本の購入希望書に悩みを書かないでください。
断章:吐露
完全に不意を突かれた。まさかそんなことを聞かれるだなんて、これっぽっちも思っていなかったから。
どう返すべきか悩みに悩んで、翌朝、返信した。
『あなたには関係ありません』
するとすぐに、彼からの返信があった。
『関係なくはない。僕と君は知り合ってしまった。だから君の問題は僕の問題でもある。君が何か辛い目に遭っているなら、僕は君を助けてあげたい』
……そう。そういうこと。彼の本当の目的はこれだったのね。
わたしに本を選んでほしいというのは口実。わたしと知り合いになり、わたしの連絡先を得るための。本当の狙いは、わたしの今置かれている状況をどうしてか知っていて、それに介入したかった、と。
少し間が空いて、震える手でこう打ち込み、送信した。
『あなたにできることなんて、ありません』
そうすると、やはりすぐに返信がある。
『話を聞くことはできる』
そして続けてもう一通。
『内にため込んでいるものを僕には吐き出してくれていい。僕はそれを聞いても、幻滅したりしないから』
『よけいなお世話です』
と返せば、またすぐに返信。
『昼休み。屋上で待ってるから』
……なんて強引な人。わたしの話なんて、聞いてないじゃない。
それでもどうしてか、この日の昼休みは屋上へ足が向いていた。
錆びついたドアを開けると、耳障りな音がして、そこで待つ彼はわたしに気づいてしまう。
「やあ。来てくれたんだね」
嬉しそうにしちゃって。彼の思い通りになっている自分が嫌になる。
わたしは彼と距離を空けて座ると、彼はさりげなくその距離を縮めてくる。
「斎藤さんは、お弁当?」
「そんな話をしに来たんじゃないでしょう」
「じゃあ、話してくれるんだね?」
いつもの笑顔だ。やっぱり彼の思い通りに事が運んでる。どうしてこの人相手だと、わたしはいつも後手に回っちゃうんだろう。
「……他の委員は、わたしとは合わないんだそうです」
「どうして?」
「う……わたしが悪いんです。わたしが自分の考えを押し付けようとしたから……」
「それで、何されたの?」
「……そこまでわかってるなら、聞かなくていいじゃないですか」
わたしがいじけたようにそう言うと、彼はいやに真剣になって、わたしの肩を揺さぶった。
「このままじゃ何も変わらないよ。君はあと二年、いや三年間ずっと、こんな学校生活を続けていくつもりなのかい?」
「で、でも……」
「僕は君が傷つくのは嫌だよ」
……そんな眼で見つめないでほしい。だって、わたしは……わたしには、そう思ってもらえる価値などないのだから。
「……わかりました。どうすればいいですか……?」
「ありがとう。僕を頼ってくれて」
いちいち声に出さないでよ。自分の弱さを認めるのって、結構恥ずかしいんだから。
「僕も何か特別なことができるわけじゃないからね。そんなに大したことはできない。だから、僕は噂を流すことにするよ」
「噂……ですか?」
「そう。図書委員は今一年生が一人でやってるらしいけど、元委員が嫌がらせしてるらしいよ、ってね」
間違ってはいない。でもそんなことで、何が変わるというの?
「でも、それ……」
「そう。ちょっと危ないよね。だけど大丈夫だよ。僕なら、ヘマしたりしないからさ」
それはいつもの笑顔だったけど、どうしてだか素直に受け入れることができた。
どう返すべきか悩みに悩んで、翌朝、返信した。
『あなたには関係ありません』
するとすぐに、彼からの返信があった。
『関係なくはない。僕と君は知り合ってしまった。だから君の問題は僕の問題でもある。君が何か辛い目に遭っているなら、僕は君を助けてあげたい』
……そう。そういうこと。彼の本当の目的はこれだったのね。
わたしに本を選んでほしいというのは口実。わたしと知り合いになり、わたしの連絡先を得るための。本当の狙いは、わたしの今置かれている状況をどうしてか知っていて、それに介入したかった、と。
少し間が空いて、震える手でこう打ち込み、送信した。
『あなたにできることなんて、ありません』
そうすると、やはりすぐに返信がある。
『話を聞くことはできる』
そして続けてもう一通。
『内にため込んでいるものを僕には吐き出してくれていい。僕はそれを聞いても、幻滅したりしないから』
『よけいなお世話です』
と返せば、またすぐに返信。
『昼休み。屋上で待ってるから』
……なんて強引な人。わたしの話なんて、聞いてないじゃない。
それでもどうしてか、この日の昼休みは屋上へ足が向いていた。
錆びついたドアを開けると、耳障りな音がして、そこで待つ彼はわたしに気づいてしまう。
「やあ。来てくれたんだね」
嬉しそうにしちゃって。彼の思い通りになっている自分が嫌になる。
わたしは彼と距離を空けて座ると、彼はさりげなくその距離を縮めてくる。
「斎藤さんは、お弁当?」
「そんな話をしに来たんじゃないでしょう」
「じゃあ、話してくれるんだね?」
いつもの笑顔だ。やっぱり彼の思い通りに事が運んでる。どうしてこの人相手だと、わたしはいつも後手に回っちゃうんだろう。
「……他の委員は、わたしとは合わないんだそうです」
「どうして?」
「う……わたしが悪いんです。わたしが自分の考えを押し付けようとしたから……」
「それで、何されたの?」
「……そこまでわかってるなら、聞かなくていいじゃないですか」
わたしがいじけたようにそう言うと、彼はいやに真剣になって、わたしの肩を揺さぶった。
「このままじゃ何も変わらないよ。君はあと二年、いや三年間ずっと、こんな学校生活を続けていくつもりなのかい?」
「で、でも……」
「僕は君が傷つくのは嫌だよ」
……そんな眼で見つめないでほしい。だって、わたしは……わたしには、そう思ってもらえる価値などないのだから。
「……わかりました。どうすればいいですか……?」
「ありがとう。僕を頼ってくれて」
いちいち声に出さないでよ。自分の弱さを認めるのって、結構恥ずかしいんだから。
「僕も何か特別なことができるわけじゃないからね。そんなに大したことはできない。だから、僕は噂を流すことにするよ」
「噂……ですか?」
「そう。図書委員は今一年生が一人でやってるらしいけど、元委員が嫌がらせしてるらしいよ、ってね」
間違ってはいない。でもそんなことで、何が変わるというの?
「でも、それ……」
「そう。ちょっと危ないよね。だけど大丈夫だよ。僕なら、ヘマしたりしないからさ」
それはいつもの笑顔だったけど、どうしてだか素直に受け入れることができた。
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