創造神で破壊神な俺がケモミミを救う
第45話
「そんな馬鹿な。私の分析が狂わされるなど・・・」
この一年間犬斗を殺す時の為に情報を集めていたアーヴ。
決して犬斗を侮ることなく、一つひとつ細かいデータまで集めて今回の戦闘に及んだ。
もし大地が犬斗に陵光を渡していなければ、アーヴは犬斗に勝っていただろう。
アーヴはまたしても大地の力を見誤っていた。
先程の魔法で魔力をかなり消費したアーヴは犬斗が魔力を回復してしまったことにより、優勢だった戦況が覆ってしまっている事に気付いた。
このままでは勝てない可能性が高いと察したアーヴは自分の部下が防衛用クーポラを占拠し、加勢に来るまでの時間稼ぎをしようと犬斗に語りかける。
「犬斗。どうやって私の魔法を防いだ?」
「あぁ・・それは大地さんが僕専用に作った鎧のおかげですよ。」
「鎧一つで私の魔法を防いだだと!?」
「なんかこれは僕が受けたダメージを魔力に変えることが出来るみたいです。」
「そんな物を作れるのか大地は・・・」
「僕も原理とかは詳しく聞いてないんでわからないんですけどね。まぁやっぱりあなたは大地さんの力を見誤ってたって事でしょうね。」
アーヴは犬斗の言葉に一瞬顔をしかめるが、時間稼ぎが今の自分のやる事であると気持ちを切り替えると、犬斗から出来る限り大地の情報を得ようと話を続ける。
「大地とは一体何者なんだ? あんな力見た事も聞いた事もない。獣人達の一部もあいつのことを創造神と呼んでいた。本当にあいつは私達と同じ人間なのか?」
「まぁ規格外の力を持っているのは同感ですね。けど神なんかじゃないと思いますよ。獣人を差別して、理不尽に暴力を振るうあなた達帝国の人達よりよっぽど人間らしいですよ。」
「お前! 帝国を愚弄する気か!」
犬斗の帝国を馬鹿にするような物言いに時間稼ぎの事を忘れ、思わず怒りを向けてしまうアー。咄嗟に今優先すべき事を思い出して冷静な様子を装うが、不自然なアーヴの様子を見た犬斗に思惑がばれてしまう。
「もしかして仲間が来るのを待ってるんですか?」
「なっ! 馬鹿を言うな。私が部下に助けを求めるなどありえん。」
「あっ! そうなんですか? てっきり無駄な期待をしているものかと・・」
「無駄な期待?」
「はい。今ガランさん達から帝国兵を撃退したって連絡が入りましたので。」
「なんだと! 私の部隊が敗れた?」
犬斗はアーヴとの会話の最中、ガランからの念話で情報のやりとりをしていた。
犬斗から自分の部下達が獣人達に敗れたことを聞いたアーヴは助けが来ないことを知り、額から冷たい汗を流し出す。
追い詰められたアーヴがこの状況を切り抜ける方法を模索していると、更にアーヴを追い詰める事態が発生してしまう。
「犬斗無事かぁ!」
領主室の扉を蹴り飛ばし部屋に入ってきたのは、ガランを先頭にドグマ、リリス、ゼーレ、フィアの五人だった。
アーヴは入って来たガラン達を見て、本当に自分の部下が敗北したのだと確信に至る。
「そんな馬鹿な! ナーシェンやマリオネスがしくじっただと?」
部下の敗北を受け止められないアーヴにガランとリリスが答える。
「ナーシェンなら片腕飛ばされて逃げてったぞ。」
「そのマリオネスなら今頃雪に埋もれている頃だろう。」
二人は淡々とした様子でナーシェンとマリオネスを撃退したことを話す。
二人の発言を聞いたアーヴは初めて絶体絶命の状況であることに気付いた。
自分の元に部下が助けに来ることはないうえに、アーヴの前には犬斗を筆頭にボレアスの獣人の中で一番強いとされているガラン、大地から訓練を受けていて簡単には侮れないゼーレとフィア、マリオネスを破ったリリス、あり得ない大きさの盾を振り回しているドグマがいる。
自分の置かれている状況がいかに絶望的なのかを理解したアーヴはこれ以上の戦闘は危険だと察し、どうにかしてこの場から離脱する方法はないか考える。
しかしそんな絶望的な状況にあるにも関わらず、この後アーヴにとって更なる絶望が空から降ってくることになった。
アーヴが犬斗の開けたクーポラの穴から逃げ出そうと考えた時、西の方角から大きな騒音が近づいてきているのがわかった。
アーヴはまた犬斗達が何かを仕掛けてきたのだと警戒を強めたが、犬斗達の驚いている顔を見て彼らにとっても想定外の事が起きているのだと知る。
アーヴは犬斗達が混乱している状況を利用し、隙を見て逃げ出そうクーポラに開けられた穴へと走り出す。
「しまった!」
犬斗は隙を付いて逃げ出したアーヴを追おうと走り出した時、騒音の主が正体を表した。
騒音の主は逃げるアーヴに立ち塞がるようにクーポラの壁を突き破ってその姿を犬斗達に晒した。
長細い金属の塊がクーポラの壁から顔を出し、ぶつかった衝撃により大きな地揺れと轟音がクーポラに鳴り響かせる。
隙を突いて逃げようとしていたアーヴは目の前を長細い金属の塊に塞がれ、地揺れに足を取られたことで逃走に失敗してしまう。
クーポラの西側に大穴を開けて入ってきた金属の塊がその動きを停止させると、側面のハッチが開いた。
犬斗達は帝国の兵士が特攻を仕掛けたのだと思い、警戒しながらそのハッチを見つめる。
しかしハッチから出てきた人物を確認した直後犬斗達の顔から自然と笑みがこぼれた。
同じくその人物を確認したアーヴは対照的に焦燥感を顔から滲ませた。
「お前ら無事か!?」
「ゼーレ! フィア!」
ハッチから出てきたのは焦った様子を見せる大地とゼーレ達の名を呼ぶルルであった。後ろには疲れた様子をしたメリアの姿も見える。
大地は犬斗達の無事な姿を確認すると、目線を見慣れない姿のアーヴに向ける。
「お前が黒幕か?」
「なっなっな・・・何でここにいる!? ミッテに行ったのではなかったのか!?」
「おい。こっちの質問に答えろ!」
大地が自分に対して濃密な殺気を放っていることに気付いたアーヴは、人目も気にせず一目散に逃亡を図った。
しかし大地が即座にアーヴの両手足を銃剣で撃ち抜く。手足を撃たれたアーヴは走っている勢いそのままに転倒してしまう。
アーヴは撃たれた手足を無理矢理動かし、無様な姿を晒しながら這うようにして逃げようとするが、そんな状況で逃げ切れるはずもなかった。
大地は犬斗から情報を聞きながらゆっくりとアーヴに近づいていく。
「犬斗こいつが黒幕で間違いないんだよな?」
「はい。このアーヴという人がサイラスさんになりすましていた帝国のスパイです。」
犬斗は大地が来るまでの出来事を全て大地に話した。
話が進む度に大地の額に出ていた青筋が太くなっていく。
話を聞いた大地は目の前で転がっているアーヴに質問を行っていく。
「さて。これだけの事をしてくれたんだ。生きて帰れるとは思ってないよな?」
「私は何も話すつもりはない。殺すなら早く殺せ。」
アーヴは先ほどまでの絶望した表情から一転、清々しい顔をしたまま大地に情報を話すことを拒否する。
大地は口をつぐんでも意味がないのにとため息をつくと、アーヴに対して記憶のインプットを開始した。
アーヴの記憶から得た帝国のトーム侵略作戦の概要は西側と東側の仲間割れを誘って戦争を起こさせ、互いが疲れたところを攻めるというシンプルなものだった。
作戦の決行は今から三か月後となっており、中央領地のミッテの隣にあるクンプト領地に宮廷魔法師第七位のバセルダ。一番東にあり帝国にもっとも近いオステン領地に宮廷魔法師第八位のゼルターという人物が帝国のスパイとしてそこの領主をしているらしい。
またアーヴは初めの頃は大地と犬斗を利用して人体実験に使用する獣人を集めさせた後、その戦争の最中でバセルダとゼルターに始末させようと考えていた。
しかしあまりに急速に発展するボレアスを見たアーヴはこのままでは大地達だけでなく他の獣人達まで看過できない戦力になってしまうと危機感を覚え、今回の作戦を行う事になった。
サイラス本人に関しては三年前に既にアーヴによって殺されていた。
サイラスは存命時から少しずつだが獣人の受け入れをしていた。
アーヴは一目に付かない立地条件に加え、獣人の受け入れを行っているサイラスに目をつけ、ボレアス領地乗っ取りを企てた。
アーヴは寄生魔法という固有魔法を使うことで他人の身を乗っ取る事が出来た。
その魔法を使ってアーヴはサイラスの身体を乗っ取り、ボレアス領主としてスパイ活動をしていた。
このトーム侵略作戦は三年前から極秘行われており、アーヴの人心掌握術、心理誘導により西側は既に東側と事を構える準備を整えている状態になっており、それは東側も同じであった。
正に今のトームは帝国の策略により一触即発の状態になってしまっていた。
アーヴ自身は大地達を始末した後トーム侵略の作戦を本格的に進める予定だったらしい。
ある程度のトーム侵略の情報を覗き見た大地はその情報を自身に定着させると、アーヴの方へ再度視線を向ける。
「じゃあそろそろ終わらせようか。」
「やるなら早くしろ。」
アーヴは抵抗する様子を見せず、大地を睨み付けている。
その様子を見た大地は躊躇することなくアーヴの脳天を銃剣で貫いた。
アーヴは言葉を発することなく頭から血を流して動かなくなった。
大地はアーヴの死を見届けると、犬斗達と共にシェルターに避難している獣人達の元に向かった。
大地から事の顛末を聞いた獣人達は歓喜の声を挙げた。
これまで人間に虐げられ続けた自分達が初めて自分達の力で土地を守り、人間に勝利したのである。
その日のボレアスには獣人達の歓喜の声が木霊しその声は日が昇るまで止むことはなかった。
この一年間犬斗を殺す時の為に情報を集めていたアーヴ。
決して犬斗を侮ることなく、一つひとつ細かいデータまで集めて今回の戦闘に及んだ。
もし大地が犬斗に陵光を渡していなければ、アーヴは犬斗に勝っていただろう。
アーヴはまたしても大地の力を見誤っていた。
先程の魔法で魔力をかなり消費したアーヴは犬斗が魔力を回復してしまったことにより、優勢だった戦況が覆ってしまっている事に気付いた。
このままでは勝てない可能性が高いと察したアーヴは自分の部下が防衛用クーポラを占拠し、加勢に来るまでの時間稼ぎをしようと犬斗に語りかける。
「犬斗。どうやって私の魔法を防いだ?」
「あぁ・・それは大地さんが僕専用に作った鎧のおかげですよ。」
「鎧一つで私の魔法を防いだだと!?」
「なんかこれは僕が受けたダメージを魔力に変えることが出来るみたいです。」
「そんな物を作れるのか大地は・・・」
「僕も原理とかは詳しく聞いてないんでわからないんですけどね。まぁやっぱりあなたは大地さんの力を見誤ってたって事でしょうね。」
アーヴは犬斗の言葉に一瞬顔をしかめるが、時間稼ぎが今の自分のやる事であると気持ちを切り替えると、犬斗から出来る限り大地の情報を得ようと話を続ける。
「大地とは一体何者なんだ? あんな力見た事も聞いた事もない。獣人達の一部もあいつのことを創造神と呼んでいた。本当にあいつは私達と同じ人間なのか?」
「まぁ規格外の力を持っているのは同感ですね。けど神なんかじゃないと思いますよ。獣人を差別して、理不尽に暴力を振るうあなた達帝国の人達よりよっぽど人間らしいですよ。」
「お前! 帝国を愚弄する気か!」
犬斗の帝国を馬鹿にするような物言いに時間稼ぎの事を忘れ、思わず怒りを向けてしまうアー。咄嗟に今優先すべき事を思い出して冷静な様子を装うが、不自然なアーヴの様子を見た犬斗に思惑がばれてしまう。
「もしかして仲間が来るのを待ってるんですか?」
「なっ! 馬鹿を言うな。私が部下に助けを求めるなどありえん。」
「あっ! そうなんですか? てっきり無駄な期待をしているものかと・・」
「無駄な期待?」
「はい。今ガランさん達から帝国兵を撃退したって連絡が入りましたので。」
「なんだと! 私の部隊が敗れた?」
犬斗はアーヴとの会話の最中、ガランからの念話で情報のやりとりをしていた。
犬斗から自分の部下達が獣人達に敗れたことを聞いたアーヴは助けが来ないことを知り、額から冷たい汗を流し出す。
追い詰められたアーヴがこの状況を切り抜ける方法を模索していると、更にアーヴを追い詰める事態が発生してしまう。
「犬斗無事かぁ!」
領主室の扉を蹴り飛ばし部屋に入ってきたのは、ガランを先頭にドグマ、リリス、ゼーレ、フィアの五人だった。
アーヴは入って来たガラン達を見て、本当に自分の部下が敗北したのだと確信に至る。
「そんな馬鹿な! ナーシェンやマリオネスがしくじっただと?」
部下の敗北を受け止められないアーヴにガランとリリスが答える。
「ナーシェンなら片腕飛ばされて逃げてったぞ。」
「そのマリオネスなら今頃雪に埋もれている頃だろう。」
二人は淡々とした様子でナーシェンとマリオネスを撃退したことを話す。
二人の発言を聞いたアーヴは初めて絶体絶命の状況であることに気付いた。
自分の元に部下が助けに来ることはないうえに、アーヴの前には犬斗を筆頭にボレアスの獣人の中で一番強いとされているガラン、大地から訓練を受けていて簡単には侮れないゼーレとフィア、マリオネスを破ったリリス、あり得ない大きさの盾を振り回しているドグマがいる。
自分の置かれている状況がいかに絶望的なのかを理解したアーヴはこれ以上の戦闘は危険だと察し、どうにかしてこの場から離脱する方法はないか考える。
しかしそんな絶望的な状況にあるにも関わらず、この後アーヴにとって更なる絶望が空から降ってくることになった。
アーヴが犬斗の開けたクーポラの穴から逃げ出そうと考えた時、西の方角から大きな騒音が近づいてきているのがわかった。
アーヴはまた犬斗達が何かを仕掛けてきたのだと警戒を強めたが、犬斗達の驚いている顔を見て彼らにとっても想定外の事が起きているのだと知る。
アーヴは犬斗達が混乱している状況を利用し、隙を見て逃げ出そうクーポラに開けられた穴へと走り出す。
「しまった!」
犬斗は隙を付いて逃げ出したアーヴを追おうと走り出した時、騒音の主が正体を表した。
騒音の主は逃げるアーヴに立ち塞がるようにクーポラの壁を突き破ってその姿を犬斗達に晒した。
長細い金属の塊がクーポラの壁から顔を出し、ぶつかった衝撃により大きな地揺れと轟音がクーポラに鳴り響かせる。
隙を突いて逃げようとしていたアーヴは目の前を長細い金属の塊に塞がれ、地揺れに足を取られたことで逃走に失敗してしまう。
クーポラの西側に大穴を開けて入ってきた金属の塊がその動きを停止させると、側面のハッチが開いた。
犬斗達は帝国の兵士が特攻を仕掛けたのだと思い、警戒しながらそのハッチを見つめる。
しかしハッチから出てきた人物を確認した直後犬斗達の顔から自然と笑みがこぼれた。
同じくその人物を確認したアーヴは対照的に焦燥感を顔から滲ませた。
「お前ら無事か!?」
「ゼーレ! フィア!」
ハッチから出てきたのは焦った様子を見せる大地とゼーレ達の名を呼ぶルルであった。後ろには疲れた様子をしたメリアの姿も見える。
大地は犬斗達の無事な姿を確認すると、目線を見慣れない姿のアーヴに向ける。
「お前が黒幕か?」
「なっなっな・・・何でここにいる!? ミッテに行ったのではなかったのか!?」
「おい。こっちの質問に答えろ!」
大地が自分に対して濃密な殺気を放っていることに気付いたアーヴは、人目も気にせず一目散に逃亡を図った。
しかし大地が即座にアーヴの両手足を銃剣で撃ち抜く。手足を撃たれたアーヴは走っている勢いそのままに転倒してしまう。
アーヴは撃たれた手足を無理矢理動かし、無様な姿を晒しながら這うようにして逃げようとするが、そんな状況で逃げ切れるはずもなかった。
大地は犬斗から情報を聞きながらゆっくりとアーヴに近づいていく。
「犬斗こいつが黒幕で間違いないんだよな?」
「はい。このアーヴという人がサイラスさんになりすましていた帝国のスパイです。」
犬斗は大地が来るまでの出来事を全て大地に話した。
話が進む度に大地の額に出ていた青筋が太くなっていく。
話を聞いた大地は目の前で転がっているアーヴに質問を行っていく。
「さて。これだけの事をしてくれたんだ。生きて帰れるとは思ってないよな?」
「私は何も話すつもりはない。殺すなら早く殺せ。」
アーヴは先ほどまでの絶望した表情から一転、清々しい顔をしたまま大地に情報を話すことを拒否する。
大地は口をつぐんでも意味がないのにとため息をつくと、アーヴに対して記憶のインプットを開始した。
アーヴの記憶から得た帝国のトーム侵略作戦の概要は西側と東側の仲間割れを誘って戦争を起こさせ、互いが疲れたところを攻めるというシンプルなものだった。
作戦の決行は今から三か月後となっており、中央領地のミッテの隣にあるクンプト領地に宮廷魔法師第七位のバセルダ。一番東にあり帝国にもっとも近いオステン領地に宮廷魔法師第八位のゼルターという人物が帝国のスパイとしてそこの領主をしているらしい。
またアーヴは初めの頃は大地と犬斗を利用して人体実験に使用する獣人を集めさせた後、その戦争の最中でバセルダとゼルターに始末させようと考えていた。
しかしあまりに急速に発展するボレアスを見たアーヴはこのままでは大地達だけでなく他の獣人達まで看過できない戦力になってしまうと危機感を覚え、今回の作戦を行う事になった。
サイラス本人に関しては三年前に既にアーヴによって殺されていた。
サイラスは存命時から少しずつだが獣人の受け入れをしていた。
アーヴは一目に付かない立地条件に加え、獣人の受け入れを行っているサイラスに目をつけ、ボレアス領地乗っ取りを企てた。
アーヴは寄生魔法という固有魔法を使うことで他人の身を乗っ取る事が出来た。
その魔法を使ってアーヴはサイラスの身体を乗っ取り、ボレアス領主としてスパイ活動をしていた。
このトーム侵略作戦は三年前から極秘行われており、アーヴの人心掌握術、心理誘導により西側は既に東側と事を構える準備を整えている状態になっており、それは東側も同じであった。
正に今のトームは帝国の策略により一触即発の状態になってしまっていた。
アーヴ自身は大地達を始末した後トーム侵略の作戦を本格的に進める予定だったらしい。
ある程度のトーム侵略の情報を覗き見た大地はその情報を自身に定着させると、アーヴの方へ再度視線を向ける。
「じゃあそろそろ終わらせようか。」
「やるなら早くしろ。」
アーヴは抵抗する様子を見せず、大地を睨み付けている。
その様子を見た大地は躊躇することなくアーヴの脳天を銃剣で貫いた。
アーヴは言葉を発することなく頭から血を流して動かなくなった。
大地はアーヴの死を見届けると、犬斗達と共にシェルターに避難している獣人達の元に向かった。
大地から事の顛末を聞いた獣人達は歓喜の声を挙げた。
これまで人間に虐げられ続けた自分達が初めて自分達の力で土地を守り、人間に勝利したのである。
その日のボレアスには獣人達の歓喜の声が木霊しその声は日が昇るまで止むことはなかった。
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