女子だって、エースで全国目指したいっ!
第6話 三チーム合同合宿
合同合宿っていうからどんなところに行くのか期待してたのに、ただの山奥じゃない……。っていうか、なんか薄気味悪いし。ときどき森の中からバサバサっと鳥が飛び立つのが妙にびっくりする。
「うちが一番乗りみたいだな。荷物持ってついてこい」
監督が先導して宿舎の中を進んでいく。
中はふつうね。それはよかったわ。
「女子は一号室、A班は二号室、B班は三号室だ。俺は四号室にいるから、何かあったら呼べ」
「はい!」
A班、B班はわたしとお姉ちゃんを除いて一列に並び、交互にABABと割り振って決めている。
「他の二チームが到着次第、練習を始めるから、各自、準備を済ませておくように」
「はい!」
わたしは言われた通り、一号室に入る。と、程なくしてお姉ちゃんも入ってきた。瀧上シニアの女子選手はわたし達だけなので、家とあまり変わらない。
「お姉ちゃん、他の二チームのこと聞いてる?」
「……蓼科と甲州だって」
これが、数週間ぶりの会話だった。
「蓼科って、めっちゃ強いとこだよね? たしか、去年の優勝チームじゃなかった?」
「甲州も去年の全国ベスト八。うちは県大の準優勝だから、ちょっと場違いかもね」
そっか、甲州も結構強いところなんだ。
「瀧上って、静岡の中だと強い方?」
所属していながら、知らなかった。去年は全国いけなくて、一昨年は全国の初戦敗退だったと記憶してるけど。
「んー、強い方ではあるかな。でも一番は天竜じゃないかな」
「あー、永妻さんのいたとこだね」
永妻桜莉菜。昨年まで天竜シニアに所属していて、女子選手にして強豪チームのエースナンバーを背負っていた、本物の実力者。今年からは県内の名門、駒越高校の特待生としてその名を聞くことができる。
「たしか、三姉妹の一番下は、あんたと同い年だったと思うよ」
「じゃあ今年から天竜にいるんだ。負けられないわね」
珍しく、会話が続いた。こんなにも取り留めのない話題で、こんなにもお姉ちゃんと話したのは、いつ振りだろう。
着替えて二チームの到着を待っていると、ドアをノックする音が聞こえた。
「二チームとも到着した。グラウンドに集合だ」
わたしとお姉ちゃんは、グラブとスパイクを持って、部屋を出る。
「舞祈、もしあんたがあいつらを抑えられたら……いや、いいわ」
部屋を出るとき、お姉ちゃんはそんなことを言っていたが、何て続けようとしていたのか、わたしにはわからなかった。
チーム関係なく、ノックやシートバッティング、投球練習をさせてもらいながら、他チームの選手から刺激を受けるいい機会にしてほしいということだった。
わたしは早速ブルペンに向かうと、懐かしい顔に出くわした。切れ長の目に、肩に届かないサラッとした黒い髪、そしてほとんど笑うことのない口元。
「月瀬! 久しぶり!」
「え、舞祈?!」
平沢月瀬。彼女はわたしの親友だったが、小学校の時に転校してしまった。転校して以来は一度も顔を合わせていなかったけど、お互いすぐにわかった。
「月瀬、捕手なんだ」
「舞祈は投手、か」
月瀬は自然とわたしの正面に座ってくれて、ミットを構える。お前の球を見せてみろって、言葉がなくても伝わる。わたしはそのミットに、自分の投げられる精一杯の球を投げ込んでやるのだ。
「……ふーん。こんなもんか」
月瀬はほとんど表情を変えないが、拍子抜けしたような様子を見せた。
ま、まぁ、ストレートはそんなに自信あるわけじゃないし。
「ま、まだまだっ」
今度はわたしの自慢、スライダーを投げ込んでみせる。
ふふん、こんな球、そうそうお目にかかれないでしょ。
「……まぁまぁね。球種はこれだけ?」
なっ、わたしのスライダーが……まぁまぁですって……?
「そんなわけないでしょ」
いいわ、見てなさい。わたしの全てを、ぶつけてあげる!
「はぁ……はぁ……、どうよ?」
持ち球、コントロール、最高球速。全部見せた。これでダメなら、月瀬にとってわたしは、その程度の投手だったってこと。
「……すごい。すごいよ、舞祈!」
「えっ……?」
「舞祈のことだから、挑発すれば全部見せてくれると思ったの。想像以上よ、これは。来てよかったわ」
あ……しまった。敵チームに情報を……。でも……そっか。よかった。月瀬に認めてもらえて。
「ねぇ、舞祈。この後シートバッティングやるらしいんだけど、一緒に組まない? 志願制なんだって」
「うん、もちろん。シートバッティングだろうが、ただ打たれるつもりはないわ」
グラウンドに行き、月瀬と二人でシートバッティングへの参加を志願する。
「いいだろう。瀧上の投手に甲州の捕手、そして蓼科の打者か。しかも全員一年生とは、面白い」
そう言われてバッターボックスを見ると、右打席に少し小柄な少年が、バットを構えて今か今かと待ちわびていた。
わたし達はすぐに準備し、練習が始まる。
練習といっても、簡単に打たせるつもりはない。月瀬からサインをもらって、彼女のミットに届くよう、精一杯投げる!
キン、と鈍い金属音。しかし、ものすごいスピードで打球はこっちに転がってくる。わたしは反応できず、二遊間を越える当たりになってしまった。
「ちっ、ゴロか」
アウトコース一杯のツーシームだったのに。……こいつ、なんてスイングスピードしてるの。
月瀬のサインは膝元のシンカー。この球はまだ練習中なんだけど、いけるかな。
腕を目いっぱい振って、腰から膝へ落とすように。ところが、これも簡単に弾き返されてしまった。角度のついた打球は伸びて、高く上がる。やや後退したレフトがキャッチし、フライアウト。
わたしの球速がない分、当てること自体は難しくないのかもしれない。そうなると、制球が生命線ね。
次は高めにストレート。いわゆる釣り球。だけど、ストライクゾーンに入れる。あくまでバッティング練習だからね。打てない球は投げちゃいけない。
しかし、これも打たれた。ショート正面のライナーになり、抑えたと思ったのも束の間、打球が鋭すぎて、ショートのグラブを弾いて後方へ逸れてしまったのだ。
なんなのよ、こいつ……。これが全国ナンバーワンチームの実力ってこと……?
その後も何球か投げ続けたが、こいつから空振りを取ることはできなかった。
「舞祈、大丈夫……?」
「うん。別に、気にしてないよ」
月瀬のリードが悪かったわけじゃない、と思う。わたしの球が悪かったんだ。コントロールもまだまだ甘い。もっと極めなきゃ。変化球も、もっと鋭く、もっと自在に操れなきゃ。
わたしの心は焦るばかりだった。
「……暑い」
お風呂からあがり、部屋にあった扇風機を独占するも、……暑い。
「外の方が涼しいんじゃないの?」
お姉ちゃんにそんなことを言われ、わたしは窓を開けてみる。
「あ、ホントだ。ちょっと散歩してくるね」
「あんまり遅くなるなよ。私が怒られるんだから」
「善処しますよぉー」
お姉ちゃんのちょっと不機嫌になった顔を背に、わたしは合宿所の近くを歩く。
山奥というだけあって、星がきれいね。聞こえるのは、風のそよぐ音と、虫の鳴き声だけ。これも、わたしの好きな静寂だ。
石段に腰掛け、風に当たっていると、鋭い風切り音が混じって聞こえた。この音……素振り? こんな時間に誰が……。
音のする方へと近寄っていくと、そこにいたのは、昼間のあいつだった。短めの黒い髪で、男子にしては背は低い。太い腕と脚は、筋肉ですごく硬そうに見える。
「何だお前……って、昼間の」
向こうもわたしのことを覚えていたらしい。
「お前の球、すごかったな」
「え……?」
あれだけ打っておきながら、何言ってんの? ムカつく。
「オレは全部、ホームランを狙ったんだ。お前の球を見て、打てると思った。だけど、あのザマだよ」
えっと、どういうこと? あれは全部打ち損ないだったって言うの? それであれだけ……?
「お前、名前は?」
彼は素振りをやめて、わたしの方を向いた。月明かりだけじゃ、その表情まではわからない。
「……高瀬、舞祈」
「オレは嵩宮大峨。またやろうぜ!」
「……やだ」
彼が息を飲む音が聞こえて、驚いた様子を見せたのはわかった。
わたしの返事を聞いて、彼はバットを持ったままこっちに歩み寄ってくる。
「ただ打たれるだけの練習なんて、つまんないし」
「……じゃあ、わざと三振してやろうか?」
なんて、悪戯っぽい笑みを浮かべてくる。子どもみたいな、無邪気な笑顔。
「そんなのもっとつまんない。……いつか、全力で三振させる」
拗ねたように言うと、嵩宮はわたしの頬にそっと手を触れた。
「…………近くで見ると、結構かわいいな」
こ、こいつ、何言って……っ?!
「汚い手で触んないで。お風呂入った後なんだから」
「そういう気の強い子、オレ好きだよ」
ヤバいって。何なのこいつ、キモいんだけど。
「触んなって言ってんでしょ。きゃっ、ちょっとっ」
わたしが頬に触れたままの奴の手を払おうとすると、そのまま肩に体重をかけられて、押し倒されてしまった。
「……こんな山奥で二人っきりなんだぜ?」
こいつ、マジでヤバいって。しかも力強すぎ。逃げられない。
「そんな顔すんなよ。もっといじめたくなっちゃうだろ」
わたしは咄嗟に奴の腹を膝蹴りして、力が抜けた隙をつき、逃げ出した。
「ごめんって、冗談だから~!」
そんな叫びが聞こえたが、わたしは振り返らず、一目散に宿舎に逃げ帰った。
「……舞祈、何かあった?」
お姉ちゃんが珍しく心配してくれるのも無視して、わたしは布団にくるまる。
あいつ……次は絶対三振させてやる! この舞祈様に与えた屈辱を、絶対に返してやるんだからっ!
「うちが一番乗りみたいだな。荷物持ってついてこい」
監督が先導して宿舎の中を進んでいく。
中はふつうね。それはよかったわ。
「女子は一号室、A班は二号室、B班は三号室だ。俺は四号室にいるから、何かあったら呼べ」
「はい!」
A班、B班はわたしとお姉ちゃんを除いて一列に並び、交互にABABと割り振って決めている。
「他の二チームが到着次第、練習を始めるから、各自、準備を済ませておくように」
「はい!」
わたしは言われた通り、一号室に入る。と、程なくしてお姉ちゃんも入ってきた。瀧上シニアの女子選手はわたし達だけなので、家とあまり変わらない。
「お姉ちゃん、他の二チームのこと聞いてる?」
「……蓼科と甲州だって」
これが、数週間ぶりの会話だった。
「蓼科って、めっちゃ強いとこだよね? たしか、去年の優勝チームじゃなかった?」
「甲州も去年の全国ベスト八。うちは県大の準優勝だから、ちょっと場違いかもね」
そっか、甲州も結構強いところなんだ。
「瀧上って、静岡の中だと強い方?」
所属していながら、知らなかった。去年は全国いけなくて、一昨年は全国の初戦敗退だったと記憶してるけど。
「んー、強い方ではあるかな。でも一番は天竜じゃないかな」
「あー、永妻さんのいたとこだね」
永妻桜莉菜。昨年まで天竜シニアに所属していて、女子選手にして強豪チームのエースナンバーを背負っていた、本物の実力者。今年からは県内の名門、駒越高校の特待生としてその名を聞くことができる。
「たしか、三姉妹の一番下は、あんたと同い年だったと思うよ」
「じゃあ今年から天竜にいるんだ。負けられないわね」
珍しく、会話が続いた。こんなにも取り留めのない話題で、こんなにもお姉ちゃんと話したのは、いつ振りだろう。
着替えて二チームの到着を待っていると、ドアをノックする音が聞こえた。
「二チームとも到着した。グラウンドに集合だ」
わたしとお姉ちゃんは、グラブとスパイクを持って、部屋を出る。
「舞祈、もしあんたがあいつらを抑えられたら……いや、いいわ」
部屋を出るとき、お姉ちゃんはそんなことを言っていたが、何て続けようとしていたのか、わたしにはわからなかった。
チーム関係なく、ノックやシートバッティング、投球練習をさせてもらいながら、他チームの選手から刺激を受けるいい機会にしてほしいということだった。
わたしは早速ブルペンに向かうと、懐かしい顔に出くわした。切れ長の目に、肩に届かないサラッとした黒い髪、そしてほとんど笑うことのない口元。
「月瀬! 久しぶり!」
「え、舞祈?!」
平沢月瀬。彼女はわたしの親友だったが、小学校の時に転校してしまった。転校して以来は一度も顔を合わせていなかったけど、お互いすぐにわかった。
「月瀬、捕手なんだ」
「舞祈は投手、か」
月瀬は自然とわたしの正面に座ってくれて、ミットを構える。お前の球を見せてみろって、言葉がなくても伝わる。わたしはそのミットに、自分の投げられる精一杯の球を投げ込んでやるのだ。
「……ふーん。こんなもんか」
月瀬はほとんど表情を変えないが、拍子抜けしたような様子を見せた。
ま、まぁ、ストレートはそんなに自信あるわけじゃないし。
「ま、まだまだっ」
今度はわたしの自慢、スライダーを投げ込んでみせる。
ふふん、こんな球、そうそうお目にかかれないでしょ。
「……まぁまぁね。球種はこれだけ?」
なっ、わたしのスライダーが……まぁまぁですって……?
「そんなわけないでしょ」
いいわ、見てなさい。わたしの全てを、ぶつけてあげる!
「はぁ……はぁ……、どうよ?」
持ち球、コントロール、最高球速。全部見せた。これでダメなら、月瀬にとってわたしは、その程度の投手だったってこと。
「……すごい。すごいよ、舞祈!」
「えっ……?」
「舞祈のことだから、挑発すれば全部見せてくれると思ったの。想像以上よ、これは。来てよかったわ」
あ……しまった。敵チームに情報を……。でも……そっか。よかった。月瀬に認めてもらえて。
「ねぇ、舞祈。この後シートバッティングやるらしいんだけど、一緒に組まない? 志願制なんだって」
「うん、もちろん。シートバッティングだろうが、ただ打たれるつもりはないわ」
グラウンドに行き、月瀬と二人でシートバッティングへの参加を志願する。
「いいだろう。瀧上の投手に甲州の捕手、そして蓼科の打者か。しかも全員一年生とは、面白い」
そう言われてバッターボックスを見ると、右打席に少し小柄な少年が、バットを構えて今か今かと待ちわびていた。
わたし達はすぐに準備し、練習が始まる。
練習といっても、簡単に打たせるつもりはない。月瀬からサインをもらって、彼女のミットに届くよう、精一杯投げる!
キン、と鈍い金属音。しかし、ものすごいスピードで打球はこっちに転がってくる。わたしは反応できず、二遊間を越える当たりになってしまった。
「ちっ、ゴロか」
アウトコース一杯のツーシームだったのに。……こいつ、なんてスイングスピードしてるの。
月瀬のサインは膝元のシンカー。この球はまだ練習中なんだけど、いけるかな。
腕を目いっぱい振って、腰から膝へ落とすように。ところが、これも簡単に弾き返されてしまった。角度のついた打球は伸びて、高く上がる。やや後退したレフトがキャッチし、フライアウト。
わたしの球速がない分、当てること自体は難しくないのかもしれない。そうなると、制球が生命線ね。
次は高めにストレート。いわゆる釣り球。だけど、ストライクゾーンに入れる。あくまでバッティング練習だからね。打てない球は投げちゃいけない。
しかし、これも打たれた。ショート正面のライナーになり、抑えたと思ったのも束の間、打球が鋭すぎて、ショートのグラブを弾いて後方へ逸れてしまったのだ。
なんなのよ、こいつ……。これが全国ナンバーワンチームの実力ってこと……?
その後も何球か投げ続けたが、こいつから空振りを取ることはできなかった。
「舞祈、大丈夫……?」
「うん。別に、気にしてないよ」
月瀬のリードが悪かったわけじゃない、と思う。わたしの球が悪かったんだ。コントロールもまだまだ甘い。もっと極めなきゃ。変化球も、もっと鋭く、もっと自在に操れなきゃ。
わたしの心は焦るばかりだった。
「……暑い」
お風呂からあがり、部屋にあった扇風機を独占するも、……暑い。
「外の方が涼しいんじゃないの?」
お姉ちゃんにそんなことを言われ、わたしは窓を開けてみる。
「あ、ホントだ。ちょっと散歩してくるね」
「あんまり遅くなるなよ。私が怒られるんだから」
「善処しますよぉー」
お姉ちゃんのちょっと不機嫌になった顔を背に、わたしは合宿所の近くを歩く。
山奥というだけあって、星がきれいね。聞こえるのは、風のそよぐ音と、虫の鳴き声だけ。これも、わたしの好きな静寂だ。
石段に腰掛け、風に当たっていると、鋭い風切り音が混じって聞こえた。この音……素振り? こんな時間に誰が……。
音のする方へと近寄っていくと、そこにいたのは、昼間のあいつだった。短めの黒い髪で、男子にしては背は低い。太い腕と脚は、筋肉ですごく硬そうに見える。
「何だお前……って、昼間の」
向こうもわたしのことを覚えていたらしい。
「お前の球、すごかったな」
「え……?」
あれだけ打っておきながら、何言ってんの? ムカつく。
「オレは全部、ホームランを狙ったんだ。お前の球を見て、打てると思った。だけど、あのザマだよ」
えっと、どういうこと? あれは全部打ち損ないだったって言うの? それであれだけ……?
「お前、名前は?」
彼は素振りをやめて、わたしの方を向いた。月明かりだけじゃ、その表情まではわからない。
「……高瀬、舞祈」
「オレは嵩宮大峨。またやろうぜ!」
「……やだ」
彼が息を飲む音が聞こえて、驚いた様子を見せたのはわかった。
わたしの返事を聞いて、彼はバットを持ったままこっちに歩み寄ってくる。
「ただ打たれるだけの練習なんて、つまんないし」
「……じゃあ、わざと三振してやろうか?」
なんて、悪戯っぽい笑みを浮かべてくる。子どもみたいな、無邪気な笑顔。
「そんなのもっとつまんない。……いつか、全力で三振させる」
拗ねたように言うと、嵩宮はわたしの頬にそっと手を触れた。
「…………近くで見ると、結構かわいいな」
こ、こいつ、何言って……っ?!
「汚い手で触んないで。お風呂入った後なんだから」
「そういう気の強い子、オレ好きだよ」
ヤバいって。何なのこいつ、キモいんだけど。
「触んなって言ってんでしょ。きゃっ、ちょっとっ」
わたしが頬に触れたままの奴の手を払おうとすると、そのまま肩に体重をかけられて、押し倒されてしまった。
「……こんな山奥で二人っきりなんだぜ?」
こいつ、マジでヤバいって。しかも力強すぎ。逃げられない。
「そんな顔すんなよ。もっといじめたくなっちゃうだろ」
わたしは咄嗟に奴の腹を膝蹴りして、力が抜けた隙をつき、逃げ出した。
「ごめんって、冗談だから~!」
そんな叫びが聞こえたが、わたしは振り返らず、一目散に宿舎に逃げ帰った。
「……舞祈、何かあった?」
お姉ちゃんが珍しく心配してくれるのも無視して、わたしは布団にくるまる。
あいつ……次は絶対三振させてやる! この舞祈様に与えた屈辱を、絶対に返してやるんだからっ!
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