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冥界の王が転生してヤンデレ嫁から逃げ…られなかった件。

エルトベーレ

十話 冥府下り

「スーマ様、冥界へ行きましょう」


今日のペルセポネはいつになく真面目だった。少女ではなく、冥府の女王としての風格を遺憾なく漂わせている。
「そう言われても、どうやって?」
「こうやって、です」
ペルセポネが指で宙に扉を描くと、黒い霧がかった扉がそこに現れた。
その扉をくぐり抜けると、暗い空間に階段だけが浮いていた。ペルセポネは躊躇いもなく降りていくので、オレもその後を追う。


「現在、わたしとハデス様の代わりに冥府の業務を執り行っているヘカテーから、言伝がありました。なんでも大規模な戦争があったようで、少しだけでもお力をお貸し願いたいとのことです」
一応、冥府の仕事は代わりに任せていたのか。そうしないと死者が困るしな。
でも、冥府の仕事って何をすれば……。
『死者を裁くのだ。冥府には死者の罪に応じた行き先がある。死者の生前の行いからそれを判断するのが主な仕事だ』
ハデス様、久しぶりですね。そんな仕事、オレにできますかね……。
『だが、なにも心配することはない。宮殿に着けば、三人の裁判官もいるし、ヘカテーという頼りになる神もいる。それに、ペルセポネに頼ってもいい』
これまでのペルセポネを見てると、とても頼り甲斐があるようには見えないんですが。
『あれでも冥府の女王だ。冥府においては、今のお前よりははるかに知識もある』
言われてみれば、たしかにそうか。



しばらく進むと、荒涼とした洋風の城のようなものが見えてきた。恐らく、あれが宮殿だろう。
その入り口には、三頭の大きな黒い犬が待ち構えている。オレも名前くらいは知っている。地獄の番犬、ケルベロスだ。
「ケルちゃ〜ん、久しぶり♪」
ペルセポネの呼びかけに、犬らしく尻尾を振って戯れてくる。うわぁ……地獄の番犬さん、イメージぶち壊しなんだけど。
ケルベロスはオレに対しても、同じように戯れてきた。
「あ、おい、やめろって」
こいつもオレがハデス様だって思っているらしい。


門をくぐって宮殿に入ると、そこにはあふれんばかりの亡者が詰めかけていた。
「すごい数……。ハデス様、急ぎましょう」


宮殿の奥、玉座の間に着くと、妙齢の女性と三人のおっさんが慌ただしく亡者の相手をしていた。
「ああ、ハデス様、ペルセポネ様。おかえりなさいませ」
「作業の進捗状況は?」
ペルセポネは手慣れたように玉座に座り、書類に目を通し始める。
「確認できるだけで、十パーセントほどかと。さらに三十パーセントほど増える見込みでございます」
「わかった。こっちにもまわして」
いつもの様子が嘘のように、今のペルセポネは冥府の女王として申し分ない威厳を備えていた。

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