の凍りつくような、わかっていても避けられない一撃――!
今回の狙いは小手じゃない。瞬きもつかせぬ間に白刃は伸びてきて、俺の首筋に触れるわずか手前で止まる。


「……降参だ」
「……ありがとうございましたっ」

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