妹のいるグラウンド

エルトベーレ

第22話 反省会……?

四角い食卓の一辺に座り、その隣にリリィ先生も座って部員の到着を待った。


程なくして、一番乗りが現れる。
一辺に座れるのは三人程度。誰がどこに座るのかも見ものである。


「開いてるぞ」
律儀にノックしてくれるので、入室を促した。
「こんばんは〜」
「……こんばんは」
最初の訪問者は同じ顔の二人、福原姉妹だった。まだしっとりとした髪がやたらと色っぽい。
「早いな、二人とも」
「監督に早く会いたくってさぁ。って緩奈が」
「言ってないっ」
緩奈ちゃんは今ので警戒してか、オレと離れて座った。
……オレは何もしてないのに。
「じゃあ私はこっち」
遥奈ちゃんは角を挟んでリリィ先生の隣に座った。
「何でそっちなんだよ」
「隣にきてほしかったですか?」
「いや、そういうわけじゃないけど」
そういうわけだけど。
「監督の隣は他に座りたい人がいるかもしれないので」
なるほど。遥奈ちゃんなりに気を遣ってのことだったのか。


「失礼しまーす」
ちょうどその時、慣れたように結祈が入ってくる。
頻度は減ってきているが、今でも体幹トレーニングは続けている。そのため、この部屋にも頻繁に訪れているのだ。
結祈は何の躊躇いもなく角を挟んでオレの隣に座った。
「へぇ〜、知らないよ? 結祈」
「な、何が?」
遥奈ちゃんの言いたいことは、すぐに思い知ることになる。


「兄さん、入るねー」
絢郁がドアを開けてその姿を見せるも、どこに座ろうかと考えているようで、なかなか座ろうとしない。
そんな彼女に助け舟を出すべく、オレは膝を叩く。
「絢郁、空いてるぞ」
「ば、バカじゃないのっ?」
案の定、顔を赤くして適当な席に着いた。
結祈の隣か。絢郁はこの三人の中なら、彼女が一番気が置けないのだろうか。


「結祈はここに来たことあるの?」
唐突に、遥奈ちゃんが結祈にそんな質問を投げかけた。
「……あるけど?」
「何回くらい?」
「えっと……週二くらい」
遥奈ちゃんの質問に、律儀にも答えてしまう結祈。
遥奈ちゃんも意地が悪い。あ、姉妹揃ってか。
「ねぇ、結祈ちゃん」
「ん? うわっ、な、何かな……?」
結祈も思わず身を引くほど、絢郁は恨めしい顔をしていた。
「どうしちゃったの? 絢郁。まさか嫉妬してるとか?」
遥奈ちゃんのしらじらしい態度に、絢郁はそうとは知らずに真っ赤になって否定する。
なんだ、遥奈ちゃんのターゲットは絢郁だったか。
「ち、違うっ! 結祈ちゃんが兄さんに何かしてないか心配になっただけ!」
「私がする方なんだ……」
「絢郁、心配しなくても、こんな奴に誘惑されたって監督が手なんか出すわけないよ」
「ちょっと、どういう意味よ!」
「無駄にでかい乳だけが取り柄のくせに」
「何よ、貧乳の僻みってやつ?」
結局こうなるわけね……。


「失礼しまーす」
「失礼します」
続いてやってきたのは、香撫ちゃんと美莱ちゃん。意外な組み合わせだ。
香撫ちゃんはオレの向かい、美莱ちゃんはその隣に座った。


これで一応、全ての辺に人が座っているので、残りのメンバーは誰かの隣にやってくるわけだ。
あと空いているのは絢郁の隣、美莱ちゃんの隣、緩奈ちゃんと遥奈ちゃんの間。
残りのメンバーは結衣と美憂ちゃんと綾羽さんか。
「二人は仲良いのか?」
美莱ちゃんは落ち着かないようで、オレは香撫ちゃんの方に話を振ってみる。
「同じ中学なんですよ〜」
「へぇ、知り合いだったのか」
「聞いてくださいよ、香撫さん」
「なになに? 遥奈ちゃん」
まだこれ以上話を大きくするつもりなのか……。今日はなぜだか、緩奈ちゃんも彼女を止めてくれないしな。
「聞かなくていいぞ」
「何でですか?」
「それより結衣はどうしたんだ? 一緒じゃないのか?」
話題を変えてみる。そっちの方に話が広がってくれれば儲けもんだ。
「一緒じゃないですよー。結衣は美聡さんと一緒だと思いますけど」
「そうか。遅いな」


「あー、なるほど、そういうことですね」
などと、遥奈ちゃんが突然意味深な視線を向けてくる。
「やっぱり監督は、おっぱいおっきい方が好きなんですね」
「そ、そうだったんですかっ!?」
いやいや、香撫ちゃんも真に受けるなよ。
「結祈や結衣さんばっかり気にして、私みたいなのは眼中にないということですか」
さて、どうしたもんかな、これは……。
試されてるのか? 下手な受け答えをすれば、オレの監督生命に関わるぞ。
「……リリィ先生、助けてくださいよ」
振り向くと、リリィ先生までも胸元を覆い隠していた。
「……おっきいのが好きなんですか?」
なんともストレートな質問だな……。
できるだけ目線を落とさずに、何とか目を見て話そう。この状況で視線を下げるのは危険だ。
「小さいのも、好きですよ」
「……最低です」
どうすればいいんだよ……。
「緩奈ちゃん、いつもこんな感じなの?」
「うん。遥奈と結祈はいつも通りよ」
「そっかぁ……」
こっちを見る美莱ちゃんの視線が、なんだか冷たい気がした。こういうのを、ゴミを見る目って言うんだろうか。


「ねぇ、監督」
「ん? どうした?」
隣の結祈が、いきなり抱きついてきた。
薄いシャツ越しに、柔らかな二つの膨らみの間に腕を挟まれる。
「お、おいっ、何してんだよ」
「遥奈はああ言ってたけど、私って、そんなに魅力ないかな……」
何て言いながら、二人きりの時しか見せない、甘えた目を向けてくる。
柔らかい。でかい。近い。いい匂いする。上目遣いやめろって。
様々な思考が理性を侵食していく。
「心配すんな。充分魅力的だよ」
空いている左手で、彼女の頭を優しく撫でてやると、彼女は満足そうな微笑みを浮かべた。
すると、突如後ろから腕が伸びてきて、その感触をじっくりと味わうことなく引き剥がされてしまう。
「この無駄な脂肪が何だって言うのよ〜!」
「ちょっ、絢郁っ! やめっ!」
絢郁が後ろから両手を回して、結祈の胸を揉みしだいていた。
さっき結祈が言っていた、貧乳の僻みってやつなのだろうか。そんなことを口にしたらどうなるかわかったもんではないが。
だが、これは見ているだけでも毒だな。もちろん、目の保養にはなるが。


「こんばんは」
「どうも〜」
そんなところへ、綾羽さんと結衣、美憂ちゃんの三人がやっと現れた。
「何してんの? 楽しそうじゃん」
「結衣さんもあんな風にされたいんですか?」
緩奈ちゃんの隣に座った結衣に、緩奈ちゃんは淡々と言葉を紡いだ。
「あはっ、さすがにあれはカンベンかな」
美憂ちゃんは美莱ちゃんの隣、綾羽さんは絢郁の隣に座って、ようやく全員が揃う。
この間、実に四十分であった。もっと長かったように感じるのはオレだけだろうか。


「全員そろったことだし、ミーティングを始めていいか?」
「やっと、ですね」
ホントだよ……。緩奈ちゃんはまともで本当に助かっている。
「えー」
「えー、じゃない」
まったく、どっちが姉なんだか……。

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