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竜王は魔女の弟子

エルトベーレ

第7話 師と弟子

「……冗談よ?」
「ですよね……」


「この本に載ってた術式を試してみたんだけど、少しずれたわね……。もう少し改良が必要かしら」
先輩は再び手元の本に視線を落とした。
どうやら不完全ながら、瞬間移動の術式を見つけたらしい。研究熱心というか、知識欲にも溢れているんだろう。


「やっと目覚めたか。なら、私はこれで失礼する」
「ちょっと待って、逢衣子」


「…………何だ?」
嫌な予感がしたのか、二条さんの返事には間があった。


「逢衣子には罰として、私の言うことを何でも三つ聞いてもらうからね?」
「なっ!? 私が負けたら三日休むという約束だったはずだぞ!」
「そっちじゃなくて……人の過去を勝手に暴露してくれちゃった、バ・ツ」
先輩は少し楽しげに言うも、笑顔をこれだけ怖く見せられるのもすごいと思う。


「お前、いつから……」
「颯太くんは胸が好きって辺りからかな」
「ほとんど最初からじゃないですか……」
しかもそこからだと、若干伝わり方にズレが生じる気が……。


「くっ……、魔女め……。……仕方ない」
「ふふっ、この三回は大事に使わせてもらうわね」
その魔性の笑みに見送られ、二条さんは何も言わずに帰っていった。


その姿が見えなくなると、先輩はこちらに向き直って口を開く。
「さて、佑馬くん」
「な、何でしょう……?」
その笑顔を怖いと感じるのは、俺に後ろめたいことがあるからだろうか。無意識に身構えてしまう。


「話を聞いてどうだった? こんなやつの弟子なんてやってられるかー、って思った?」
俺も怒られるのかと思っていただけに、心底安堵する。


「その逆ですよ。俺は先輩の弟子でよかったって思いますし、むしろ先輩の方こそ、俺なんかが弟子でいいんですか?」
「うん、いいよ。私からは捨てたりしないから、嫌気がさしたら、捨ててくれて構わないからね」
「先輩……」
どうしてそんなことを言うのだろう。
先輩は俺をそんな風にみているのか、はたまた、まだまだ信用しきっていないのか。
どちらにしても、少し悲しいな。


「あれだけ言っといて負けたらカッコ悪かったし、逢衣子が堂々と戦ってくれて助かったわ。本当に……」
「先輩の弱点は、スタミナ、なんですか?」
二条さんが、もう少しだった、と言っていたのは、すぐにスタミナが切れることを知っていたからだろう。


「私は生まれ持った霊力の量が少ないから、いつもは外の霊脈から取り込んでいるのよ。でも、あんなに派手に使っちゃうとね……」
「だから、普段の生活でも霊術を使うのを控えてるんですか?」
「うん、それもあるわね」
周りの霊脈を取り込んでいるとはいえ、先輩が頻繁に眠りに落ちるのはそういう訳だったのか。


「……それにしても、颯太くんは私のこと、そういう目で見てたんだねぇ……」
さっきの笑顔とはうって変わって、そのうっとりとした艶っぽい眼差しからは、顔立ちは幼いものの、年上の女性としての魅力を充分に備えていることを、その身をもって感じる。


「いや、その……すいません」
「謝らなくてもいいわ。そういう風に見てくれるってことは、それくらいには魅力的ってことでしょ?」
先輩は、自分に魅力がないとでも思っているのだろうか。実力のこともそうだし、自分を過小評価しすぎではないだろうか。


「そう、ですね」
「……どうかしら? いつもは颯太くんの方からこういうセクハラしてくるでしょ?たまには、仕返ししてもいいよね?」
好きじゃなくても、こんなことされたら鼓動が落ち着いてくれないってことか……。


「なんか、いつもすいません……」
「あはっ、いいって別に。可愛いなぁ、颯太くんは」
自分のしていたことを恥じながら頭を垂れると、そこに悪戯っぽい声を投げ掛けられる。


「約束通り、明日は何でも言うこと聞いてもらうからね?」
「……はい」
だがその言葉とは裏腹に、顔を上げた俺に向けられた笑顔は、可憐で温かくて、だけどどこかいじらしくて、何をされても許せる気がした。

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