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冥界の王が転生してヤンデレ嫁から逃げ…られなかった件。

エルトベーレ

四話 意識の覚醒

ああ……いい匂いがする。花畑に寝転んでいるような、そんな気分になる。温かい……柔らか……って、これ……。
目を開けてみると、思った通りだった。
「ん……ハデス様、もっとお触りなさっても……いいですよ?」
さっきまでの甘い声とは違う、風のそよぐような声が、オレの耳をくすぐる。


「だからオレはハデスじゃないって」
すると、彼女はオレの首元を嗅ぎ回す。
「おかしいですね……。匂いは確かにハデス様なのに……」
匂いでわかるのかよ……。
「ハデス様でないなら、あなたは何なのです? わたしのハデス様をどこにやったんですか?」
あ……この展開、ヤバいやつだ。
ペルセポネは再び鎌を取り出し、オレの首筋に当てる。


『こいつの意識を削ぐんだ』
ふと、頭の中に声が響いた。
意識を削ぐったって、どうやって……。
『私の言うままに強く念じながら唱えてみろ』
何だかわからないが、今はこの声に従ってみるしかない。そうしないと、今度こそ首を切り落とされる。
「“眠れ”」
「あ……んぅ……なんで……」
ペルセポネは意識を失ってオレの胸に倒れこんだ。
すると、オレの意識も沈んでいく。


『済まなかった。ここまで来るのに時間がかかってしまったのだ』
さっきの声の主だ。声だけが響いている。
この感じ、オレには覚えがあった。あのいつも見る夢と同じ感覚なのだ。
『そうだ。これはお前の意識に直接干渉している』
「あんたはもしかして、ハデス、なのか?」
『その通りだ。訳あって、お前の意識の中に住まわせてもらっている』
訳って言っても、このペルセポネを見てればなんとなくわかるけど。


『私は、私という神格をお前に移植し、生まれ直すことに成功したのだ。それが今のお前だ。お前は私であり、私はお前なのだ』
「転生……みたいなものか?」
『神である私は死ぬことはないが、そう考えてもらって差し支えない』
だからペルセポネはオレをハデスだと思ったのか……。


「あ、でもペルセポネはどうするんだ? さっき勢いでおっぱい触っちゃったけど、後で粛清されたりする?」
ペルセポネはああ見えて人妻なんだよな。あ、神妻って言った方がいいのか?
『案ずるな。お前と私は感覚を共有している』
「ええと、つまり、オレがペルセポネのおっぱいを揉むと、あんたもその感触を味わえる、と?」
『そういうことだ』
なるほど。
『ペルセポネはある程度お前の好きにしても構わん。お前が私だとバレてしまった以上、あいつはしばらくここに居座るだろうからな』
いやいや、マジもんの女神様だぞ。……いいのだろうか。

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