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冥界の王が転生してヤンデレ嫁から逃げ…られなかった件。

エルトベーレ

十七話 母なる豊穣神

『デメテルがいるのは天界だ。ゲートを作って行くぞ』
ゲート、というのは以前ペルセポネがここと冥府をつなげた時の扉のようなもののこと。
デメテルの居場所を思い浮かべて……よし。
つるが巻き付いた木の扉が出来上がった。オレはそれをくぐり抜け、天界への階段を上る。


階段の上は庭園になっていて、様々な植物の楽園が広がっていた。その中に、泣きじゃくる娘とそれを慰める母の姿があった。
庭園に踏み入れると、デメテルは鋭い視線をこちらに向ける。
「ハデス、やはりあなたにこの子を渡すわけにはいかないわ」
デメテルは娘のことに関しては、大変怒りやすい。拐って強引に妻にしようとした時もそうだった。


「ゼウスの仕業なんだ。今回はオレも何も聞いていないんだ。あんたの方は何か聞いてはいないか?」
「何も聞いてないわよ。まぁ、確かにあいつは狡猾な男だけどさ」
「オレに新しい嫁をやるとか言ってるんだ。その代わりにコレーをお前に返すとか言ってきたりはしなかったか?」
それだったら辻褄も合うし、納得もいく。そうでないとしたら、あいつの企みはわからない。
「ないわ。そうだったら嬉しかったんだけどね」
「そうか……。悪いがコレーを手放す気はない。返してくれないか、ペルセポネを」
デメテルはその腕の中に抱えた娘の顔をじっと見つめる。
コレーはその眼差しを、力強く見つめ返した。
「あんた、本当にあんな奴でいいのかい?」
「……うん。大好きなの。……さっきのことは、内緒にしてね?」
デメテルは仕方ないといった様子で、コレーを放した。
すると、ペルセポネはオレの方へ一目散に駆けてくる。オレはそんな彼女を抱き留め、ぎゅっと抱きしめた。
「ごめんな。もう放したりしないよ」
「うん。……ずっと、ずぅーっと一緒だよ」


オレ達はデメテルに見送られながら、もと来たゲートをくぐって地上に戻る。


それにしても、ゼウスは一体何を考えてるんだ?


ところがゆっくり考えている暇もなく、不意にゲートが開かれ、オレとペルセポネはまたしてもどこか別の空間へ引き込まれていった。


視界に映るのは、白銀の甲冑、軽装備の鎧に鋭い槍、そして彼女の代名詞とも言える、アイギスの盾。たたずむその姿からは、戦慄すら覚える。
新しい嫁候補って……。
「アテナ……!?」

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