創造神で破壊神な俺がケモミミを救う
第56話
先程まで様々な音に満ちていたはずの戦場は静寂に包まれていた。
魔族の男は西トーム連合軍と東トーム連合軍の駐屯地に満ちていた黒い煙を自身に吸収し始めると、瞬く間に黒い煙は魔族の男に集まり、戦場には何十万ものミイラ化した躯が姿を現す。
「ほう・・・これがこの魔族の能力か。実に良い身体だ。」
魔族の男が愉悦の笑みを浮かべていると、帝国兵を引き連れてバセルダとゼルターが魔族の男に近づいていく。
「おいおい。全く悪趣味な野郎だぜ、お前はよぉ。」
「話には聞いてましたが、寄生魔法というのは魔族にも適用可能なのですね。」
二人は後ろの兵士が警戒している中、臆することなく魔族の男に話しかける。
魔族の男の正体は宮廷魔法師第二位のアーヴであった。
アーヴは自身の研究素体である魔族の死体に寄生魔法を行い、何日もかけてその身体に寄生することで魔族の力を扱えるまでになっていた。
「バセルダにゼルターか。しかしさすがにこの身体を制御するにはもう少し時間が必要なようだ。私はその時が来るまで身体の制御に集中することにする。進軍の指揮はゼルターに任せる。時が来たら教えろ。」
アーヴはゼルターに指揮を任せると、地面に座り込み、瞑想したような状態となって動かなくなった。
ゼルターは面倒くさいことを任されたとばかりに小さいため息をつくと、部下にアーヴの身体を馬車へと運ぶように命令する。
「おい! もうここには用はねぇだろ? 早く行こうぜ!」
バセルダはテーマパークに行く前の子供のようにワクワクした様子で進軍を急かす。
ゼルターは聞き分けのない子供を二人抱えた親のように頭を悩ませた様子を見せると、西の方角へと部下に進軍を命じるのであった。
西トーム連合軍と東トーム連合軍が戦争を開始して程なくした頃。
デールに潜伏していたヘイデンの部下からの報告で戦争が始まったことを知った大地は、戦況の確認やガラン達への指示等で忙しくしていた。
戦争が始まる前になんとかノルヴェス領地の住民の護送を完了させていたのはせめてもの救いだろう。
現在ペンタゴンは一つではなく二つに増やしている。
もう一つのペンタゴンは元あったペンタゴンの西側に隣接されており、西ペンタゴンと中央ペンタゴンと名前の区別をつけている。
上から見るとペンタゴンの城壁が八の字の形になっているのが分かるだろう。
これはノルヴェス領地の住民が獣人との共同生活を嫌がり、仕方なく区画を分けるしかなくなったために作成した物だ。
この時のヘイデンの平謝りっぷりは大地を含め、ルルやガラン等集まっていた獣人達も正直引いていた。
ヘイデンからしたら命の恩人にもあたる獣人達に自分の領民達が無礼をしたのだ。生きた心地がしていなかっただろう。
しかし獣人に対する差別意識なんてあって当然だ。
大地は泣きそうな顔で平謝りを繰り返すヘイデンを何とかなだめてペンタゴン作成に至った。
ヘイデンには現在その西ペンタゴンの統治とノルヴェスの兵士達の指揮を任せている。
王宮にある領主室にて忙しく戦況の把握から指示出しまでルルに手伝ってもらいながら進めていると、ヘイデンが焦った様子で領主室へと入ってくる。
「大地殿! デール領地の方から何やら黒い靄のようなものが発生しています!」
大地はヘイデンの話を聞くと、すぐさま城壁まで向かい、城壁の最上段から東の方角へと目を向ける。
「あれは何だ・・・?」
デールとミッテの境に黒い靄がかかっているのが見える。
デールとミッテの境からデュセオ領地まではかなりの距離があるのだが、この距離でも確認出来るということは相当大規模な靄がデールとミッテを包んでいるだろう。
吸収霧
闇魔法により生成された魔法
生成された霧に触れた者の魔力、能力値を吸収する
吸収した魔力、能力値は術者の魔力、能力値へと変換される
おいおい結構やべぇ魔法使ってるじゃねぇか・・・
大地は靄の正体が何者かの魔法によるものだとインプットにより知り、帝国の介入が始まったのではないかと推測していた。
その後城壁から吸収霧を眺めながら様子を窺っていると、ヘイデンが放っていたもう一人の密偵が焦った様子で大地とヘイデンの元までくると、息を切らしながら報告を行う。
「はぁはぁ・・・帝国兵が密林より出現!その数推定十万!」
デールに潜んでいた最後の部下の無事を確認しヘイデンは安堵の表情を浮かべる。
大地はヘイデンの部下からの報告で、吸収霧が帝国の攻撃であると確信すると、すぐさま主要メンバーに領主室に集まるように念話を飛ばし、領主室へと向かった。
会議には主要メンバー達に加えてケンプフとヘイデンも参加していた。
大地はまずデールとミッテの境に出現した吸収霧について帝国による魔法だということも加えて説明する。
「そんな魔法この場で発生させたらいくらペンタゴンでも無理じゃないですか!」
犬斗は狼狽した様子で絶望の表情を見せる。
「アホか。お前の目の前にいる男の事を忘れるな。汚い空気なら綺麗にしてしまえばいい。それに関しては既に手は考えているから安心しろ。」
狼狽える犬斗を子馬鹿にしたような目で見つめる大地。
「そうかさすが大地だな。じゃあ当初の手筈通りに俺達は動けばいいんだな。」
「そうだ。全体の指揮は俺が念話で届けるからそれ以外の動きは前回の会議で言った通り各隊の隊長、副長で判断して動いてくれ。」
「あのさ・・・本当に俺に隊長なんて出来るのか?」
大地とガランが作戦の確認を行おうとした時、横から自信無さげな様子でケンプフが割り込んできた。
実は今回の作戦では五万の隊を五つの隊に分け、それぞれに隊長と副長をつけているのだが、その隊長には犬斗、メリア、ガラン、リリス、そしてケンプフが任命されていた。
ちなみに副長にはゼーレ、ルル、マヒア、ドグマ、フィアが任命されている。
ケンプフはルルにも負けた自分がペンタゴンの命運をかけた戦いに隊長として挑むなんて無理だと言わんばかりに大地の顔を見る。
「ケンプフ・・・理由は言ったろ? マルタの住人は獣人達に助けられという自覚があるから表立って獣人達といざこざは起こしてないが、内心はいまだ獣人に対して大きな溝がある。そんな中隊長に獣人ばかりを起用すれば、面白くは感じないだろ? 兵の士気を下げない為にもお前には隊長をやってもらう他ないんだよ。」
大地の言う通りペンタゴンでは最近獣人ばかりが優遇され、獣人が人間を仕切っていると不満を漏らす人間が出始めていた。
大地は戦争前に獣人と人間が仲違いすることだけは避けたかった。
その時元帝国の密偵でそこそこ実力もあり、人間の兵士達から何気に信頼のあるケンプフに目をつけ隊長に任命した。
結果として人間の兵士達は自分達が信頼しているケンプフが隊長に任命されたことにより、獣人ばかりを優遇しているという声は聞こえなくなった。
こうして兵士達の士気を下げてしまう事態を防ぐことが出来ていた。
「しかし私では力不足だろう・・・」
「はぁその為にお前専用の武具まで作ってやったというのに・・・」
「わかった! やれば良いのだろ!? そのかわり宮廷魔法師とは死んでもやらないからな!」
わざとらしくため息をつきながらお前の為に時間を使ったのにと首を振る大地の姿を見て、ケンプフら半ばやけを起こしたように覚悟を決めた。
「じゃあ俺は吸収霧対策の準備してくるから、みんなこの後の動きの指示は任せたぞ。」
大きな戦争前だというのに何の気負いもなく領主室から出ていく大地。
大地が出て行った後、フィアはこれまで我慢していた緊張を解すように大きく息を吐いた。
「なんで大地君はこんな状況なのにいつも通りなのぉ!」
「大地さんが慌てるとしたらルル絡みぐらいなんでしょうね。」
「あっゼーレ今かなり失礼なこと考えているでしょ・・・?」
ゼーレとルルも大地の去った後、まるで自身の緊張を解こうとするように喋りだす。
「まぁうちの大将が大丈夫そうにしてんだ。この戦いにそれだけの自信があるんだろ? 俺達からしたらこれ以上心強いもんはねえだろ?」
「確かにな。大地殿の期待に応えられるように精進するのみだ。」
ガランとマヒアは緊張感が身体中から染み出しているフィア達を見てクスッと笑みを浮かべながら、声をかける。
その後会議室に呼ばれたメンバーは続々と領主室から出ていくと、各々に課せられた命令遂行の為の最終準備に取り掛かった。
魔族の男は西トーム連合軍と東トーム連合軍の駐屯地に満ちていた黒い煙を自身に吸収し始めると、瞬く間に黒い煙は魔族の男に集まり、戦場には何十万ものミイラ化した躯が姿を現す。
「ほう・・・これがこの魔族の能力か。実に良い身体だ。」
魔族の男が愉悦の笑みを浮かべていると、帝国兵を引き連れてバセルダとゼルターが魔族の男に近づいていく。
「おいおい。全く悪趣味な野郎だぜ、お前はよぉ。」
「話には聞いてましたが、寄生魔法というのは魔族にも適用可能なのですね。」
二人は後ろの兵士が警戒している中、臆することなく魔族の男に話しかける。
魔族の男の正体は宮廷魔法師第二位のアーヴであった。
アーヴは自身の研究素体である魔族の死体に寄生魔法を行い、何日もかけてその身体に寄生することで魔族の力を扱えるまでになっていた。
「バセルダにゼルターか。しかしさすがにこの身体を制御するにはもう少し時間が必要なようだ。私はその時が来るまで身体の制御に集中することにする。進軍の指揮はゼルターに任せる。時が来たら教えろ。」
アーヴはゼルターに指揮を任せると、地面に座り込み、瞑想したような状態となって動かなくなった。
ゼルターは面倒くさいことを任されたとばかりに小さいため息をつくと、部下にアーヴの身体を馬車へと運ぶように命令する。
「おい! もうここには用はねぇだろ? 早く行こうぜ!」
バセルダはテーマパークに行く前の子供のようにワクワクした様子で進軍を急かす。
ゼルターは聞き分けのない子供を二人抱えた親のように頭を悩ませた様子を見せると、西の方角へと部下に進軍を命じるのであった。
西トーム連合軍と東トーム連合軍が戦争を開始して程なくした頃。
デールに潜伏していたヘイデンの部下からの報告で戦争が始まったことを知った大地は、戦況の確認やガラン達への指示等で忙しくしていた。
戦争が始まる前になんとかノルヴェス領地の住民の護送を完了させていたのはせめてもの救いだろう。
現在ペンタゴンは一つではなく二つに増やしている。
もう一つのペンタゴンは元あったペンタゴンの西側に隣接されており、西ペンタゴンと中央ペンタゴンと名前の区別をつけている。
上から見るとペンタゴンの城壁が八の字の形になっているのが分かるだろう。
これはノルヴェス領地の住民が獣人との共同生活を嫌がり、仕方なく区画を分けるしかなくなったために作成した物だ。
この時のヘイデンの平謝りっぷりは大地を含め、ルルやガラン等集まっていた獣人達も正直引いていた。
ヘイデンからしたら命の恩人にもあたる獣人達に自分の領民達が無礼をしたのだ。生きた心地がしていなかっただろう。
しかし獣人に対する差別意識なんてあって当然だ。
大地は泣きそうな顔で平謝りを繰り返すヘイデンを何とかなだめてペンタゴン作成に至った。
ヘイデンには現在その西ペンタゴンの統治とノルヴェスの兵士達の指揮を任せている。
王宮にある領主室にて忙しく戦況の把握から指示出しまでルルに手伝ってもらいながら進めていると、ヘイデンが焦った様子で領主室へと入ってくる。
「大地殿! デール領地の方から何やら黒い靄のようなものが発生しています!」
大地はヘイデンの話を聞くと、すぐさま城壁まで向かい、城壁の最上段から東の方角へと目を向ける。
「あれは何だ・・・?」
デールとミッテの境に黒い靄がかかっているのが見える。
デールとミッテの境からデュセオ領地まではかなりの距離があるのだが、この距離でも確認出来るということは相当大規模な靄がデールとミッテを包んでいるだろう。
吸収霧
闇魔法により生成された魔法
生成された霧に触れた者の魔力、能力値を吸収する
吸収した魔力、能力値は術者の魔力、能力値へと変換される
おいおい結構やべぇ魔法使ってるじゃねぇか・・・
大地は靄の正体が何者かの魔法によるものだとインプットにより知り、帝国の介入が始まったのではないかと推測していた。
その後城壁から吸収霧を眺めながら様子を窺っていると、ヘイデンが放っていたもう一人の密偵が焦った様子で大地とヘイデンの元までくると、息を切らしながら報告を行う。
「はぁはぁ・・・帝国兵が密林より出現!その数推定十万!」
デールに潜んでいた最後の部下の無事を確認しヘイデンは安堵の表情を浮かべる。
大地はヘイデンの部下からの報告で、吸収霧が帝国の攻撃であると確信すると、すぐさま主要メンバーに領主室に集まるように念話を飛ばし、領主室へと向かった。
会議には主要メンバー達に加えてケンプフとヘイデンも参加していた。
大地はまずデールとミッテの境に出現した吸収霧について帝国による魔法だということも加えて説明する。
「そんな魔法この場で発生させたらいくらペンタゴンでも無理じゃないですか!」
犬斗は狼狽した様子で絶望の表情を見せる。
「アホか。お前の目の前にいる男の事を忘れるな。汚い空気なら綺麗にしてしまえばいい。それに関しては既に手は考えているから安心しろ。」
狼狽える犬斗を子馬鹿にしたような目で見つめる大地。
「そうかさすが大地だな。じゃあ当初の手筈通りに俺達は動けばいいんだな。」
「そうだ。全体の指揮は俺が念話で届けるからそれ以外の動きは前回の会議で言った通り各隊の隊長、副長で判断して動いてくれ。」
「あのさ・・・本当に俺に隊長なんて出来るのか?」
大地とガランが作戦の確認を行おうとした時、横から自信無さげな様子でケンプフが割り込んできた。
実は今回の作戦では五万の隊を五つの隊に分け、それぞれに隊長と副長をつけているのだが、その隊長には犬斗、メリア、ガラン、リリス、そしてケンプフが任命されていた。
ちなみに副長にはゼーレ、ルル、マヒア、ドグマ、フィアが任命されている。
ケンプフはルルにも負けた自分がペンタゴンの命運をかけた戦いに隊長として挑むなんて無理だと言わんばかりに大地の顔を見る。
「ケンプフ・・・理由は言ったろ? マルタの住人は獣人達に助けられという自覚があるから表立って獣人達といざこざは起こしてないが、内心はいまだ獣人に対して大きな溝がある。そんな中隊長に獣人ばかりを起用すれば、面白くは感じないだろ? 兵の士気を下げない為にもお前には隊長をやってもらう他ないんだよ。」
大地の言う通りペンタゴンでは最近獣人ばかりが優遇され、獣人が人間を仕切っていると不満を漏らす人間が出始めていた。
大地は戦争前に獣人と人間が仲違いすることだけは避けたかった。
その時元帝国の密偵でそこそこ実力もあり、人間の兵士達から何気に信頼のあるケンプフに目をつけ隊長に任命した。
結果として人間の兵士達は自分達が信頼しているケンプフが隊長に任命されたことにより、獣人ばかりを優遇しているという声は聞こえなくなった。
こうして兵士達の士気を下げてしまう事態を防ぐことが出来ていた。
「しかし私では力不足だろう・・・」
「はぁその為にお前専用の武具まで作ってやったというのに・・・」
「わかった! やれば良いのだろ!? そのかわり宮廷魔法師とは死んでもやらないからな!」
わざとらしくため息をつきながらお前の為に時間を使ったのにと首を振る大地の姿を見て、ケンプフら半ばやけを起こしたように覚悟を決めた。
「じゃあ俺は吸収霧対策の準備してくるから、みんなこの後の動きの指示は任せたぞ。」
大きな戦争前だというのに何の気負いもなく領主室から出ていく大地。
大地が出て行った後、フィアはこれまで我慢していた緊張を解すように大きく息を吐いた。
「なんで大地君はこんな状況なのにいつも通りなのぉ!」
「大地さんが慌てるとしたらルル絡みぐらいなんでしょうね。」
「あっゼーレ今かなり失礼なこと考えているでしょ・・・?」
ゼーレとルルも大地の去った後、まるで自身の緊張を解こうとするように喋りだす。
「まぁうちの大将が大丈夫そうにしてんだ。この戦いにそれだけの自信があるんだろ? 俺達からしたらこれ以上心強いもんはねえだろ?」
「確かにな。大地殿の期待に応えられるように精進するのみだ。」
ガランとマヒアは緊張感が身体中から染み出しているフィア達を見てクスッと笑みを浮かべながら、声をかける。
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