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冥界の王が転生してヤンデレ嫁から逃げ…られなかった件。

エルトベーレ

三話 冥府魔道の女王

「って、いってぇ!!」
斬られたところから血が噴き出してるけど、なぜか全然死ぬ気がしない。痛いは痛いけど。


「うふふっ、そう簡単に死ぬわけないじゃないですかぁ。ハデス様は神なんですから」
「神って、オレが……? だから、君は誰なの?」
確かに目の前の少女は白い布をくっつけただけみたいな、天女の羽衣のような服を着ている。見た目だけなら神っぽいと言えなくもない。
何より今しがたオレを切り裂いたはずの鎌も、どこかにいってしまっているしな。


「……本当に、覚えていらっしゃらないのですか?」
彼女が寂しそうな眼差しを向けてくる。
覚えている……? この子の名前、オレは知っているのか?
「ペ……ルセ……ポネ……?」
言葉が自然に浮かんできた。それが、そのまま口をついて出た。
「そうですっ! もう、覚えているじゃありませんかぁ。貴方様のペルセポネですよぉ♪」
またしても抱きつかれてすりすりされる。
それにしても、どうしてこの子の名前を……。


「っていうか、血止まらないんだけど」
「えっ!? な、なんでっ、どうしてっ?!」
ペルセポネが慌て出す様子からすると、これはもしかしてヤバいんじゃないか?
今度こそ、オレ、死ぬのか……?


「これをお飲みください! 早くっ!」
ペルセポネが懐から取り出したのは、栄養ドリンクでも入っていそうな小ぶりな瓶。
彼女があまりにも必死だったので、中身が何かとかは気にせずに言われるがまま、それを一気に飲み干した。
う……なんだこれ。甘ったるい。しかも、なんか身体が熱くなって……。


「よかったぁ……。こちらにいる間、ネクタルを摂取しておられなかったのですね。心配しちゃいましたよぉ」
「殺しかけたのは、ペルセポネの方だけどね」
「それは……! ごめんなさい……」
しょんぼりしてしまった。かわいい。って、そうじゃなくて。
「それで、ペルセポネはどうしてここに?」
「どうしてって、ハデス様がいなくなられて、冥界はもうパニックだったんですよ?!」
……あー、ハデスって、もしかしてあのハデスなのか? ギリシャ神話の冥界の王の。
冥界の王がいなくなってパニックなのはわかるけど、それで女王であるペルセポネさんまで来ちゃって、冥界は大丈夫なの?


「わたしだって、寂しくて……。間違ってふたりほど冥界送りにしちゃいました、えへっ☆」
えへっ、じゃねぇよ。それで済まされないだろ。
「とにかく……オレはハデスじゃ……」
そう言いかけると、意識が朦朧として、オレは彼女の胸の中に倒れこんだ。

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