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3-2 片割れ
翌朝、先輩の書置き通り、オレが図書室を開ける。投書箱には……今朝は何も入っていない。
もしかしたらと、淡い期待を持ってみても、やはり先輩は現れなかった。
時間になって図書室のドアを施錠すると、見知った顔が廊下を通りすぎるのが見えた。
「先輩!」
オレが思わず声をかけると、彼女は驚いたように振り返る。
「先輩、昨日はどうしたんですか?」
「え? 何のこと? っていうか、キミ誰?」
……あれ、人違いか? そんなはずはない。先輩は結構美人だから、オレが見間違えるはずはないんだ。
「斎藤先輩……ですよね?」
「そうだけど……」
まさか先輩……記憶喪失か? そんなベタな展開、あるわけが……。いや、でも……。
なんて悶々としていると、目の前の先輩は何かに合点がいったようで、もしかして、と口を開いた。
「キミの言う先輩って、斎藤紗沙のこと?」
「そうです。あ、斎藤違いでしたか?」
まぁ、斎藤ってよくいる苗字だしな。
って、そうじゃない! 見た目が先輩そのままなのは、どう見ても斎藤違いで済まされないはずだ。
すると、改まった様子で目の前の彼女は名乗ってくれた。
「あたしは生徒会副会長の斎藤奈菜。紗沙はあたしの妹だよ」
「えっと……もしかして、双子ですか?」
「そうそう。よく間違えられるんだよねー。そんなに似てるかなぁ」
いや、めっちゃ似てるよ。見た目だけなら。話してみれば、別人っていうのはわかったけど。
「紗沙先輩、昨日なんか変じゃなかったですか?」
変って言い方は失礼か。変わってた、おかしな、ん~……?
また一人で悶々としていると、奈菜先輩は苦笑しながら教えてくれた。
「あー、いつも変だけどね。でも言われてみれば、いつも以上にカリカリしてたかも。んー、でも今日はあたしよりも早く学校行ったっぽかったけど、来てないの?」
「えっ、そうなんですか?」
じゃあ、図書室に顔を出さなかったってだけなのか。どうして……。
「キミ、紗沙の彼氏なの? そんなに気にしてあげるなんて」
からかうような意図はなく、純粋に疑問に思ったらしい。
「ち、違いますよ」
今のオレにはちゃんと彼女がいるんだ。仮初めじゃない、本物の彼女が。
「そっかぁ。あ、もう行かないとだから、またね!」
気付けば、朝のホームルームが始まるまであと数分もなかった。
って、二年生の先輩はこの二階に教室があるからいいけど、オレは階段上がんなきゃいけないじゃん! 絶対遅刻だ。校舎にいながら遅刻するなんて……。
オレは真白から弁当をもらって司書室で食べ、カウンター業務も同時にこなす。意外にも利用者は多く、食べている暇はそれほどない。
先輩はいつも、どうやって回してたんだろう。
するとそこへ、先輩の姿が……。今度はどっちの斎藤先輩だろうか。
「あ、いたいた」
たぶん、奈菜先輩の方だな。
「キミ、名前聞いてなかったよね。図書委員なの?」
「はい。一年の、倉田佑馬っていいます」
「そうだったんだね。あのね、佑馬君。紗沙はやっぱり、学校に来てないみたいなの」
「え、でも……」
奈菜先輩より早く学校に行ったみたいって……。先輩、学校へ行かずに別のところに……?
「とにかく、帰ったら紗沙に聞いてみるから、連絡先教えて?」
すげぇこの人。びっくりするほどナチュラルに連絡先聞いてきた。連絡先って男女の間でそんな簡単に交換しちゃっていいもんなの? だってオレ、紗沙先輩の連絡先教えてもらうのに二週間かかったのに。
とにもかくにも連絡先を交換し、彼女は図書室を後にした。
放課後も、カウンター番を終えて戸締りをする。
あ、今日は投書が入ってる。明日確認しなきゃな。
今日はこの後、真白と会う約束がある。定期テストが近いので、勉強を教えてほしいらしい。聞けば、割とギリギリの点でこの高校に入学できたっぽいとのこと。
今回以降も、先が思いやられるな……。
「あ、佑馬くん」
彼女は昇降口で待っていた。
晴れて彼女がちゃんとしたオレの恋人なんだと思うと、今までのオレの恋人のいなかった生活が嘘みたいだ。恋人一人できるだけで、こんなにも景色が色づいて見えるのか。
「ごめんね。急に」
真白の案内で、オレは彼女の家に行くことになっている。女の子の家にあがるのなんて、初めてのことで、さすがのオレでも緊張してしまう。
「あ、いや、いいよ。別に」
電車に乗っている間も、彼女の家に着くまで歩く間も、お互いに会話は続かず、彼女の家の玄関をくぐることになった。
「お邪魔します……」
「今は誰もいないよ。そのうちお母さん帰ってくるけど」
うわ、余計緊張すること言うなよ……。
「それでね……佑馬くんに聞きたいことがあるの」
勉強じゃなかったのかよ。と思わずツッコミを入れそうになるが、彼女の目が真剣だったので、その言葉は喉元で止まった。
「佑馬くん、私のこと……覚えてない?」
もしかしたらと、淡い期待を持ってみても、やはり先輩は現れなかった。
時間になって図書室のドアを施錠すると、見知った顔が廊下を通りすぎるのが見えた。
「先輩!」
オレが思わず声をかけると、彼女は驚いたように振り返る。
「先輩、昨日はどうしたんですか?」
「え? 何のこと? っていうか、キミ誰?」
……あれ、人違いか? そんなはずはない。先輩は結構美人だから、オレが見間違えるはずはないんだ。
「斎藤先輩……ですよね?」
「そうだけど……」
まさか先輩……記憶喪失か? そんなベタな展開、あるわけが……。いや、でも……。
なんて悶々としていると、目の前の先輩は何かに合点がいったようで、もしかして、と口を開いた。
「キミの言う先輩って、斎藤紗沙のこと?」
「そうです。あ、斎藤違いでしたか?」
まぁ、斎藤ってよくいる苗字だしな。
って、そうじゃない! 見た目が先輩そのままなのは、どう見ても斎藤違いで済まされないはずだ。
すると、改まった様子で目の前の彼女は名乗ってくれた。
「あたしは生徒会副会長の斎藤奈菜。紗沙はあたしの妹だよ」
「えっと……もしかして、双子ですか?」
「そうそう。よく間違えられるんだよねー。そんなに似てるかなぁ」
いや、めっちゃ似てるよ。見た目だけなら。話してみれば、別人っていうのはわかったけど。
「紗沙先輩、昨日なんか変じゃなかったですか?」
変って言い方は失礼か。変わってた、おかしな、ん~……?
また一人で悶々としていると、奈菜先輩は苦笑しながら教えてくれた。
「あー、いつも変だけどね。でも言われてみれば、いつも以上にカリカリしてたかも。んー、でも今日はあたしよりも早く学校行ったっぽかったけど、来てないの?」
「えっ、そうなんですか?」
じゃあ、図書室に顔を出さなかったってだけなのか。どうして……。
「キミ、紗沙の彼氏なの? そんなに気にしてあげるなんて」
からかうような意図はなく、純粋に疑問に思ったらしい。
「ち、違いますよ」
今のオレにはちゃんと彼女がいるんだ。仮初めじゃない、本物の彼女が。
「そっかぁ。あ、もう行かないとだから、またね!」
気付けば、朝のホームルームが始まるまであと数分もなかった。
って、二年生の先輩はこの二階に教室があるからいいけど、オレは階段上がんなきゃいけないじゃん! 絶対遅刻だ。校舎にいながら遅刻するなんて……。
オレは真白から弁当をもらって司書室で食べ、カウンター業務も同時にこなす。意外にも利用者は多く、食べている暇はそれほどない。
先輩はいつも、どうやって回してたんだろう。
するとそこへ、先輩の姿が……。今度はどっちの斎藤先輩だろうか。
「あ、いたいた」
たぶん、奈菜先輩の方だな。
「キミ、名前聞いてなかったよね。図書委員なの?」
「はい。一年の、倉田佑馬っていいます」
「そうだったんだね。あのね、佑馬君。紗沙はやっぱり、学校に来てないみたいなの」
「え、でも……」
奈菜先輩より早く学校に行ったみたいって……。先輩、学校へ行かずに別のところに……?
「とにかく、帰ったら紗沙に聞いてみるから、連絡先教えて?」
すげぇこの人。びっくりするほどナチュラルに連絡先聞いてきた。連絡先って男女の間でそんな簡単に交換しちゃっていいもんなの? だってオレ、紗沙先輩の連絡先教えてもらうのに二週間かかったのに。
とにもかくにも連絡先を交換し、彼女は図書室を後にした。
放課後も、カウンター番を終えて戸締りをする。
あ、今日は投書が入ってる。明日確認しなきゃな。
今日はこの後、真白と会う約束がある。定期テストが近いので、勉強を教えてほしいらしい。聞けば、割とギリギリの点でこの高校に入学できたっぽいとのこと。
今回以降も、先が思いやられるな……。
「あ、佑馬くん」
彼女は昇降口で待っていた。
晴れて彼女がちゃんとしたオレの恋人なんだと思うと、今までのオレの恋人のいなかった生活が嘘みたいだ。恋人一人できるだけで、こんなにも景色が色づいて見えるのか。
「ごめんね。急に」
真白の案内で、オレは彼女の家に行くことになっている。女の子の家にあがるのなんて、初めてのことで、さすがのオレでも緊張してしまう。
「あ、いや、いいよ。別に」
電車に乗っている間も、彼女の家に着くまで歩く間も、お互いに会話は続かず、彼女の家の玄関をくぐることになった。
「お邪魔します……」
「今は誰もいないよ。そのうちお母さん帰ってくるけど」
うわ、余計緊張すること言うなよ……。
「それでね……佑馬くんに聞きたいことがあるの」
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