創造神で破壊神な俺がケモミミを救う
第61話
「大地さん・・・・」
ルルは大地が戦っている方角から現れた漆黒の花火を見て、戦闘中にも関わらずその方角を眺めていた。
「よそ見とは舐められたものですね。」
ルルの相手をしている男はルルが自分に集中していないことに少しの苛立ちを見せる。
大地とアーヴが戦闘を開始した頃、メリアとルルが担当している西南の城門前でも帝国兵との戦闘が開始されていた。
戦闘が始まってすぐ、メリアは宮廷魔法師のゼルターを見つけると、ルルに城門の守りを任せてゼルターのいる場所へと行ってしまっていた。
メリアから城門の守りを任されたルルは、城門を破壊しようと攻めてきた生体兵器開発局第六室長であるジェイコフとの戦闘の最中であった。
ジェイコフはよそ見をしているルルへと軟体動物のように変異させた両腕を鞭のように伸ばして叩きこんでくる。
ジェイコフの殺気に気付いたルルはすかさず身体をひねりながらジェイコフの腕に銃弾を撃ち込み、ジェイコフの両腕を弾いていく。
さっきから両手首を的確に撃っているのにどうしてこの人は傷一つ付いていないの・・・?
ルルは銃弾を当てているにめ関わらず、ジェイコフの両腕が出血どころか傷一つ付いていないことに疑問を感じていた。
ジェイコフとの戦闘が始まってからルルは百発百中ともいえる精度でジェイコフに銃弾を浴びせていた。
しかしジェイコフの両腕は銃弾をもろともせず、ルルの放った全ての銃弾はその両腕により防がれていた。
いくら攻撃してもダメージを与えれないことにルルが怪訝そうな表情を浮かべていると、ジェイコフは自身の腕を見せびらかしながらルルにその秘密を語り出した。
「この腕が気になりますか? この腕は私の第六室の研究テーマである部分魔獣化を施したものなのですよ。」
「部分魔獣化?」
「昔人間に魔獣の遺伝子を組み込んで生体兵器を作ろうとしたことは知っていますね? その失敗作があなた達獣人だ。実はあの研究はまだ続いているんですよ。」
「まだあんな酷い事ことをしているんですか・・・」
ルルは帝国が自分達を作り出した非人道的な実験をまだ行っていることを知り、怒りに任せたようにマガジンに入っている銃弾を全てジェイコフに打ち込む。
ジェイコフは慌てる様子もなく伸ばした両腕を全身に巻き付け、両腕で全身を覆う。
ルルの放った銃弾が全身に巻き付かせたジェイコフの腕に着弾していくが、腕に着弾した銃弾はそのまま吸い込まれていくようにその姿を消していく。
「ほっほっほ! あなたの武器は素晴らしいものだ。しかし私の両腕に物理攻撃は効きませんよ。」
全身に巻き付かせた腕を元に戻すと得意気に高笑いをあげるジェイコフ。
ジェイコフの腕にはある特殊な魔獣の遺伝子が組み込まれていた。
その魔獣とは犬斗が青龍と名付けて使役している魔獣スレイクであった。
スレイクの特徴は物理攻撃の完全無効化である。
ジェイコフの第六研究室では身体の一部を魔獣化させるテーマとしており、ジェイコフは自らの身体を実験体とし、スレイクの遺伝子との融合を果たしていた。
つまり現在ジェイコフの両腕はいかなる物理攻撃も無効化出来るようになっていた。
銃弾による攻撃が効かないと分かったルルは銃剣を腰のホルスターに戻すと、今度は水魔法による攻撃を仕掛ける。
ルルは自分の周囲に水弾が展開させると、それをジェイコフに向けて発射させる。
「魔法なら私を倒せると?  浅はかな考えですな。」
ジェイコフは両腕を前に掲げるとルルと同じ水弾を展開させて迎え撃つ。
両者の水弾が激しく衝突を繰り返すが、ジェイコフの展開させた水弾はルルの展開した物に比べ一回り大きかった。
「スレインは魔力に長けた魔獣。その魔獣の遺伝子を組み込んだ私の魔力があなたに劣る訳ないでしょうが!」
スレインの水弾に徐々に押されてきいき苦しそうな表情を浮かべるルル。
水弾の打ち合いでも敵わないと思ったルルは、銃剣をホルスターから再度引き抜くと、大地から授かった火属性の魔法弾薬をジェイコフに撃った。
「銃弾は効かないと言っているのに・・・」
ジェイコフは呆れた顔をしながら、両腕を全身に巻き付け防御態勢をとる。
ルルの放った小さな赤い閃光は全身に巻き付いた左腕に着弾した。
「ぐっ・・・!」
魔法弾薬が着弾するとジェイコフがくぐもった声をあげた。
全身に巻き付かせた両腕を解き、左腕を押さえ始めるジェイコフ。
押さえた左腕からは少量の血が流れており、ジェイコフは苦悶の表情を浮かべている。
「そうか。 魔法弾薬なら物理攻撃であり、魔法攻撃にもなるんですね!」
ルルは魔法弾薬がジェイコフに通用することに気付くと、大地から事前に渡されていた試作弾薬を装填し、いまだ苦悶の表情を浮かべるジェイコフに放った。
「くっ・・・そんな奥の手を持っていたとは。それなら魔法で防げば良いのです!」
ルルの放った銃弾を防ごうとジェイコフは前方に水の障壁を展開させる。
銃弾がジェイコフの障壁に阻まれようとしたその時。
銃弾が五つに分裂し障壁を避けるように拡散していく。
分裂した銃弾がジェイコフの背後を通過しようとした瞬間、まるで鷲掴みにするように急角度に曲がりジェイコフの背中に突き刺さった。
「んがはっ!」
ジェイコフは背中に走る激痛に思わず四つん這いになる。
五つの銃弾はジェイコフの身体に深く突き刺さり、ジェイコフは口からは血を滲ませる。
「どうやって私の背後を・・・・・?」
ジェイコフは背後からの攻撃の正体がわからず困惑した表情でルルを見つめる。
ルルは四つん這いになったことで大きな隙が生まれたジェイコフに間髪入れずにもう一つの試作弾薬を四発撃ち込む。
「うわぁ! やめろ! 打つな!」
ジェイコフは正体のわからない攻撃に恐怖心を抱くと、全方位の水魔法障壁で自分を囲み、両腕を全身に巻き付け、自分の出来る最強の防御態勢をとった。
「ぐわぁぁぁぁああ!」
しかし無情にもジェイコフからは悲痛の叫び声が挙がった。
スレイク化している両腕には一発ずつ銃弾が着弾しており、着弾跡は大きく腫れ上がっていた。
ルル専用銃剣用弾薬「」猫又&「病猫鬼」
この二つの種類の弾丸は中距離戦闘を得意とするルルの為に作られた特殊弾薬である。
猫又は相手の目の前で一度拡散させ、背後から相手を狙う動きをプログラミングした弾薬になっており、主に敵にダメージを与え隙を作ることを目的とした弾薬である。
一方病猫鬼はアナフィラキシーショックを元にプログラミングを行ったもので、魔法であれ人であれ、二発喰らわせることでその相手を無効化することが出来る弾薬となっている。
猫又で敵の動きで封じ、病猫鬼で敵に止めをさす。
そういったコンセプトで作られた弾薬だったのだが、ルルはまさにそのコンセプト通りに弾薬を使い、ジェイコフに致命傷を与えていた。
ルルは両腕を大きく腫らし、痛みから地面を激しく転げまわっているジェイコフの元へとゆっくりとへと近寄る。
「まだ生きていますか?」
「はぁ・・・ぜぇ・・・助けてくれ・・・」
病猫鬼による重いアレルギー症状により、呼吸もままならない状態になっているジェイコフ。
ルルは既にジェイコフがあと少しの命だと悟ると、ジェイコフから離れ心配していたメリアの元へ向かった。
「助けてくれ・・・置いてかないでくれ・・・」
ジェイコフは去っていくルルの後ろ姿に声を振り絞って懇願する。
しかしその思いは届かずジェイコフはゆっくりと呼吸を止めた。
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