創造神で破壊神な俺がケモミミを救う
第26話
「時間稼ぎわりぃな。」
「大地さん!  遅いですよ! 内心どうしようかと思ってたんですから。」
「でもちゃんと間を持たせたじゃねえか。さすが犬斗。やる時はやる男だな。」
「茶化さないでください!」
目の前で犬斗と談笑する人物に視線を移すメリア。
大地も犬斗と談笑しながらも少女の姿を捉えていた。
同時にお互いの正体に気付く二人。
大地の存在に気付いたメリアが思わずその名を口にしようとする。
「あんた!そうぞう―――」
『後ろにお前の監視役が四人いる。今俺らが知り合いだとばれるとやばいんじゃないか?』
『えっ何これ!?』
メリアに気付いた大地の念話により辛うじて、名前を叫ぶ声を止めるメリア。
メリアが状況を理解したのを確認した大地は念和にて話を続ける。
『とりあえず黙ったままというのも、不自然だ。犬斗とこれまでのように会話を続けろ。』
『なんであんたに指図されなくちゃいけないのよ。というか監視役って何よ? 私ずっと監視されていたの?』
『詳しい理由を俺が知る訳ないだろ? とりあえずお前の後ろに黒ローブの四人が隠れているのは間違いない。』
『もしかして・・・・やっぱり疑われてる!』
『何か心当たりがあるのか?』
『あんたのせいよ! あんたが私に密林であんな事言うから帝国に帰ってからもずっと悩んでて・・・それが不審に映っちゃったのよ!』
『よくわからんが、お前が帝国に信用されていないということは分かった。』
『もしかしてトームの密偵の命令の目的は不審行動を引き出した上で、私を処分するためのものだった・・・?』
『怖い怖い。それでどうするんだ?
今ここから立ち去るなら不審行動で処分されることはないぞ。
でももし無理やりここを通るつもりならば、後ろの奴らにお前が俺との接触を隠している事をばらしてやってもいいが。』
『そんなこと冗談じゃないわよ! すぐにここから立ち去るわ。でも今後もずっと監視がついてる生活なんて・・・・』
『監視生活が嫌なら一つ良い案があるぞ。』
『何よ。聞かせなさいよ。』
『密林でお前に話した、お前が俺らの味方になるという案だ。仲間になるなら黒ローブの四人を俺らが始末しても良い。』
大地の提案に表面上犬斗との押し問答を演じていたメリアが黙る。
『あんた何言ってんの!』
『おいおい。黙ったままでいいのか? 後ろの四人に疑われるぞ?』
メリアは大地からの念話による指摘にハッとした表情を浮かべ、再び犬斗との表面上だけの押し問答を再開する。
人を子馬鹿にしたような念話を送ってくる大地に怒りを露わにするメリア。
『あんた人をからかうのもいい加減にしなさいよ! あんた達の仲間になるメリットがないじゃない! 獣人の村も出来てないんでしょ!? 半年間全然噂を聞かなかったわよ!』
『そりゃ徹底した情報統制を行ってきたからな。犬斗のアホのせいで流れた噂も今ではただの物好きな奴が流したガセって事になってるし。実際はもうしっかりした獣人の村は出来ているぞ。』
『本当に獣人の村を作ったの?』
『まだ非公開だがな。後々魔族の国も作るか?』
メリアは大地の何気ない発言に押し問答を再び止めてしまう。
大地が再び押し問答を続けるように促すが、メリアの耳には届いていなかった。
メリアが遠い昔に一度だけ夢見た魔族の国の再建。その話を人間である大地からされたメリアは夢を見ていた頃の自分を思い返していた。
メリアがまだ幼く、変換魔法を会得しておらず、人間に見つからないように隠れて暮らしていた頃。
物心ついた時には既に周りには同じ魔族は誰もいなかった。
誤って姿を見られようものなら、問答無用で人間達から殺意のこもった攻撃を食らう毎日。
何度生死を彷徨ったかわからないほど濃密な経験を幼い頃よりしていたメリアは、いつか必ず魔族でも人間達と同じように平和に暮らすことの出来る場所を作ろうと夢見ていた。
人間の生活に憧れを抱き、あのような生活がしたいと夢を持ち続けながら、魔法の鍛錬を積んだメリアが姿形を変異させる変換魔法を覚えたことは必然だったのかもしれない。
変換魔法で姿を人間に変えたことで初めて人間の住んでいる町に出ることが出来た。
これまで人間から攻撃しかされなかった彼女は人間に化け、人間として生活を送っていく。
親切にしてくれるおじさんに出会うことができ、その人の紹介で薬品を扱う仕事を始めるようになった。
仕事を通じて初めて仲の良い友人を作る事も出来た。
メリアはそんな生活を送りながら、魔族でも人間と共に暮らす事は出来るのだと、夢の実現は可能なのだと、希望を持ち始めていた。
しかしそんなメリアの希望を打ち砕く事件が起きてしまう。
街での生活にも馴染んで数年が経とうとしていた頃、街の外れを拠点としていた大規模な盗賊団がメリアの住んでいる街に襲撃をかけてきた。
街の自警団の人達が必死に抵抗するも、訓練された兵士ではない彼らに、大規模の盗賊団の襲撃を防げるわけもなく、街の中への侵入を許してしまう。
薬品製造のための薬草を取りにいっていたメリアが街へ戻ってきた頃には、既に街は盗賊の放った炎により真っ赤に染まっていた。
メリアは急いで世話になっている人や仲の良い友人を探すが見つからない。
友人達を探すためにそれぞれの家を回っている時、街の真ん中の広場に手足を縛られた状態で集められている街の人々の姿が目に入った。
その中には街に来て初めて親切にしてくれたおじさん、仕事先の店長、仲の良い友人達、全員が手足を縛られた状態で座っており、青ざめた顔で恐怖の表情を浮かべていた。
大好きな人達が縄で縛られている光景に激怒したメリアは、怒りを抑えることが出来ず、気付いた時には一心不乱に盗賊達に闇魔法を放っていた。
放たれた闇魔法はブラックホールのように盗賊達だけを飲み込んでいく。
命乞いをしながら逃げだす盗賊達であったが、無慈悲なブラックホールは盗賊達の願いを叶えることはなく、最後の一人を飲み込むとそのまま収縮しながら消えていった。
盗賊達を一人残らず滅したメリアが囚われている街の人を縛っている縄を解こうと、駆け足気味で街の人達の元へ歩み寄った時、友人の一人がメリアに向かって悲鳴に似た叫び声をあげた。
「こっちに来るな化け物!」
友人の一言にハッとなり、自分の手を眺めるメリア。目の前の自身の手には鋭い爪が伸びて、赤褐色の肌が見えていた。
一心不乱に闇魔法を放っていたメリアは変換魔法を維持するのに必要な魔力まで使ってしまい、魔族の姿に戻っていた。
これまでいつも慈愛に満ちた目を向けてくれていたおじさんも魔族の姿になったメリアに畏怖の眼差しを向けていた。
周りを見渡すと街の人々全員がおじさんと同じ眼差しをこちらに向けている。
その眼差しを受けたメリアはこれまで抱いていた夢や希望を全て崩壊させると、畏怖の眼差しから逃げ出すように街を後にした。
そして二度と夢や希望を持たず、ただただ人間に順応することだけを考えて行動しようと自身に固く誓った。
メリアは遠い昔の記憶を思い返した後、これまでの感情をむき出しにしたような表情から、神妙な顔つきに変わると、大地にさっきの発言に対しての真意を測るように問う。
『本当に魔族が魔族として暮らせる国を作ってくれるの?』
『・・・・ああ。獣人も一緒で良ければという条件付きだが。』
『あんたを信じてもいいのか?』
『ああ。俺はやると決めたらやる男だからな。』
『わかったわ。このまま不信感を持たれたまま帝国にいても、ろくな事にはならないし。とりあえずあんたを信じてあげる。』
『ありがとう。必ず魔族が魔族として暮らせる国を作ると約束しよう。』
『もし約束を破ったら、真っ先にあんたを殺すからね。』
『それは怖い。なら頑張って魔族の国を作らないとな。』
初めて人間の口から聞いた魔族の国の再建。
メリアは何故か大地が必ず魔族の国の再建を成し遂げると確信していた。
もちろん根拠や確証に至る理由はない。それでも長い時間、夢も希望も持たず生きてきた自分に希望を抱かせた大地になら付いて行く価値があると感じたメリアは自分の直感を信じる事に決めた。
大地と魔族の国の再建を約束したメリアは、これまで変わることのなかった心境の変化にクスッと笑うと、大地に笑みを浮かべた。
後に魔族の国再建の英雄として魔族のみならず、他種族からも語り継がれることになる初代魔王メリア=アルバート。
大地は後に魔王となるメリアとアイコンタクトを交わすと、草陰に隠れる者へと視線を移すのであった。
「大地さん!  遅いですよ! 内心どうしようかと思ってたんですから。」
「でもちゃんと間を持たせたじゃねえか。さすが犬斗。やる時はやる男だな。」
「茶化さないでください!」
目の前で犬斗と談笑する人物に視線を移すメリア。
大地も犬斗と談笑しながらも少女の姿を捉えていた。
同時にお互いの正体に気付く二人。
大地の存在に気付いたメリアが思わずその名を口にしようとする。
「あんた!そうぞう―――」
『後ろにお前の監視役が四人いる。今俺らが知り合いだとばれるとやばいんじゃないか?』
『えっ何これ!?』
メリアに気付いた大地の念話により辛うじて、名前を叫ぶ声を止めるメリア。
メリアが状況を理解したのを確認した大地は念和にて話を続ける。
『とりあえず黙ったままというのも、不自然だ。犬斗とこれまでのように会話を続けろ。』
『なんであんたに指図されなくちゃいけないのよ。というか監視役って何よ? 私ずっと監視されていたの?』
『詳しい理由を俺が知る訳ないだろ? とりあえずお前の後ろに黒ローブの四人が隠れているのは間違いない。』
『もしかして・・・・やっぱり疑われてる!』
『何か心当たりがあるのか?』
『あんたのせいよ! あんたが私に密林であんな事言うから帝国に帰ってからもずっと悩んでて・・・それが不審に映っちゃったのよ!』
『よくわからんが、お前が帝国に信用されていないということは分かった。』
『もしかしてトームの密偵の命令の目的は不審行動を引き出した上で、私を処分するためのものだった・・・?』
『怖い怖い。それでどうするんだ?
今ここから立ち去るなら不審行動で処分されることはないぞ。
でももし無理やりここを通るつもりならば、後ろの奴らにお前が俺との接触を隠している事をばらしてやってもいいが。』
『そんなこと冗談じゃないわよ! すぐにここから立ち去るわ。でも今後もずっと監視がついてる生活なんて・・・・』
『監視生活が嫌なら一つ良い案があるぞ。』
『何よ。聞かせなさいよ。』
『密林でお前に話した、お前が俺らの味方になるという案だ。仲間になるなら黒ローブの四人を俺らが始末しても良い。』
大地の提案に表面上犬斗との押し問答を演じていたメリアが黙る。
『あんた何言ってんの!』
『おいおい。黙ったままでいいのか? 後ろの四人に疑われるぞ?』
メリアは大地からの念話による指摘にハッとした表情を浮かべ、再び犬斗との表面上だけの押し問答を再開する。
人を子馬鹿にしたような念話を送ってくる大地に怒りを露わにするメリア。
『あんた人をからかうのもいい加減にしなさいよ! あんた達の仲間になるメリットがないじゃない! 獣人の村も出来てないんでしょ!? 半年間全然噂を聞かなかったわよ!』
『そりゃ徹底した情報統制を行ってきたからな。犬斗のアホのせいで流れた噂も今ではただの物好きな奴が流したガセって事になってるし。実際はもうしっかりした獣人の村は出来ているぞ。』
『本当に獣人の村を作ったの?』
『まだ非公開だがな。後々魔族の国も作るか?』
メリアは大地の何気ない発言に押し問答を再び止めてしまう。
大地が再び押し問答を続けるように促すが、メリアの耳には届いていなかった。
メリアが遠い昔に一度だけ夢見た魔族の国の再建。その話を人間である大地からされたメリアは夢を見ていた頃の自分を思い返していた。
メリアがまだ幼く、変換魔法を会得しておらず、人間に見つからないように隠れて暮らしていた頃。
物心ついた時には既に周りには同じ魔族は誰もいなかった。
誤って姿を見られようものなら、問答無用で人間達から殺意のこもった攻撃を食らう毎日。
何度生死を彷徨ったかわからないほど濃密な経験を幼い頃よりしていたメリアは、いつか必ず魔族でも人間達と同じように平和に暮らすことの出来る場所を作ろうと夢見ていた。
人間の生活に憧れを抱き、あのような生活がしたいと夢を持ち続けながら、魔法の鍛錬を積んだメリアが姿形を変異させる変換魔法を覚えたことは必然だったのかもしれない。
変換魔法で姿を人間に変えたことで初めて人間の住んでいる町に出ることが出来た。
これまで人間から攻撃しかされなかった彼女は人間に化け、人間として生活を送っていく。
親切にしてくれるおじさんに出会うことができ、その人の紹介で薬品を扱う仕事を始めるようになった。
仕事を通じて初めて仲の良い友人を作る事も出来た。
メリアはそんな生活を送りながら、魔族でも人間と共に暮らす事は出来るのだと、夢の実現は可能なのだと、希望を持ち始めていた。
しかしそんなメリアの希望を打ち砕く事件が起きてしまう。
街での生活にも馴染んで数年が経とうとしていた頃、街の外れを拠点としていた大規模な盗賊団がメリアの住んでいる街に襲撃をかけてきた。
街の自警団の人達が必死に抵抗するも、訓練された兵士ではない彼らに、大規模の盗賊団の襲撃を防げるわけもなく、街の中への侵入を許してしまう。
薬品製造のための薬草を取りにいっていたメリアが街へ戻ってきた頃には、既に街は盗賊の放った炎により真っ赤に染まっていた。
メリアは急いで世話になっている人や仲の良い友人を探すが見つからない。
友人達を探すためにそれぞれの家を回っている時、街の真ん中の広場に手足を縛られた状態で集められている街の人々の姿が目に入った。
その中には街に来て初めて親切にしてくれたおじさん、仕事先の店長、仲の良い友人達、全員が手足を縛られた状態で座っており、青ざめた顔で恐怖の表情を浮かべていた。
大好きな人達が縄で縛られている光景に激怒したメリアは、怒りを抑えることが出来ず、気付いた時には一心不乱に盗賊達に闇魔法を放っていた。
放たれた闇魔法はブラックホールのように盗賊達だけを飲み込んでいく。
命乞いをしながら逃げだす盗賊達であったが、無慈悲なブラックホールは盗賊達の願いを叶えることはなく、最後の一人を飲み込むとそのまま収縮しながら消えていった。
盗賊達を一人残らず滅したメリアが囚われている街の人を縛っている縄を解こうと、駆け足気味で街の人達の元へ歩み寄った時、友人の一人がメリアに向かって悲鳴に似た叫び声をあげた。
「こっちに来るな化け物!」
友人の一言にハッとなり、自分の手を眺めるメリア。目の前の自身の手には鋭い爪が伸びて、赤褐色の肌が見えていた。
一心不乱に闇魔法を放っていたメリアは変換魔法を維持するのに必要な魔力まで使ってしまい、魔族の姿に戻っていた。
これまでいつも慈愛に満ちた目を向けてくれていたおじさんも魔族の姿になったメリアに畏怖の眼差しを向けていた。
周りを見渡すと街の人々全員がおじさんと同じ眼差しをこちらに向けている。
その眼差しを受けたメリアはこれまで抱いていた夢や希望を全て崩壊させると、畏怖の眼差しから逃げ出すように街を後にした。
そして二度と夢や希望を持たず、ただただ人間に順応することだけを考えて行動しようと自身に固く誓った。
メリアは遠い昔の記憶を思い返した後、これまでの感情をむき出しにしたような表情から、神妙な顔つきに変わると、大地にさっきの発言に対しての真意を測るように問う。
『本当に魔族が魔族として暮らせる国を作ってくれるの?』
『・・・・ああ。獣人も一緒で良ければという条件付きだが。』
『あんたを信じてもいいのか?』
『ああ。俺はやると決めたらやる男だからな。』
『わかったわ。このまま不信感を持たれたまま帝国にいても、ろくな事にはならないし。とりあえずあんたを信じてあげる。』
『ありがとう。必ず魔族が魔族として暮らせる国を作ると約束しよう。』
『もし約束を破ったら、真っ先にあんたを殺すからね。』
『それは怖い。なら頑張って魔族の国を作らないとな。』
初めて人間の口から聞いた魔族の国の再建。
メリアは何故か大地が必ず魔族の国の再建を成し遂げると確信していた。
もちろん根拠や確証に至る理由はない。それでも長い時間、夢も希望も持たず生きてきた自分に希望を抱かせた大地になら付いて行く価値があると感じたメリアは自分の直感を信じる事に決めた。
大地と魔族の国の再建を約束したメリアは、これまで変わることのなかった心境の変化にクスッと笑うと、大地に笑みを浮かべた。
後に魔族の国再建の英雄として魔族のみならず、他種族からも語り継がれることになる初代魔王メリア=アルバート。
大地は後に魔王となるメリアとアイコンタクトを交わすと、草陰に隠れる者へと視線を移すのであった。
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