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冥界の王が転生してヤンデレ嫁から逃げ…られなかった件。

エルトベーレ

五話 冥界の王

かくして、オレとペルセポネ様との同棲生活が始まった。
うちの両親には、ペルセポネの記憶操作により、彼女はうちで預かっているオレの従兄妹ということになっている。


「ハデス様は、あのような人間の食事などお摂りにならなくても生きられますのに……」
「オレは確かにハデスなのかもしれないけど、今は羽出崇馬すうまって名前があるんだよ」
「スーマ? って、お呼びすればいいのですか? ハデス様」
だからハデス様はやめろって言ってるだろ。
「そうだよ。ペルセポネ、一回まわって、にゃんって言って?」
ペルセポネは戸惑いながらも、言う通り、その場でくるりと回る。と、ふわっと黒い髪と白いスカートが広がった。
「にゃん♪」
上目遣いで甘えたように、そしてなおかつ少し恥じらいをもって言ってくれた。完璧だ。
どうやらこの子は、オレの言うことは何でも聞いてくれるみたいだ。
『あんまりペルセポネを辱めるなよ? しかしまぁ、お前の発想には脱帽だよ』
それは褒めていただいているんだろうか。
『もちろんだ。あいつにあんな可愛い真似ができるとは思わなかった』
ハデス様も大概、ペルセポネが好きなんだな。だからかな、オレもペルセポネがこんなに可愛く、愛おしく感じるのは。
「ありがとう。かわいいよ」
撫でてやると、嬉しそうに満面の笑みを見せた。



翌朝、目が覚めると、隣にはまだ穏やかな寝息を立てているペルセポネの姿があった。
オレは彼女を起こさないようにそっと支度をして、学校へ向かった。


それにしても、どうしてまた転生なんて?
『私はいつも冥界に篭っていたからな。外の世界を見てみたかったんだ。あと、ペルセポネの愛に疲れたというのも少しはあったが』
少しっていうか、そっちがメインだと思っていたけど。
『拐ったときは、あんな子だと思わなかったんだ……』
拐ったのかよ……。
『略奪婚だった。でも、私はあの子を愛しているし、あの子も私を愛してくれている』
ふたりの生活の様子は、オレも夢で見させてもらっていたから知っている。とは言え、あれは幸せなのか……とも思ったものだ。


「あ、おはよう、羽出くん」
「おはよう、笠戸さん」
昇降口で会って、一緒に教室まで向かう。
こうしていると、昨日の出来事が嘘のようだ。


『その子のこと、ペルセポネに勘付かれないようにな』
ああ、確かに、見つかったら弁明する前に粛清されそうだ。
そう言えば、今頃ペルセポネはどうしてるだろうか。

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