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冥界の王が転生してヤンデレ嫁から逃げ…られなかった件。

エルトベーレ

十六話 災禍をもたらす雷神

「本当にごめんなさい……。スーマ様を傷つけるつもりじゃ……」
オレはペルセポネの治癒を受けながら、彼女の頭を撫でる。
「もういいから、今度からはこんな真似するなよ?」
「はい……」
それでもまだ彼女は吹っ切れず、しばらく落ち込んだままだった。
「蘭も、とりあえず今日は帰ろう」
「あ、うん。じゃあ、くれぐれも気をつけてね」
少しばかり蘭から敵意がなくなっているのも、太陽神の加護がなくなったからなのだろうか。



その夜、天気予報では晴れると言っていたのに、突然の雷鳴。風も強く、雨も降りだした。
「スーマ様、これ……」
「何者かの仕業ってことか?」
「そう、私の仕業だよ」
ふと気が付けば、背後にやたら筋肉質なおじいさんが立っていた。この姿は、ハデス様の記憶で見たことがあった。
「ゼ、ゼウス様っ!?」
「様はいらんよ、兄上」
そうか、ハデス様はゼウス様の兄に当たるんだったな。といっても、今のオレが兄上と呼ばれるのは何だか変な感じだが。


「おやおや、もう見つかっちまったのか。まぁそれはいい」
彼はペルセポネを一瞥して、またすぐにオレの方へ視線を移した。
そういえば、ハデス様を冥界から出す、つまり転生させる手助けをしたのはゼウス様だったな。
「お前がペルセポネが付きまとってきてウザいと言うから、新しい嫁候補を用意した。お前にとっても申し分ない相手だと思うぞ。近々見えるだろう。その時はよろしく頼む。そいじゃ」
言いたいことを言いたいだけ言って、ゼウス様は煙のように消えてしまった。とんでもない爆弾を残して。
……そんなこと言ったのか?
『断じて言ってない』
しかし、目の前のペルセポネはふるふると身体を震わせて、今にも泣きそうになっていた。
「ペ、ペルセポネ、付きまとってきてウザいだなんて言ってない。あいつが勝手に言ってるだけだ」
彼女は聞く耳を持とうとしない。
「新しい嫁候補なんて、どんな奴が来ても必ず追い返す。オレはお前が……」
「バカぁっ!!」
ペルセポネは大鎌でオレを斬りつけ、窓から外へ飛び出して行ってしまった。


……どうします?
オレは自分で治癒をかけつつ、ハデス様に相談する。
『追いかけたいところだが、今のあいつじゃ、まともに取り合ってくれないだろう』
お母さんに頼みますか?
『下手に事の次第を話せば殺されるぞ』
新しい嫁候補って、誰だと思います? もしかしたら、何か策略があるかもしれませんが。
『もしかしなくてもそうだろう。あいつのことだからな。処女神はないから、アフロディーテあたりじゃないか?』
こういうときにペルセポネが縋りそうなところって……。
デメテルお母さん……だろうな』
嫁の親に謝りに行くことになるとは……。

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