異世界召喚に巻き込まれたんだが、勇者がかなり弱くて人生詰んだ。

ノベルバユーザー210019

014 二人で世界を狙おう

「……ステラ。被験体の様子は?」「はい…オールグリーンです、暴れる兆候もなく先程までの奇声も漏れておりません」「そうか……よくやった。よくやったよ、俺もお前も…」「は、い…ケンジ様。わた…私達はやり遂げたんです」
同時に抱き合い、激しく涙を流しあう。
俺たちは長期にわたる格闘の末、完璧な縛り方を編み出し、尚且つ完璧な消音を実現させる口への布のツッコミ方を探し出したんだ。
何度も幼馴染をきつく縛り付ける事に嫌悪感を覚え逃げ出したくなった。それでも隣で涙を流しながらも文句一つ言わずに俺の隣で、目前の物を成し遂げようとするステラの献身さに俺は感化されたんだ、そして俺は気付いたんだ。
ーーこいつと一緒に世界を目指したいって。
俺たちならきっといい縛リストになれる。なんたってあの勇者を縛って見せたんだ。俺たちのデビュー戦にはもってこいの事案だった、そう考えれば心も軽い。
「ステラ。俺と、俺と死ぬまで……」「えっ……ええっ!?そそそ、そのっそんな…いきなr」「死ぬまで一緒に縛リストを極めよう。」「………は、い?」

女性にガチで殴られるのは初めての体験だった。
ーーーーー
「…いや、すまんな。平気なように見えてさ俺も知らんうちにだいぶメンタルやられてたっぽいわ、てへぺろ」「どうせ、どうせそんな事だろうとは思いましたよ…?けれど、少しくらい夢見せてくれたって……」「あに、ぶつくさいってんだよ馬鹿たれ子」「もーっ!バカは禁止ですよぉっ!」
取り敢えず俺たちはタクトをあいつの部屋のベッドに放置し、俺の部屋へと退避している。
真面目に考察したんだけれど、ただイカれた人間見ただけでここまで確実に関わった人間まで感化されて錯乱されちまうなんて普通ありえねぇと思うんだ。
それもさ、一回あいつが死んだっていう衝撃を受けている俺からしたらメンタル面の免疫は絶対に常人よりある訳で。
あのデスペナルティには確実にサイレントアビリティみたいなもんが作用してるね。何てったってここまでのクソバナシだ、この程度驚きもしない。
「なぁ、ステラ。状態異常の回復魔法とかないか?」「えぇ、一応ある分にはありますが…タクト様に掛けられた呪い紛いの物は流石に解除しかねます」「ああ、いやいいんだ。俺ちょっと1もっかいあっち行ってくるからさ、10分後に迎えに来て。ほんで、その回復魔法使ってみてくれ」「えっ?ちょっとケンジ様っ!……もうっ!」
ーーガチャン
「……おう、タクト。見るも無残な姿だなぁ…いや、まぁ俺らがやったんだけどさ、これ。」
改めて自分達の成した所業を目の当たりにするとあまりの絵面の悪さにかなり引いた。
「そ、それにしたって随分大人しいな。やっぱり声が出ないのが効いたか?」
若干身体が動いた気がする、意思疎通はほぼ不可能だと断定しているためこいつが俺の言葉に反応するとは思えないんだが、野生的なアレでニュアンスくらいなら理解していてもおかしくはないよな。
「さて……どれくらいコイツを見てりゃあ頭が狂っちまうのかここで確かめときたいなぁ」
時計はこまめに見ておこう、幸い頭がおかしなった時の記憶はしっかりと残っているからな。
ーー5分経過。
…なんかすげぇこっち見てるな。何だその虚ろな目は。確かにそんな格好してりゃ惨めだろうけど、それにしたって……
「…それにしても完璧なバインディング……。人権を無視した卑劣な行為ながら其処には確かに其処には確かな美しさがあった……嗚呼やはり俺達なら世界を目指せるよステラ……」
ーーーーー
「ま、まだ7分だけど行ってもいいでしょうかっ」
相変わらず隣の部屋から物音が聞こえる事はありまさん。タクト様もケンジ様も大人しくはしていらっしゃるようですが、一体ケンジ様は何を確かめようとしているのでしょう?
「ん〜っもうダメです、行きましょうっ!」
ーーガチャン
「ケンジ様ーー」「ステラッ!?嗚呼、神様……貴方の慈悲に感謝します…。ステラッ!」ーーガバァッ!「ひぁっ!?ちょ、ちょっと!なんですかっ!?」
ち、ちちち近いですっケンジ様近いっ!0距離はちょっと心臓に悪いですよぉっ!
「ステラ……俺と一緒に、世界を狙おう。」「………また、ですか。」
いっそ攻撃魔術をぶつけてやりたい気分ですけれど…ケンジ様はタクト様ほど頑丈ではありませんので言われていたように回復魔術を使ってみましょう。
ーーキュアっ!
ーーーーー
「ステ…あ?ああ…8分くらいか。」「と、とりあえず離れてくれます…か?」
ん?おお、近いな確かに、胸が当たってら。
「あと5分我慢してくれこれは大事な事だ」「……なんだか、凄く寒気がするんですけれど、へ、へんな事考えているんじゃありませんよね!」
何を人聞きの悪い事を!胸は俺たち男子の宝だぞっ!これを逃せば俺はいつこの感触を味わえるかわかんないっていうのにそれを、それを真剣にならずしていつなればいい?
ーー今でしょっ!
「頼む。これは、大事な事なんだ。とても。そう、とっても大事な、大事な大事なんや」「もう言ってる事がめちゃくちゃですよっ!いいから早くっ!離れてくだ、さいっ!」「あぁっ!?」「も、もう。な、なんなんですかぁ…」「いや、なんでもねぇわ。もう済んだ事だし」
あーあ、短い夢でした。なかなかのものをお持ちで。
「…なんか、すごく不快な気がします……!」「そりゃあれだろ、タクトだろ。」「ひ、否定はしませんが……」
非エロな男子がいるなら逆に連れて来いって話で。まぁ、それは置いといて時刻は6時、じきにシーリスが夕食を運んでくるはずだから俺達もそろそろあっちに戻るべきだろう、語りたい事もあるしな。
「まぁ取り敢えずあっちに戻るぞ、ここに長居すると色々とまずい。」「は、はいっ!」
ーーーーー  ーーコンコンッ
『ケンジ様、御夕食をお持ちいたしましたので失礼しても宜しいでしょうか』「おう、入ってくれ」「失礼します。あら、お嬢様……お楽しみでしたか?」「なんでそうなる」「ち、違いますっ!」「乙女の勘です。タクト様はおられないのですか?」「あー、なんか今日はもうご飯良いってさ。」「まぁ…もし体調が優れないのであれば私がおつきしますが」「はっ何それ、寧ろ俺と添い寝して」「では、準備が出来次第お邪魔いたします」
ーーまじかよ
「ちょ、ちょちょちょっと!何を言っているのですか貴方はっ!」「あ、いやその冗談なんで……そ、添い寝とかレベル高いんで大丈夫です」「あら……それは残念です」「残念がらないのっ!」
くっ……!踏み込めない自分が憎い…!しかしこれでいい、いいんだ俺は正しい事をしている!
「ふふ…それでは、何かありましたらお呼び下さい。」
ーーガチャン 
「はぁ……ケンジ様…?シーリスにへんな事したら私許しませんからねっ!」「けちんぼかよ」「そういう事ではなくっ!」
まぁそれは置いといてだ、ちいと話を戻そうか。
ーーーーー
「……それで、8分ほど同じ場所にいると精神が犯される、という事ですか?」「まぁ、そうなっちゃう。」「では、あの方がああなってしまうたびに私達も頭がおかしくなる可能性があるんですね……。」
まぁ、そういうことなんですよねぇ。俺の制限時間は8分。それに効力も個人で違うんだろうな、俺が切れる兆しがなくともステラが先に切れていたし。その差がどこで付いてるかは現段階では推測のしようがない。考えるだけ無駄であろう。
「ふわぁ〜…ちょっと疲れたなぁ、今何時?」「20時過ぎ、ですね。ケンジ様、私起きていますから22時まで一度お休みになられて構いませんよ」「んー…うん、頼むわちょっと疲れた……」「あら…もう寝たんですか?……ふふ、寝ている時は可愛らしいんですね……ふわぁ……すぅ…」
ーーーーー
ーー22時 
ービクゥンッ「ンッー!?んっー!ンンッ!ンッ〜!?」
縛リスト二人による完璧な仕事により、彼の声は外に漏れることはなく、そして絶対なる拘束は解ける事をしらない。
ーー少年は考える事をやめた。
ーーーーー
「すぅ…すぅ……」「すぅ…ふふ……」
ベッドに寝転がる少年とベッドに寄りかかる少女はその日目覚めることはなかった。






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