創造神で破壊神な俺がケモミミを救う

てん

第18話

「なんだあれは・・・・」

「隊長! 追跡は不可能です! 詰所に戻って伝晶石でこの先にある村にいる衛兵に連絡しましょう!」

「馬鹿かお前は!あんな速さで進行されては、俺らが詰所に戻る前に、この先の村なんかとっくに通過するに決まっているだろう! 」

急に現れた高速で移動する金属の塊。

デュセオ領の衛兵は唖然としながら高速で移動する正体不明の金属の塊が段々小さくなっていくのを見つめていた。



「きゃあぁぁぁ! 大地さん早すぎますよぉ! 」

「大地君! もっと早く早く! 」

「大地すげぇ~~~~! 」

「パーキ顔出しちゃダメでしょ! ゼーレ姉ちゃんにまた怒られるよ!」

「私はまた気持ち悪くなっちゃいました。」

デュセオ領地を抜けボレアス領地を爆走していく大型バス。

猛スピードで広野を走りぬけている大型バスの車内では、体験したことのない速度に各々が様々な反応を見せていた。

ある物は嘆き、ある者は楽しみ、ある者は感動し、ある者は怒り、そしてある者は酔っていた。

酔っていたある者はこっそりと大地に忍び寄り、それを口実に大地の膝の上を狙う。

しかし膝まであと少しという時、大型バスは目の前の想定外の出来事に急ブレーキをかけた。

膝の上を狙っていた者は慣性の法則に従い、目の前のシートにダイブする。

シートベルトをかけていなかったフィアとパーキも同じように一旦空中を舞うと、そのままバスにキスをした。

「ちょちょちょっと大地さん!?そんなに私に膝を貸すのが嫌だったんですか?」

「大地君酷いよぉ~~・・・」

「うわ! 鼻血が出てる!」

ルル達の呑気な声には耳も傾けず、前方を見続ける大地。

「お前ら絶対にバスから出るなよ。ガラン、マヒア、レイの三人は車内からで良いから必要に応じて援護してくれ。」

大地は前方の状況を確認するとガラン達に援護の指示を出す。

ガラン達も状況を把握している様子で、事前に大地から渡されていたライフルとマシンガンに魔法弾薬を込める。

大地はバスの前方を確認しながら、ガラン達に配置についての指示を送る。

最初は急に空気が重くなったのに対して戸惑っていたルル達も、前方に広がる光景に気付き、生唾を飲み込んだ。

大地達の乗っている大型バスの前方には見たこともない四匹の魔獣が待ち構えていた。

四匹の魔獣はそれぞれ特徴的な姿をしており、真っ白な毛に電気を纏った虎、まるで全身水で出来ているような龍。後ろには火炎を纏った大鷲に、ディシント鋼のような甲羅をもった亀がいた。

大地は小さな声で「まるで神話の霊獣みたいだな」とこぼすとバスを降りて四匹の魔獣と対峙する。

大地は小型アサルトライフルの先に刃物を付けた銃剣を持ち、前腕と下腿部分にはディシント鋼製の防具を着けている。

もちろん全身の衣服にも手を加えており、衣服の繊維は日本が誇る、防刃、防弾、防炎に優れたアラミド繊維だ。

大地は移動中に作成した防具の感触を試しながら魔獣に近づいていく。そして四匹の魔獣を視界に捕らえるとインプットを開始した。


名称 白虎
能力値
腕力S 体力S 敏捷性B 魔力B
スキル「トレーナー」により従属、強化されている魔獣。
体内で電気の生成を行えることができ、磁力場の形成も行える。


名称 青龍
能力値
腕力A 体力C 敏捷性A 魔力SS
スキル「トレーナー」により従属、強化されている魔獣。
全身が魔力で作られた魔水で構成されている為、物理攻撃無効。


名称 朱雀
能力値
腕力B 体力B 敏捷性S 魔力S
スキル「トレーナー」により従属、強化されている魔獣。
全身が炎で包まれている。体内の核を破壊されない限り、魔力の続く限り再生する。


名称 玄武
能力値
腕力S 体力SS 敏捷性C 魔力B
スキル「トレーナー」により従属、強化されている魔獣。
甲羅全てに魔法反射の効果あり、地面を操る能力がある。


「霊獣じゃねえかよ!」


思わず元の世界に存在している神話を元に名付けられている懐かしいネーミングにツッコミを入れてしまう大地。

ツッコミを入れながらも、インプットの際に見られた「トレーナー」というスキルに気付いた大地は、たまたま魔獣に襲われたわけではなく、この魔獣が人為的に送られてきたものだと認識する。

大地はまずはお手並み拝見とばかりに熱線を霊獣に向けて放つ。

しかし玄武が残りの三匹をかばう様に大地と三匹の射線の間に入り熱線を反射する。

大地は返された熱線をデリートで削除すると、ガラン達に合図を送り、四つの銃口から多量の魔法弾薬を霊獣に浴びせる。

赤い閃光が炎を揺らめかせながら、玄武以外の霊獣を襲った。

朱雀は無傷であったが、白虎と青龍は手傷を負う。

青龍の方はダメージが大きかったようで、その場でとぐろを巻いたような姿になった。

すかさず無傷だった朱雀は羽を広げると、大地達が撃った弾薬と同じように炎に包まれた羽を銃弾のように乱射してきた。

ガラン達は車内に避難し、大地もバスを盾にすることで羽による攻撃を防ぐ。

するとバスの裏に逃げたことにより生じた一瞬の隙をついて玄武が大地の周りの地面を隆起させる。

足場が盛り上がった事により体勢を崩してしまった大地に白虎が雷撃を放った。

大地は咄嗟の判断で魔法を防ぐ結界魔法を展開させるが、雷撃は純粋な魔法ではなく白虎の固有能力だったらしく、結界では全てを無効化することが出来ず一部の雷撃を浴びてしまう。

「くっ・・・」

『セキュリティが使えれば、この程度の攻撃なんて喰らわねえのに。』

大地は自身の持つスキルの使い勝手の悪さに恨めしい感情を抱きながら、地面へと着地をする。

実はセキュリティはかなり燃費の悪いスキルになっており、セキュリティを展開させると、魔力の最大値がセキュリティに使用した分だけ低下してしまう。

つまり一時的なステータスダウンを招いてしまうスキルだった。

大地は今、魔力量の三分の二を使用して大型バスにセキュリティをかけている。

その為、自分にセキュリティを使用してしまうと魔力枯渇を起こしてしまう危険性があった。

そうなればバスのセキュリティも解除されることになってしまい、ルル達を危険な目に合わせてしまう。

大地はルル達の安全を第一にしていることで全力を出して戦う事が出来ていなかった。

「大丈夫か大地?」

ガランが青龍に魔法弾薬を打ち込みながら大地に声をかける。

大地はグループウェアでガランとの念話を試みる。

『なんとかな。ガラン頼みがあるんだがいいか?』

『おっ・・これが念話か!頼みってのは何だ?出きることなら何でもやってやるから言ってみろ!』

『さすがガラン。じゃあ手榴弾もって敵陣に突っ込んでくれ。』

『ちょっと待て!!!何でもやるとは言ったが自殺は勘弁だぜ。』

『冗談だ。あの青い龍をあの場に釘付けにしといて欲しい。後可能ならマヒアとレイで亀の足止めを頼む。』

『それくらいなら任せろ!』

ガランはマヒアとレイに指示を出し青龍と玄武の足止めを行う。

それを確認した大地は朱雀に銃弾を浴びせながら接近していく。

朱雀がすかさず接近を阻止しようと炎の羽を大地に目掛け発射していくが、大地はそれを躱しながら、朱雀の上空に銃弾のように降り注ぐ雨を水魔法の再現により展開させた。

篠突く雨の様に襲い掛かる水の銃弾が朱雀の身体を削っていく。

辛うじて核の破壊を免れた朱雀だったが、身体の損傷が激しく回復に専念せざるをえない状態になってしまい戦闘不能状態になる。

白虎は無数の雷撃を繰り出すが、大地は多量の水で出来た水壁を自身の前方に配置することで雷撃を防ぐ。

その後、銃剣の切っ先を白虎に向けたまま、風魔法を自身の背後に発生させる大地。

背後で発生した追い風により急加速した大地は一気に白虎との距離を縮める。

銃剣の切っ先は白虎の肩を貫き、白虎は悲痛な雄叫びを挙げ態勢を崩した。

大地は至近距離で弾倉に残っている弾薬を全て白虎にぶつけるが、白虎は残りの力を振り絞り、周りに強力な磁力場を形成させた。

磁力場により生まれた斥力により、白虎は心臓を狙って撃たれた銃弾をそらし、寸でのところで致命傷をさける。

しかし白虎には既に抵抗する力もなく、磁力場を形成し終わると項垂れるように横向きに倒れた。


大地は空になった弾倉のオートリロードを行いながら倒れたまま動かない白虎に近づく。

そして銃口を白虎に向け、引き金を引いたその時。

謎の人影が大地の目の前に現れると、大地が銃弾を放つと同時に銃口を上へと弾いた。

銃口が上空へと向いたことで被弾を免れた白虎。

大地は一瞬の隙をつかれたことに驚き、一歩下がるとその人物に目を向けた。

その人物の姿を確認した大地は思わず驚愕の表情を浮かべた。






「お前・・・・・日本人か?」

目の前にいる人物は髪色こそ茶髪だが、この世界にはいない日本人の顔の特徴を持っていた。


大地の発言を聞いた茶髪の男も驚いた表情を見せる。

「え?・・・・もしかして僕と同じ日本人なんですか!?」

茶髪の男は大地の姿をまじまじと見つめる。

そして大地が日本人であると確信すると、敵意に満ちた表情から歓喜に満ちた顔へと変化していく。

大地もまさか自分と同じように異世界転移している日本人に会えるとは思ってもおらず。顔から自然な笑みが浮かんでいた。

しかし茶髪の男は日本人だと言う大地に対して構えを解くことなく話を進め始める。

「僕と同じ日本人がいるのには正直驚きましたが、僕にとって優先されるのは連行されている獣人さん達です。同じ日本人とは出来れば戦いたくないので、獣人さん達を開放してくれませんか? そうしてもらえれば同じ日本人のよしみもありますし、こちらからは何もしません。」

「はぁ!? お前何言ってるんだ?」

「だからあのバスみたいな乗り物に収容している獣人さん達を開放してあげて下さいって言ってるんですよ!」

「・・・・・お前が良い奴だという事が良く分かった。だから一つ助言をしてやる。周りをよく見てみてくれ。」

「何を言って・・・・・・・・あっ!?」

茶髪の男は大地から指摘を受け、獣人達が収容されているであろうバスに目を向けると、玄武と青龍がガラン達から銃撃を受けているさまを目撃する。

それを見て自分の勘違いに気付いた茶髪の男は慌てた様子で大地にお願いをする。

「あれ・・・獣人さん達が反撃してる・・・もしかして僕の勘違い!? あのすみませんあの子達は僕の従魔なんです! 勘違いで攻撃してしまった事は後で必ず謝りますから今は武器を収めてもらうように言ってもらえませんか!?」

大地は茶髪の男の言動から、敵意がないことを確認するとガラン達に念話で攻撃を止めるように指示を出す。

銃撃が治まったのを確認するとその茶髪の男は慌てた様子で白虎の近くに行き、魔力を注ぎだだした。

すると白虎の負っていた傷が瞬く間に塞がっていった。

茶髪の男は同じ様に他の従魔を治療すると、大地の元へやって来て一礼すると自己紹介を始める。

「僕の名前は辛島犬斗と言います。今回はこちらの勘違いで攻撃を仕掛けてしまいすみませんでした。」

「俺の名前は石田大地だ。まぁこちらは大した被害を受けてないし大丈夫だ。それよりなんで獣人を助けようとした。」

「それは僕の住んでいる所の領主のサイラスさんからのお願いで。」

「もしかして今トームで噂になってる獣人を迎え入れている領主ってのはお前のとこの領主か?」

「えっ!?噂になってるんですか!!少し目立ちすぎちゃったかな・・・・。確かに僕たちの領主であるサイラスさんは人間に住処を追われたり、奴隷の立場から逃げてくる獣人さん達を全員迎え入れています。」

「そうか。実は俺達はその噂を聞いてサイラスって人に会い来たんだ。」

「そうだったんですか! そうとは知らず攻撃をしてしまいすみません。人間が獣人さんといる場合そのほとんどが奴隷として使役しているか、奴隷市場へ連行しているかだったので、てっきり獣人さんがまた連れていかれているのかと思って・・・」

「まぁ過ぎた事だから気にするな。それより俺達がサイラスに会う事は可能か?」

「それはもちろん! 獣人さんは種別に関係無く迎え入れる様にサイラスさんから指示をもらっていますし、大地さんは獣人さんに対して差別意識を持っていないことはさっきの戦闘でわかっていますから。僕が今から案内しますよ!」

「そうか。地理もあまりわかっていないから助かる。」

大地は犬斗にお礼を言うと、ルル達に目的地到達の目途が付いたことを伝える。

パーキ達とフィアは歓喜の雄叫びをあげながら大地にしがみついてくる。

大地はしがみついてくるパーキ達を剥がしながら他の獣人達の様子を見ると、全員がホッとしたような表情を浮かべていた。

全員が大型バスから降りるのを確認した犬斗が大地に大型バスについて聞いてくる。

「大地さん。あのバスみたいなものは消せますか?」

「跡形もなく消せるぞ。」

「それではあのバスを消してもらってもいいですか? この先は山道が険しく、車での移動は出来ません。それにこんなところに大きなバスを置いていては他の領主から怪しまれてしまいます。」

「足はどうする? 車がないとなるとかなりしんどくないか?」

「その点はご安心を。・・・・・・・・・みんなお客様を連れていくから出て来てくれ!」

犬斗が合図を送ると、前方の剣山から地響きが響き渡る。

地響きの音が段々と大きくなり、その内手前の剣山から砂埃が舞い始めた。

その砂埃が徐々に近づいてくるのを獣人達は不安そうな表情で見つめている。

砂埃はそのまま大地へと一直線に向かってくると大地達の目の前で止まった。

砂埃の正体は馬とロバを合わせたようななんともブサカワな生き物だった。

ブサカワな生き物が大地達の目の前まで辿り着くと犬斗は自慢げにその生き物を紹介し始める。

「みなさん! この可愛い生物はロマと言います! 山道を走っても揺れ一つ起こさず、なおかつ乗り心地抜群のロマにこの先の山は案内させますので、みなさん乗ってください。」

ウマとロバでロマというネーミングセンスに思わず、噴き出してしまう大地。

霊獣の名前といい犬斗はなかなかのセンスをしているらしい。

大地と犬斗を殿とし、先にルル達がロマに乗り、領主のいる領主館へと走り始めた。

獣人達が全員領主館へ向かうと、犬斗が大地に神妙そうな顔をしながら話し掛ける。

「大地さん。ボレアス領についてから相談したいことがあるので、時間が空いた時に話をさせてもらっても良いですか?」

「それは別に大丈夫だが。」

「なら良かったです! では行きましょうか!」

大地からの返答に安心した様子を見せた犬斗は領主館に向かって走り始める。

大地も犬斗の後を追い、険しい剣山を上っていった。

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