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冥界の王が転生してヤンデレ嫁から逃げ…られなかった件。

エルトベーレ

最終話　玉座の間

生き物でないものを生きているものに変えることはできないが、死んだ人間に変えることはできる。
神の権能を使い、簡単な人形をオレの死体に変え、この世界における羽出崇馬は死んだんだ。


ペルセポネからもらったザクロの実は、彼女と同じく、四つ食べた。
こうすれば、ずっと彼女といられる。
四ヶ月は冥府で。残りの八ヶ月は冥府と地上とを行ったり来たりして。天界のデメテルの元を訪ねてもいい。


オレは隠れ兜を使って自分の葬儀を見届けたあと、ゲートをくぐって冥府へ下りた。


階段を降りている間、何も考えたくなかった。両親のすすり泣く声。蘭の泣きじゃくる声。
聞きたくなかった。
でも、聞かないわけにはいかなかった。
それが、せめてもけじめのつもりだからだ。


蘭にだけは、本当のことを言っても良かった。
だけど、あいつはもう神の加護を受けていない。ペルセポネの呪詛でオレとの契約も解除された。結局、オレが彼女から預かったものはわからずじまいだったけれど、それももう彼女に返せた。
あいつは普通の人間だ。普通の人生を送るべきだ。それが、あいつ自身のためでもある。


番犬を撫でて少し戯れた後、宮殿にたどり着いた。
玉座の間の扉を開ければ、待っていてくれるやつがいる。
「ただいま」
「おかえりなさい、ハデス様ぁっ！」
結局オレは、ペルセポネから離れることはできなかったな。

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