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冥界の王が転生してヤンデレ嫁から逃げ…られなかった件。

エルトベーレ

十九話 嘆きの季節

『もうすぐだな……』
唐突に、ハデス様の声が聞こえた。


何がですか?
『もうすぐ冬になる。ペルセポネが地上にいられるのも、あとわずかだ』
そういえば、もうそんな時期か。このまま楽しい時がずっと続くわけじゃない。わかってはいたけど、受け入れがたいものだな。


……どうするんですか?
『私は充分外の世界を楽しめたし、お前という人格に出会えてよかった。お前の肉体は冥府に属していない。どうするかは、その身体の持ち主が決めることだ』
オレに……任せてくれるんですか?
『……そういうことだ』


ハデス様としては、ペルセポネといたいはず。オレも、ペルセポネといたい。
でも、残された家族は……? 蘭は……?


オレは意図せず神になった。いや、突然なったわけじゃない。神の依り代になるべくして生まれてきたんだ。
オレはただの器に過ぎない。ハデス様が地上を観覧し、一時的にペルセポネ様から身を隠すための器に過ぎなかったはずだ。
そんなオレが、地上に残り、人間として生きるのか。はたまた冥府に下り、神として生きるのかを選んでよいと言われている。
ふつうの人間には選べるはずもない、究極の選択だ。


オレが結論を出せずにいると、そんなことはつゆ知らないペルセポネがオレに抱き付いてきた。
「大丈夫ですかぁ? なんだか顔色が優れないようですけれども」
「大丈夫だよ。心配してくれてありがとうな」
彼女はえへへっと笑って、羽出崇馬と初めて会ったときのように、すりすりしてくる。


ああ、そうだ。オレはもう羽出崇馬じゃない。
ハデス様とオレとの記憶の共有は完了したし、オレはもはやハデスでもあるんだ。
二柱一対とか、三位一体とかっていうのも珍しくない。
この肉体に、オレという人格と、ハデスという神格の二つを宿した新たな神でもあるわけだ。


ただ、ペルセポネを愛しているという事実だけは変わらない。


「ねえ、スーマ様」
「ハデス様でいいよ」
なぜかペルセポネの表情はぱあっと明るくなり、彼女は元気よくオレの名を呼んだ。
「ハデス様ぁっ♪」
「どうした?」
「ふふっ、何でもないですぅ。呼んでみただけですよぉ」
まったく、しょうがないやつだな。

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