復讐者と最後の聖戦

ノベルバユーザー209516

第5話〜学園生活その2〜

 朝、教室に入るとジェンナが窓辺に立っていた。風に吹かれて銀色の長い髪がなびいている。朝早くから何をしているのだろうか。まあ、俺が言えた事じゃないが。
「ねえ君」
 気がつくと先程まで窓辺に立っていたジェンナが目の前に立っていた。 更に、回し蹴りというおまけ付きで。
ビュン
「っ……」
 反射的に顔を晒すが、靴底が俺の鼻先数ミリを過ぎり遅れて風圧が頬を叩く。バックステップで距離を取り、構える。こいつが何を考えているのか分からない。
「君、強いでしょ」
「…………」
 ジェンナの圧が更に高まり、アレクの緊張も高まっていく。
「あっ、ジェンナちゃん。一緒に登校しようって言ったじゃないですか」

「ん? そうだったけ?」
 しかし、その空気はミーシャが現れた事により霧散する。 ミーシャとジェンナは学園の敷地内にある寮に住んでいて、一緒に登校する約束をしたようなのだがジェンナはそれを忘れていたようだ。
「それにしても、ジェンナちゃんが自分から登校するなんて珍しいね。どうしたの?」
 ミーシャの質問を受けジェンナが俺を見つめる。
「そこの黒髪に会いに来た」
「…………」
「はひっ⁉︎」
 ジェンナの言葉を受けアレクは険しい顔をし、ミーシャは少し顔を赤くする。
「ア、アレクくんにですか?」
「そう、アレクに」
「……朝から、二人で……。ジェンナちゃんとアレクくんってその、付き合ってたりするの?」
 ミーシャがあらぬ誤解をしてしまっている。どうしてそんな考えに及ぶのだろうか。ジェンナとは昨日会ったばかりで話してすらないのだが。
「いや、違うぞ。こいつがいきなり殴りかかってきただけだ」
「なっ」
 誤解を解くために正直に答えたのだが不味かっただろうか。ミーシャがジェンナを睨んでいる。
「ダメじゃないですか。アレクくんが強そうだからといっていきなり殴りかかったら」
「ミーたんそれは違う、私は殴りかかってない」
「いや、でもアレクくんが……」
「蹴ろうとしただけ」
「同じです! とにかく、相手に許可を取ってからにして下さい」
「分かったミーたん。次からはそうする」
 どうやらジェンナへの説教を終えたようで、ミーシャは俺にしっかり叱っておきました。というような顔を向けてくるが、どこか怒る所が違う気がする。
「というわけで、アレク。貴方に決闘を申し込む」
「断る」
 とんだ戦闘狂に目を付けられてしまったものだ。勿論決闘は禁止されている。もし、行えばそれなりの処分が下されるはずだ。
「どうしようミーたん、断られた」
「いや、決闘はダメですよ。授業でなら闘う機会があると思うよ」
「よし分かった、そうする」
 勝手に話しが進んでいるがまあ授業でならいいだろう。確かに俺も少しジェンナの戦闘力は気になっている。 嫌だとは思いながらもやはり俺も男という事だろう。相手は女なのだが……。
「おはようアレク……」
 そうこうしているとレナが登校して来た。何故か俺をじと目で睨んでいる。
「はぁ、まあいいわ」
 そういうとレナは席に着き、俺たちも自分の席に着く。 クラスメイトも次第に教室へと入ってくる。入学式から二日目だというのにすでに仲良しグループが出来ておりお喋りを楽しんでいる。
 俺はこういうのは苦手なのでグループに属さないでいる。レナはそんな俺を気遣ってか、俺の様子を伺うように見つめている。余計なお世話なのだがな。 ジェンナは要注意人物として認定されておりミーシャ以外に近づくものがいない。
 特にすることも無いので俺は読書でもして時間を潰す事にした。
 そうしているうちに授業開始の鐘が鳴りルチアーナ先生が教室に現れる。
「皆さん席について下さい」
 こうして、午前の座学の授業は始まっていった。


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